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2025.08.06

男子柔道部員対象のアクティブラーニング講習会を実施しました

その他

男子柔道部アクティブラーニング講習会を8月2日、多摩キャンパスメイプルセンチュリーセンター多摩301教室で実施しました。男子柔道部員複数名による大麻使用事案が発生したことを受け、違法薬物への理解を深めること、今回の問題を部員一人一人が受け止め考える機会にすることを目的としました。 

田原学長のあいさつ

まず、田原淳子学長があいさつに立ちました。
田原学長は、経験したことのない苦労や落胆の気持ちが入り乱れる状況下において、聞き取りやアンケート調査に協力した柔道部員に対して感謝の意を示しました。
大学として、学生寮で大麻が使用された根本的な原因を究明するため、使用した本人の問題だけでなく、大学の管理体制や部の指導体制に問題がなかったか幅広い調査を行っていると説明しました。田原学長は「二度とこのようなことが起きないと社会が納得するようにすることが、信頼を取り戻すということ」と大学としての決意を述べました。
そして、ボイコットにより出場できなかったモスクワオリンピック日本代表選手たちの例を挙げ、その中には後に国士舘大学の教員となりオリンピック選手を育てた朝倉利夫教授(レスリング)と森脇保彦元教授(柔道)がいたことを紹介しました。田原学長は「人生には理不尽なことが起こる。この苦難をどう乗り越えて皆さんの糧にしていけるか、一緒に考えていきたい」と語りかけました。 
また、柔道の生みの親である嘉納治五郎先生の言葉「精力善用(心身の力を最大限に活用し良い目的のために使うこと)」と「自他共栄(自分だけでなく他人と協力し共に発展し繁栄していくこと)」を引用し、これが柔道の精神であると述べました。 
最後に、「今回の学びを自分のものとして、柔道家としてのプライドと自信を取り戻し、伝統と栄光ある国士舘柔道部の再生に向けて、力を発揮してほしい」と激励しました。 

講話

講話は、NPO法人アパリ理事長で本学法学部非常勤講師の尾田真言氏が務めました 
「薬物の2つの危険性(疾病性と犯罪性)」と題し、薬物乱用により「無動機症候群」や「離脱症状」など精神・身体に悪影響を及ぼし本人の意思や思考ではコントロールできなくなる「依存症」になること、若年層の薬物使用は特に危険性が高いことを指摘しました。また、日本は他国と比較して薬物に対して重い刑罰を科す国であり、法改正によりさらに厳罰化されたことを説明。合法化されている国々も大麻に害がないからではなく、管理・課税・未成年への規制を目的としていると解説し、刑罰を受けるだけではなく、就きたい職業に就けない、自由に海外渡航できないなど、多くの制約があることを説明しました。 
尾田氏は最後に「薬物を使用し始める人の傾向として、ストレスを抱えている人、生きづらさを感じている人が挙げられる。暇だから手を出したという声をよく聞くが、そこには寂しさが潜んでいる」と話し、疑いがある人への声掛けや情報提供などによる早期発見・早期治療が非常に重要であると結びました。 

グループワーク 

グループワークは、「この問題をもう一度考えよう〜ここから未来を向くために〜」と題して、体育学部こどもスポーツ教育学科の後藤正彦教授が務めました。
グループワークの前に後藤教授は、「自分たちが活動停止期間に何を考え学んだのかを自分の言葉で答えられなければ意味がない。何のために男子柔道部に入ったのか、ここで何を目指していたのかを改めて考える時間にしてほしい」と語りかけ、始めました。 
まず、脳の自己抑制機能となる大脳新皮質は大学生の段階ではまだ発達段階であり、知識や理性が弱いと好奇心や興味関心に起因する行動が優位になることを説明。興味と理性のバランスを保つためには、研修会等を通じた知的理解が必要であることを述べました。そのほかにも、ストレスマネジメントによるメンタルの強さの問題、モチベーションや目的意識の問題、チームの一員としての自覚の問題など、問題には複数の要因が重なることがあり、自分は絶対に大丈夫と言い切れないという自覚を促しました。 

グループワークでは、今回の事案での「自分の気持ち」と「周囲の見方」を出し合い、自分と周囲の見方の違いを明らかにした上で、自分そして部としてできること、すべきことを話し合い、他の部員に呼びかけ共有したい想いや決意をまとめました。 
グループごとの発表では、全く気づけなかったという反省・後悔や同級生が関与したことの悲しさ・怒りが述べられたほか、自信喪失やモチベーションの低下、柔道ができない虚無感と怒り、疑いの目を向けられることのつらさ、未来を見る自分たちと今しか見ていない周囲とのギャップ、将来への不安などが吐露されました。中には「柔道部の一員になっただけで満足している人がいる」「柔道に真摯に向き合えないなら辞めてもらっていい」という強い意見も出されるなど、本音をぶつけ合う状況も見られました。その上で部員からは「一人一人が危機感を持ち柔道部として責任ある行動を心がける」「当たり前のことを当たり前にして、応援されるチームになる」「応援してくれる人に感謝する」「何のために国士舘に来たのかを再確認し、国士舘としての自覚を持って日本一を目指す」といった想いが述べられました。 

後藤教授は、「自分たちが被害者だという思いはなかなか払拭されないかもしれないが、集団には社会的責任がある。特に伝統ある男子柔道部ということで注目され、今後同様の事件が起こるたびに国士舘の名前が出されることになる。私たち大学側はもちろん、柔道部もこの責任からは逃れられない。この事実を一人一人が自分事として受け止め、部として気持ちを一つにし、行動と姿勢で語れる人になってほしい」と語りかけました。 

講習会は、学長をはじめ大学関係者も見守り、大学としての責任の重さと管理体制や指導監督体制の見直しに全力で取り組むことを再確認する機会となりました。 

田原学長によるあいさつ
グループワークに取り組む男子柔道部員ら