2024年7月10日、国士舘大学政経学部経済学科の講義「汚染の経済学」にて、IJOOZ株式会社代表取締役の堀木遼氏をお招きし、『生搾りオレンジジュースの環境と経済』をテーマにした特別講義が行われました。同氏は、学生起業家としてのキャリアからシンガポール発のAIoT自動販売機事業の日本支社立ち上げ、そしてSDGsを戦略の中核に据えたアップサイクルプロジェクトまで、堀木氏ならではの“現場と理論をつなぐ”お話をうかがいました。
講義では、最初に、IJOOZのビジネスモデル紹介からスタートしました。2016年創業以来、全世界で3,000台超、日本国内では2023年の営業開始から関東・関西・東海・九州・中国地方に1,650台以上設置された生搾りオレンジジュース自販機の展開実績が示されました。AIoTで在庫・鮮度をリアルタイム管理し、月間800万杯以上を稼働させるオペレーション効率化の仕組みは、センサー×クラウドの連携によって生まれる付加価値を具体的データで裏付けるものでした。
次に、未利用資源としてのオレンジ皮の環境負荷とコスト構造が問題提起されました。オレンジ皮は80%超の水分を含んでおり、そのまま焼却・埋立処分すると大量のCO₂排出とエネルギー消費を招きます。IJOOZでは倉庫内に乾燥粉砕機・減水機を導入を検討し、処理コストを従来の1/5~1/50まで圧縮した上で、「廃棄」ではなく「資源」として再定義しています。
講義のハイライトは、多様なアップサイクル事例や予定の紹介です。
・精油メーカーとの共同開発による高品質オレンジ精油抽出
・発酵技術を活用した無添加機能性食品・レトルトカレーの商品化
・クラフトジンへの果皮転用によるブランドコラボレーション
・畜産サプライチェーンでの「オレンジビーフ」プロジェクト
・低温炭化技術によるバイオマスカーボン化、土壌改良材化
これらは単なるコスト削減策にとどまらず、製品化による新たな売上と地域産地への経済還元、ブランド価値向上を実現する「負の外部性の内部化」として、環境経済学のフレームワークに照らしても示唆に富む取り組みです。
講義後、学生からは「理論で学んだ負の外部性が現場でどうビジネスチャンスに転換されるかが腑に落ちた」「廃棄物の廃棄コストではなく、新たな収益モデルとして捉える発想に刺激を受けた」といった感想が寄せられ、環境経済学の学びと実践がつながる貴重な機会となりました。
本特別講義を通じて、AIoTとアップサイクルを組み合わせたオレンジ資源循環モデルの可能性を実感し、理論だけでなく「現場での意思決定プロセス」まで俯瞰的に学ぶ場が提供されました。
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