日本の、そして世界のニーズに応えるために
- 大学院10研究科の使命と実践 -

国士舘大学 学長

佐藤 圭一

さとう・けいいち

本学における最初の大学院は、1回目の東京オリンピック開催に国中が沸いた翌年、昭和40(1965)年4月の政治学と経済学の2つの研究科設置に遡ります。その目的は、「本学の教育理念である『誠意・勤労・見識・気魄』を涵養する向上心溢れる学生に、高度にして専門的な学術の深奥を極める機会を提供すること」にありました。以来、本大学院は半世紀を超えて、学術研究と共に、建学の精神である「国を思い、世のため、人のために尽くすことを体得した有為な人材(=国士)」を社会や研究機関に輩出してきました。その間、工学研究科(1994年)、法学研究科(95年)、経営学研究科(97年)、スポーツ・システム研究科、人文科学研究科(2001年)、総合知的財産法学研究科、グローバルアジア研究科(06年)で博士課程を含む研究科が開設されました。さらには「3・11」東日本大震災の前年に救急システム研究科(10年)が新設され、ここに10研究科15専攻を擁する総合的大学院体制が整いました。

ところで、21世紀の大学院は、誰もが自らの選択により適切に学ぶ機会が提供される「知の循環型社会」や「生涯学習社会」時代に対応するための再構築が求められています。もはや従前の研究者養成や後継者養成だけの機関に留まることは許されないのです。大学院は広く社会や世界に門戸を開いて、社会人や地域のためのリカレント教育・生涯学習の場としても活用されるものでなければなりません。更には、地球環境の変動等に対応するために、高度な知識と並行して、発災時に必要となる科学に裏打ちされた臨機応変な実用技能の修得も併せて求められています。加えて、アジアにおける近代化の魁(さきがけ)を果たした日本は、その責任として文化や伝統、教育制度、法体系、技術力、救急医療等の様々な分野での専門知識を日本で学び、母国の発展に貢献することを願う外国人留学生の要請にも積極的に応えて行かなければなりません。

こうした大学院を取り巻く環境の変化に対応するため、本大学院では、一例として、社会人受け入れのために、試験科目の一部免除、授業料の減額措置、土曜日や夜間開講等を実施して負担の軽減を行っています。また、政治学研究科では、日本研究者養成のために、日本の歴史・文化・政治・経済分野を網羅し、広く"日本学"が修得できる「日本政治研究プログラム」を設置しました。人文科学研究科では都内の多くの他大学院との単位互換制を含む学術連携協定を締結しています。さらには救急システム研究科です。近年多くの大規模自然災害に見舞われている日本ですが、体系化された防災医学や実践的スキルの修得の他にも、救急救命士の指導者たる教員育成のための医学的知識の深化に必要な科目を提供しています。

"ユニバーサル・アクセス"としての大学院教育の重要性が高揚する時代にあって、本大学院は日本そして世界のニーズに応えるためその使命を果たして行く所存です。専門性への憧憬が旺盛な方々、更なるキャリア並びにスキルアップを志す方々が集い、知的刺激に溢れた本学大学院で研鑽を積まれることを願っております。

プロフィール

略歴

  • 1955年青森県生まれ
  • 1984年国士舘大学大学院政治学研究科政治学専攻博士課程修了
    2006年政治学博士(国士舘大学)
  • 1984年本学に入職
    2002年政経学部二部教授
    2003年政経学部教授
    2012年大学院政治学研究科長
    同学部政治学科主任を2期(2002年から2003年、2006年から2008年)
    同学部教務主任を3期(2003年から2004年、2004年から2005年、2007年から2010年)務める
  • 2015年12月国士舘大学学長に就任

  • 2014年〜比較憲法学会理事

  • 2002年受賞学術賞:田上穣治賞(比較憲法学会)
    専門はアメリカ政治史