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リレーエッセイ企画「最近の研究テーマの展望とその成果」

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本企画では、文学部の専任教員が「どんな専門なのか」「何が勉強できるのか」といった内容を中心に、受験生の皆さんへのメッセージを含めたショートエッセイを執筆しました。どうぞお楽しみください。

平安時代のファッショントレンドから見えるもの

松野 彩(まつの あや)准教授(専門分野:日本古典文学)

 私は日本古典文学、特に平安時代の物語(うつほ物語、源氏物語、篁物語)に貴族の生活・文化がどのように描かれているかを研究しています。そのなかでも、最新の論文を含めて、衣装についての論文が何本かあります。 今から約1000年も前には、衣装に流行などなかったと思われるかもしれませんが、実は平安時代のような昔にも衣装には流行がありました。『うつほ物語』と『源氏物語』は成立時期に3~40年程度の差しかありませんが、好ましいものとして描かれる衣装の素材などに違いがあります。そして、それらの何気なく描かれている衣装の描写を、同時代の資料を用いて読み解くと、思いがけない意味や、登場人物の複雑な心情が読みとれることをこれまでの研究で明らかにしてきました。 この研究成果を生かして授業をしていますので、授業では貴族の生活・文化を学びながら古典文学を身近に感じてもらえると嬉しいと思っています。

  • 松野彩先生写真1
  • 松野彩先生写真2

<2022年9月6日(火)掲載>

太宰治とマスメディアの研究

平 浩一(ひら こういち)教授(専門分野:日本近代文学)

 私は現在、主に2種類のテーマを研究しています。今回はそれを紹介してみたいと思います。
 1種類目は、長く続けてきた太宰治の研究。太宰治の作品は「前期/中期/後期」に分けられます。その3つの時期を横断して引き継がれてきた特色を考察しています。言い換えると、太宰治が現代でも強い人気を博しているのはなぜか、小説の機制などに注目しながら、その魅力の源泉を探っているということになります。
 2種類目は、マスメディアと文学とのかかわりの解明を狙いとした、1920~40年代の新聞小説の研究です。科研費研究課題の研究代表者として、全国の様々な研究者とタッグを組み、多彩な角度から分析を行っています。「新聞」というマスメディアと「文学」との交点は、現代のメディアミックスやエンターテインメントの起点になっています。その探求は、今日の大衆文化や大衆社会の形態、芸術とイデオロギーとのかかわりの解明にもつながっていくでしょう。
 私は、以上2種類のテーマを中心としながら、学術論文、研究会、講演などを通じて、広く研究を展開しています。

  • 平浩一先生写真1単著『「文芸復興」の系譜学』(書影)
  • 平浩一先生写真2共編著『太宰治と戦争』(書影)
  • 平浩一先生写真2共著『新聞小説を考える』(書影)

<2022年8月23日(火)掲載>

教育者に役立つ文法指導の発展を目指して

松崎 史周(まつざき ふみちか)准教授(専門分野:教科教育学、初等中等教育学、日本語学)

 私の専門は国語科教育、特に小・中学校における文法指導について研究を行っています。ここ最近は、小・中学生の作文を対象として、そこに見られる文法的な不具合や文法形式の調査・分析を行っています。児童・生徒はどのように文法形式を用いて文章を書き、書いた文章にはどのような文法的不具合があるのか、調査・分析を進めるにつれて徐々に明らかになってきました。その知見を踏まえて、作文につながる文法指導の提案も進めています。
 また、これまで中学校の文法指導について、国語教科書の分析をとおして指導内容の検討を行ったり、戦前・戦後の文法指導の問題点を踏まえて指導方法の提起を行ったりしてきました(画像は戦前の文法教科書と戦後の作文テキストです)。これらの成果に作文分析の成果も加えて、ここまでの研究をまとめる作業も進めています。中学校の国語の先生が文法指導を行う際に参考となるような書籍がまとめられたらと思っています。

ドキュメント国士舘:文学部の実直

  • 松崎史周先生写真1

<2022年9月6日(火)掲載>

「日本の倫理思想」を究めて自分らしい生き方を発見

吉原 裕一(よしはら ゆういち)准教授(専門分野:日本思想史、倫理学)

 最近の研究テーマは、正確に言うと「日本の倫理思想における美と道徳をめぐる諸問題」ですが、すごく簡単に言うと「『自分らしさ』って何?」ということです。
 日本の先人たちは、幸せな人生を送るためにはまず「この自分は何を幸せだと思うのか」という考察、すなわち「自己」の探究が不可欠だと考えました。他人にとっては幸せなことでも、それを自分が幸せだと思えなければ意味がありません。他人とは違う「この自分」っていったい何だろう…? その問いから出発して、自己と世界とのつながりや、自己と他者とのつながりのメカニズムを発見し、「そうか、自分って実はこういう存在なんだ!」と気づくことができれば、自分にとっての本当の幸せが見えてきます。その理想を追求してゆくのが、まさしく自分らしく生きるということなんだと私は理解しています。そういう素敵な人生を歩んだ先人たちに憧れつつ、私もまた彼らの後を追っかけてゆきたいと願っています。

  • 吉原先生写真1武士の心は「常在戦場」(演習の一コマ)
  • 吉原先生写真2「無念!」さあ、ここからどうする?
  • 吉原先生写真3「人生」✕「学問」を実現するには?

<2022年8月5日(金)掲載>

朱熹の『小学』からひもとく子供の教育

松野 敏之(まつの としゆき)教授(専門分野:中国思想・江戸儒学)

 近世東アジアに大きな影響を与えた朱熹(しゅき)の編纂書『小学』に注目しています。朱熹は人の学びを小学・大学という段階で分け、子供の学びを重視しました。子供にとって適切な学びとは何か。
伝統的な学習法をふまえながら、歌のリズムで重要な教えを暗誦していく、将来のためになる教訓や戒めを覚えていく、人らしく生きるために大切な聖賢の教えを学んでいくなど、様々な模索の上で小学教育をまとめていきました。『小学』という書籍では、(1)学びの大切さを実感すること、(2)家族・仕事・友人と真剣に向き合うこと、(3)日常の言葉や挙措動作をつつしむこと、以上の3点を小学段階で身につけておくべきことの核であると示します。
 朱熹自身はどのように工夫しながら『小学』を編纂したのか、また後世の人々はどのように『小学』を活用していったのか、そのようなことを研究テーマとして取り組んでいます。

  • 松野敏之先生写真1単著『朱熹『小学』研究』(書影)
  • 松野敏之先生写真2武夷精舎(『小学』編纂時に在住)周辺の眺望

<2022年8月5日(火)掲載>

数々の芸能と伝承に彩られた神秘の地・吉野の魅力

倉持 長子(くらもち ながこ)講師(専門分野:日本文学)

 今年度、日本文学・文化コースに着任した倉持長子(中世文学・芸能研究)です。よろしくお願いいたします。
 今年は天武天皇元年(672)に勃発した壬申の乱から1350年にあたります。そこで私は現在、天武天皇挙兵の地・吉野の魅力を広く深く掘り下げる共同研究に励んでいます。
 吉野の国栖(くず)地域は、能〈国栖〉の舞台として知られ、皇室に献上される最高級の和紙「国栖紙」の産地としても有名です。壬申の乱時、国栖の翁は追手から天武天皇を匿って命を助けたため、天皇からお礼に秘法とされる紙の製法を教わったという伝承が残ります。令和の今も天皇直伝を矜恃とし、代々技術を継承する方々がいらっしゃることに感動を覚えます。
 この国栖紙が谷崎潤一郎をはじめとする文人墨客・高僧に愛されたことに注目し、国栖の紙漉きの家が所蔵する墨蹟を調査・研究しました。山川が美しく、数々の芸能と伝承に彩られた神秘の地を、皆さんもぜひ訪れてみてください。

  • 倉持長子先生写真1
  • 倉持長子先生写真2

<2022年10月18日(火)掲載>

ハイジはどんな少女か

中村 一夫(なかむら かずお)教授(専門分野:日本語学)

 年度ごとにテーマを決めて、4年生のゼミ生と共同研究を行っています。直近の二年間は山本憲美が翻訳した『楓物語』(1925)を調査対象にしました。
・あたしここに寝てよ。(野上弥生子、1920)
・あたい、此処へ寝るよ!(山本憲美、1925)
・わたし、ここで寝る!(上田真而子、2003)
翻訳者が違うものの、いずれも同じ作品の主人公の台詞です。これらの発言から同一人物をイメージできるでしょうか。
 原作はJohanna Spyri『HEIDI』(1880〜1881)で、日本では『アルプスの少女ハイジ』として知られるものです。山本版は登場人物の名前がすべて日本名に置き換えられており、ハイジは楓、クララは久良子、ペーターは弁太になっています。上の引用では野上版はお嬢様、上田版は普通の少女を感じさせるのに対して、山本版は威勢のよい下町の娘の姿が思い浮かびます。
 日本語では人称詞や文末表現からキャラや属性をうかがうことができますが、その種のステレオタイプに根ざす表現を役割語と呼び、近年注目される研究テーマになっています。『楓物語』を調査することで、大正時代の翻訳の形、近現代の日本語のありようを考えることができました。研究の成果は文学科の紀要「国文学論輯」に発表しています。

ドキュメント国士舘:文学部の想像

  • 中村一夫先生写真1

<2022年9月13日(火)掲載>



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