Kokushikan Magazines Feature

南研の挑戦 ー 地域住民の想いをカタチに ー

理工学部 建築学系 南 泰裕

本学理工学部建築学系・南泰裕研究室では、地域住民から依頼を受けて地域に開かれた新たなカフェの設計を進めています。このプロジェクトの発端は、本学世田谷キャンパスの近隣住民である風間久仁子さんの「子どもたちに負けないくらい頑張る母の姿を見せたい」という想いからでした。

 自宅1階をカフェにして地域交流の場に

二児の母親である風間さんは、長男が大学進学後もやりたいことをなかなか見つけられない姿を見て「大学に行っても、必ずしもやりたいことを見つけられるとは限らないんだな」と実感しました。そんな悩める子どもたちの「背中を押してあげたい、そして、何か大きなことを成し遂げるすばらしさを知ってほしい」と、以前から温めていた自宅カフェ構想を実現しようと動き出す準備をしていました。

ある時、風間さんは以前長男が行った国士舘大学のオープンキャンパスのことを思い出しました。そして「当時の理工学部建築学系・南泰裕教授の授業にとても共感した想いが蘇りました」と、振り返ります。
そして、「南先生と学生の皆さんに私のカフェをお任せしたい」「学生の皆さんと一緒に試行錯誤してゴールを目指したい」という想いがどんどん湧き、風間さんは本学理工学部の扉を叩きました。
この依頼に南教授は「風間さんは、地域に貢献できるカフェ、地域住民の寄り合いの場所になったらいいなというお話をされていて、すごく共感してご依頼を受けました」と快諾し、プロジェクトが始動しました。

カフェオーナーの風間さん
風間さんをサポートする芳澤さん

基本設計

南教授と学生らは、風間さんと基本設計図作成の場を何度も設け、カフェに求められる機能やデザインについて昨年12月まで話し合ってきました。
その結果、高齢者や子どもたちが気軽に集えるスペース、イベントも開催可能、そして地域住民同士が交流できる、といった思いの詰まったカフェの基本設計が出来上がりました。

プロジェクトを主導する南教授
檜垣幸志 非常勤講師

学生が設計プロセスに深く関わる

このプロジェクトには大きく2つの特徴があります。1つは、学生が設計プロセスに深く関与しているという点です。
大学院生を中心に、4年生や3年生もアイデアを出し、設計図の作成や模型制作などに取り組み、南教授をはじめとする理工学部の教員陣が、学生のアイデアをまとめ上げ、より実現可能な設計へと導いています。学生にとっては、設計理論を実際のプロジェクトに落とし込むという貴重な機会となります。
また、年度をまたいでのプロジェクトになるため、卒業する学生は後輩にバトンを託すことになります。南教授は「継承から生まれる学びも大事にしてほしい」と思いを述べました。

地域に開かれた「我が街の大学」

もうひとつの特徴は、大学と地域住民が一体となることにより、大学が地域貢献に寄与できるという点です。
地域住民と学生が、共に地域をより良くすることを目指し、また地域住民に普段大学がどのようなことをしているのかを見て、触れることができる機会にもなります。このプロジェクトは、本学が地域に「開かれた大学」としての新たな可能性を示す好機となりえます。

新たなコミュニティの場を

1月からは実施設計に入っており、5月に着工、2025年7月の完成を目指しています。

カフェは地域住民の交流拠点として、そして学生たちの学びの場として利用されることも想定されており、このプロジェクトの成功を機に、大学と地域住民の連携がさらに深まり、新たな取り組みが生まれることが期待されます。

南教授 「体験から学ぶ 責任と使命」

学生たちが地域住民と直接関わり、設計の過程を体験することで、社会に対する責任感や建築家としての使命感を深めてほしいと考えています

風間さん 「子どもたちの可能性を広げる一助に」

地域住民の皆様や学生の皆様が、このカフェでさまざまな経験をし、自分自身の可能性を広げていっていただけたらと思います。そして、この場所が地域全体の活性化につながる一助となれば幸いです

 

話を聞いた先生(取材日 2024年12月12日・世田谷キャンパス)

南 泰裕(みなみ・やすひろ)理工学部 教授

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