本企画では、文学部の専任教員が「どんな専門なのか」「何が勉強できるのか」といった内容を中心に、受験生の皆さんへのメッセージを含めたショートエッセイを執筆しました。どうぞお楽しみください。
子どもの発育発達研究のスタート
河野 寛(かわの ひろし)教授(専門分野:応用健康科学、身体教育学、スポーツ科学)
文学部教育学科河野研究室では、早稲田大学や駿河台大学の協力のもと、2022年度から子どもの発育発達研究をスタートさせます。
下げ止まっていた子どもの体力は、コロナ禍においてさらに大きく低下しています。さらには肥満児や痩身児の割合も増えつつあり、現代日本における子どもの健康状態は決して良い状況ではありません。将来的には循環器疾患などの生活習慣病が待ち受けています。
そこで本研究室では、そのような子どもの健康状態と体力を5年間追跡し、子どもの成長過程における健康状態と体力との関連性について明らかにしていくプロジェクトを立ち上げました。今夏からスタートするこのプロジェクトでは、学部学生が子どもたちと触れあう教育的機会としても重要な役割を担っています。様々な方のご協力によって進められる本研究の成果は、大学HPや学術誌において発表していきますので、ご期待ください。
<2022年8月2日(火)掲載>
学生による理論を踏まえた講座学習の実践
小野瀬 倫也(おのせ りんや)教授(専門分野:理科教育学、初等中等教育学、科学教育)
文学部教育学科小野瀬研究室では、2016年より中学校の講座学習に参加しています。昨年の講座学習の一部を紹介します。
我々のグループでは、理科の教授・学習理論を踏まえ、かつ、参加メンバー(学生4名)の研究上の関心から講座学習を構成しました。テーマは「子どもが意欲的に取り組む理科授業デザイン」、講座の題名は「ブーメランを飛ばそう!」です。導入では、子どもの「やってみたい!」というコンサマトリー性の動機づけを、中盤以降は「こうしたい!」という達成性の動機づけをそれぞれ持たせるようにしました。
子どもたちは、大変熱心に取り組み、大盛り上がりの約2時間になりました。正に理論と実践の融合といった成果でした。
卒業生×対談 文学部:https://www.kokushikan.ac.jp/allabout/career/1998.html
卒研理科学生会HP:https://sotukenrika.jimdo.com/
<2022年8月23日(火)掲載>
今日の日本と昔日のヴェネツィア
室町 さやか(むろまち さやか)准教授(専門分野:美学、芸術論, 教育学)
春には幼稚園と保育所の音楽活動を比較し、施設の違いによる差を検討する論文が学術誌に掲載されました。「幼稚園は教育を行うところ」「保育所は保育を行うところ」と考えられがちではありますが、幼児期において養護と保育は一体のものであり、切り離すことのできないものです。この論文では施設種別に関わらず同等の教育を受けられるようにすることが重要であるという観点から、「教育」と「保育」の行政上の扱いと、異なる施設種別による音楽教育の差異について実証的に論じています。
またテーマはがらりと変わりますが、秋には18世紀ヴェネツィアの女性音楽家に関する論文を投稿すべく準備中です。当時のヴェネツィアにはオスペダーレと呼ばれる福祉施設があり、施設内に居住する孤児などのいわば社会的弱者である女性たちを集めて音楽隊をつくり、ルソーやゲーテからも称賛されるような音楽活動を行っていました。古文書を読み解いて、女性たちの音楽活動の実態を明らかにしていきます。
現在のピエタ教会(かつてのオスペターレ・デッラ・ピエタに隣接)
ヴェネツィアの聖マルコ広場。水の都として知られるこの街は、ヨーロッパの音楽文化の中心地でもありました。
<2022年10月18日(火)掲載>