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2024.10.31

彬子女王殿下による特別講義(第7回)が行われました

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本学人文科学研究科客員教授の彬子女王殿下による特別講義が1017日、世田谷キャンパスのメイプルセンチュリーホール大教室で行われ、彬子女王殿下は人文科学研究科および文学部の学生と教職員約200人に「日本文化の生きる街」と題してご講義をなさいました。
佐藤圭一学長はあいさつで、今年で7回目となるご講義に謝意を表した上で、全国各地に息づく日本文化の伝統と魅力を拝聴できる貴重な機会として本ご講義に期待を寄せました。

 

ご講義は、英国・オックスフォード大学留学中のエピソードから始まりました。彬子女王殿下は留学中の大英博物館でのボランティア活動を通じて、海外の方々の日本文化に対する関心の高さを感じるとともに、日本の文化についてきちんと知り、伝えていきたいとお思いになられました。
ご帰国後、京都の大学でご勤務された彬子女王殿下は、日本美術の研究活動と並行して一般社団法人「心游舎」を設立され、現在もワークショップやオンライントークセッションなどの講演活動を通じ、多くの方々に日本文化の魅力を発信されています。
その中でも、特に注力されているのが子どもたちへの教育でした。伝統工芸のワークショップや日本の年中行事に関する講演会など、「生活の中に息づいてこそ文化は根付く」という彬子女王殿下の想いから、子どもたちが楽しみながら日本文化に触れることのできる機会を数多くご提供なさっています。

一方で、伝統文化の継承には多くの課題があることもご指摘になりました。後継者不足、伝統技術の衰退、現代社会における日本文化への意識の薄れなど、京都に住む職人の話をまとめた著書『最後の職人ものがたり』から、いくつかの例を挙げて想いを語られました。

しかし、彬子女王殿下は伝統の明るい未来についても述べられました。「伝統とは残すものではなく、残るものであろうと思います。人間がいくら頑張っても抗えないものはあります。 今できることは、必要となったときに再生できるように記憶を記録すること。そして大切な日本文化が残るための未来を私たちの力で作っていくということではないかと思うのです」とお話しになり、現代に生きる私たちにできることの例として、太宰府天満宮の表参道の伝統と現代を融合した商店街の取り組み事例などを述べられました。最後に「文化を保存するだけではなく生活の中で生かしていくことが、私たちが日本の未来のためにできることではないでしょうか」と、講義の本編を締めくくられました。

 

ご講義後の質疑応答では、日本の歴史文学を研究する学生から、日本美術研究において時代背景をどう考慮して研究していらっしゃるのかとの質問に、「現代的な感覚で読むのではなく、当時の感覚、例えば色や数、情景などを具体的に想像しながらその時代の文学を理解することが大切」とお答えになられました。

 彬子女王殿下は残りの時間を利用して、皇宮警察で警衛にあたる本学卒業生についてご紹介くださり、本学関係者にとって卒業生の活躍を知る機会となりました。約1時間の講義と質疑応答を終えた彬子女王殿下は、現在の側衛官である本学卒業生の警衛を受けながら大きな拍手に見送られ、にこやかに教室を後にされました。

ご講義をなさる彬子女王殿下
佐藤学長によるあいさつ
会場の様子

これまでのご講義

彬子女王殿下ご講義アーカイブ