ドキュメント国士舘

夢をあきらめない 国士舘大学

編集部:国士舘大学の文学部で、学生はどのようなことを学んでいるのですか?

 国士舘大学の文学部には、「教育学科」「史学地理学科」「文学科」の3つの学科があり、合わせて5つの専門コースが設けられています。入学時に専門コースを選ぶことになりますが、他学科の科目でも文学部の中であれば、自らの興味に基づいて幅広く学び、知識や教養を身に付けられるように学部共通科目が用意されています。
 私が所属しているのは、文学科の日本文学・文化コースです。ここで中学校・高等学校の国語教員を目指す学生に、国語科の学習指導について教えています。

編集部:先生は「文学科」の中で、どのような授業を受け持たれているのですか?

 私が教えているのは、「国語科教育論」や「国語科指導法」などの科目です。「国語科教育論」は2年生が対象で、主に学習指導の基礎となる理論の部分を教えています。一方、「国語科指導法」は3年生が対象で、模擬授業などを行いながら、より実践的に、どのようにして国語科の授業を進めていけばいいかということを教えています。
 国語の授業というと、小説や評論、古典を読むというイメージが強いかと思います。授業では定番教材を使って「読むこと」の学習指導について学びつつも、「話すこと・聞くこと」「書くこと」の学習指導や言葉に関する事項の扱い方を学んでいって、どの分野もしっかりと授業ができる実践的な指導力を育成しています。

 これ以外に、「文章表現」という授業も担当しています。私の専門である日本語学の知識を活用しながら、メール、手紙、エッセイや自己PRなど、さまざまな文章を実際に書きながら、表現のコツを学んでいきます。大学生になるとレポートを作成したり、授業の中でも文章を書く機会が増えます。文章を書く上での基礎となる大切な決まり事などをここでは教えています。

編集部:メールや手紙ということですが、具体的にはどのような文章の書き方を学ぶのですか?

 文章の書き方を教えるときは、なるべく実際にありそうなケースを想定して書いてもらっています。たとえばメール文であれば、自分が受講している科目の先生に向けて「授業を欠席したので課題を教えてください」といった内容ですね。手紙の場合は、「自分の恩師にあたる人に大学生活の近況報告を行う」といった想定で文章を書いてもらいます。大学を卒業した後、社会人として恥ずかしくないように、頭語や季節の言葉から入るきちんとした文章を書く練習を行っています。

編集部:ゼミではどんなことを学んでいるのでしょうか?

 ゼミナールの目的は、自分で研究した成果を最終的に一冊の論文にまとめて発表することです。卒論のテーマは各自で自由に決められますが、私の研究分野である国語教育・日本語学から選んでもらうようにしています。
 学生は3年次の6月に卒論の第一次計画を提出します。そこが研究のスタート点になりますね。テーマを決めるに際しては、国語教育・日本語学の分野でどこに興味があるか、それに対してこちらから質問をして、学生の興味と卒論のテーマを結びつけていきます。国語教育の分野では、高校の教科書に必ず採用される芥川龍之介の「羅生門」をテーマに選んだ学生がいます。過去に「羅生門」がどのように読まれ、どのように授業が行われてきたかを調査しています。また、日本語学の分野では、自分の好きな作家を取り上げて、その作家の作品が「なぜ読みやすい」といわれるのかをテーマに研究しています。作品の文章をデータ化し、文章解析エンジンを用いて解析するのです。日本語には動詞、形容詞、名詞などの種類があり、どの種類の言葉が最も多く使われているかを集計して、他の作家の作品と比較し、「読みやすさ」を言葉の面から客観的に分析しています。他にも、好きなアーティストの歌詞を分析してその特徴を導き出す研究や、化粧品の広告表現の特徴を雑誌広告の中から抜き出して分析する研究など、学生たちはさまざまなテーマに取り組んでいます。

編集部:先生ご自身は、どのような研究をなさっているのですか?

 私は国語教育の中でも、文字や語彙、文法など言葉の特徴やきまりの学習指導について研究します。研究の内容は大きく二つに分けられて、一つは子どもたちの言葉の使い方の問題点を探ること、もう一つは言葉の特徴やきまりの学習指導をどのように行うかです。
 ところで、中学生に「国語の文法の授業は好きか」と聞くと、だいたい「嫌い」という答えが返ってくるんですね。理由を訊ねると、覚えることが多すぎるというんです。確かに「未然、連用、終止、連体」など、記憶することは少なくありません。中学校の国語で扱うのは、普段私たちが使っている現代語の文法ですから、そんなに諳記ばかりさせる必要があるのかと私も疑問に感じることはあります。
 また、実際に用語や定義を覚えても、それが文章の読み書きに役立つかというと、必ずしもそうはなりません。「全国学力学習状況調査」というのが毎年実施されていますが、その結果明らかになったのは、小学校6年生になっても主語と述語が対応していない文を選び出し、修正できない子が半数以上いるということでした。暗記させることが多いわりには、正しい文章を書くための指導がうまくできていないことが分かったのです。

編集部:なるほど、文章を読み書きする基礎ができていないわけですね。
問題はどこにあるのでしょうか?

 私は二つの問題点があると思っています。一つは、普段自分たちが使っている言葉を振り返って、「こういう仕組みになっているんだ」と理解することができていないこと。それができていないから、覚えることばかりが多くてつまらないとなってしまうんですね。そして、もう一つは、文法との関わりを常に意識して、書いたり読んだりする習慣が身に付いていないことです。
 小学生の作文を分析して感じることは、書いている内容はとてもいいのに、文章に誤りがあったり、また書き方が悪くてせっかくの内容が伝わらないことが多いということです。まだ研究の途中なのではっきりはいえませんが、書き言葉のルールが身に付いているか否かによって、整った文章が書けるかどうかが分かれてくるようです。文章中に誤りのある子は、同じような誤りを繰り返すんですね。だから小学校の高学年から中学校のうちに、文章を書く際にしっかりした文法を使えるよう心がけることを、授業の中でやっていく必要があるのかなと思っています。

編集部:どのようにすれば子どもたちは整った文章を書けるようになるのでしょうか?

 私としては、国語の授業で学んだ文字・語彙・文法などの知識を利用して、文章中の誤りを直したり、効果的な表現について考えたりするのが有効だと考えています。主語・述語・修飾語について学んだら、主述関係や修飾関係に不具合がある文を修正する練習をして、自分の書いた文章を推敲できるようにしたり、和語・漢語・外来語について学んだら、文種によってどのような語種が中心となるか確認して、文章の相手や目的に応じて語種を選んで書けるようにしたりしていくようにします。このように、言葉の特徴やきまりの授業で学んだ知識を使ってどのように文章を書けばいいか、子どもたちが実感できるようにしていくのが大事だと思っています。

編集部:教員志望の学生に対しては、どのようなサポートを行っていますか?

 私のところでは希望する学生を対象に、教員採用試験に向けて勉強会を毎週1回開いています。教員採用試験にはいくつかの科目がありますが、国語の試験では現代文と古文・漢文の読解問題が出題されます。過去問を使いながら、読解の練習を行い、しっかりと解けるように演習を行っています。あとは、学生の話を定期的に聞いて、細かくアドバイスしながら試験に向けたスケジュール管理をしています。
 また、先日は日本文学・文化コースの4年生で国語の教員採用試験に合格した学生に来てもらい、2・3年生の前で体験談を語ってもらいました。受験した都道府県の採用試験がどんな内容だったかとか、自分はどんなふうに勉強を進めてきたかとか、いろいろ後輩へアドバイスしてもらいました。先輩たちの体験談はとても参考になります。先輩たちの勉強法を参考にして、自分なりに試験対策を進めてもらえればいい結果が出るのではないかと思います。また、大学の教務課の方でも、国語以外の教科になりますが、教員採用試験合格者の体験談などを紹介しています。全学を挙げて、教員志望者の学生を応援しています。

編集部:先生はそもそもどのようなきっかけで、国語教育や日本語学に興味を持たれたのですか?

 私は大学で教育学を学んだのですが、たまたま2年生のときに取った日本語学の授業が面白かったんですね。日本語の特徴や仕組みが明快に理解できて、それで日本語学に興味を持ちました。でも、その観点で自分が受けた国語の授業を振り返ってみると、いろいろ疑問を感じてしまったんです。もっと子どものうちから、文章を読むにしても書くにしても日本語というものに基づいてしっかり学ぶべきなんじゃないかと。それで国語教育にも興味を持つようになりました。
 大学卒業後に大学院に進み、そこを修了してから12年間、中学と高校で国語の教員をやりました。ただ、その後も研究は続けていて、授業の実践を報告したり、自分なりの授業のあり方を論文にまとめたり、自分自身の国語の授業に活かす研究を行っていました。そういう自分自身の中高での教員経験を活かして、本学の授業では学校現場の実際や課題なども学生に話しています。

編集部:最後に伺いますが、4年間の文学部での学びを通して、
どのような人材を育成したいとお考えですか?

 そうですね。教員を目指している学生に伝えたいのは、しっかりとした国語の知識と力を生徒に身に付けられる先生になってほしいということです。そのためには授業の技術も大切ですが、そもそも教える内容について自分がどれだけ知識を持ち、理解できているかが大切です。たとえば古典の授業でも、単に教科書にある作品を訳すだけではなく、その作品を読み込み、当時の人々の様子や考えに触れ、今の時代と比較し、日本の文化を理解することが大事だと思っています。そう考えると、国士舘大学文学部の日本文学・文化コースには、中古、中世、近世、近現代まで、それぞれに専任の先生がいらして、時代ごとに作品に向かい合い、その時代の人々や社会について幅広く学べる環境が整っています。この恵まれた環境を活かして、ぜひとも生徒に教えるために必要となる知識を吸収してほしいと思います。
 あとは、自分が普段使っている言葉について、日本語学を通して、知識や技能や感覚を広げておいてほしいと思います。そうすれば授業の中で、作品を読み深めたり、自分の思いを正しく書いたり、話し合ったりできるように、うまく生徒たちを導くことができると思います。そういうしっかりした授業ができる先生になってほしいですね。
 いろんなことを幅広く学べる環境が、本学の文学部には整っています。さまざまなことを深く学び、国語教師としてのバックボーンを太くしてもらいたいなと思っています。

松崎 史周(MATSUZAKI Fumichika)准教授プロフィール

●修士( 教育学) /信州大学大学院 教育学研究科 教科教育専攻国語教育専修 修士課程修了
●専門/国語科教育、日本語学

掲載情報は、2020年のものです。
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