Kokushikan Magazines Feature

経営学部・田中史人ゼミ学生が実践型ビジネスに挑戦ー地域カフェで学生考案メニューを発売ー

経営学部 経営学科 4年 大神田 健人
経営学部 経営学科 4年 板橋 航
経営学部 経営学科 4年 長島 さくら
経営学部 経営学科 田中史人教授

新緑がまぶしくなり始めた5月13日、本学世田谷キャンパス近くのカフェ「my new house」に学生の声が響いていました。その声の正体は、経営学部経営学科の4年生大神田健人さん、板橋航さん、長島さくらさん。事業創造やベンチャービジネスが専門の田中史人ゼミに所属する彼らが、1日限定でカフェの空間を借りて特製サンドイッチを発売するビジネスに挑戦していたのです。経営学部の学びを生かし、多くの方に笑顔を届けるべく果敢に挑戦したその軌跡を追いました。

左からカフェの●●さん、後藤愛さん、本学の板橋さん、長島さん、大神田さん
左からカフェの日野雅洋さん、オーナーの後藤愛さん、本学の板橋さん、長島さん。下段に大神田さん

協力してくださった「my new house」さん

本学世田谷キャンパスから世田谷区役所通りを南に徒歩8分、松陰スクエアの1階にあるレコードカフェ。
2025年3月にオープンしたばかりの清潔感あふれる店内では、お洒落なインテリアやレコードが立ち並び、DJブースも完備。食事と音楽を幅広く楽しめる空間は、「さまざまな方々の入り口になる空間をつくりたい」というオーナーの想いが込められている。
看板メニューは、「和牛タンのオムハヤシ」や「旬の食材を使用した日替りパスタ」、「自家製ガトーショコラ」など。
店舗公式Instagram

きっかけは地域イベント「楽市楽座」。
学生×カフェ 想い通じて実現に

本プロジェクトのきっかけは、昨年10月に行われた「せたがや駅前・楽市楽座」に遡ります。東急世田谷線世田谷駅前を舞台とした秋のお祭りで、田中史人ゼミとしてブースを出展していたところ、my new houseさんも所属する世田谷駅前商店街としてブース出展していました。オーナーの後藤愛さんは「元気のよい学生さんたちが印象に残っていました」と笑顔で振り返ります。この出会いがきっかけとなり、次第に学生がカフェの店舗に通うようになりました。

学生たちが所属する田中ゼミは、学生が自らビジネスを考える課題が課されるいわば超実践型のゼミです。大神田さんは、そのゼミで4月からゼミ長を務めることになりました。ある日、大神田さんがランチに訪れたときに後藤さんへ相談しました。「私は、食に関するビジネスをやりたいのですが、なかなか場所がありません。よければ一緒にやってくださいませんか」。なんと、後藤さんはすぐに快諾。その時の心境をこう振り返ります。

「元来、新しいことやワクワクすることに挑戦する性格なんです。話を聞いたときに楽しそうと感じ受け入れました」
学生のチャレンジ精神が後藤さんに伝わった瞬間でした。

日程は、話し合いの末に平日のランチタイム12:00~15:00に決定。世田谷キャンパス近辺に位置する世田谷区役所の職員など、多くの方々の来店が見込まれる時間帯にお店を貸してくださることは容易な決断ではありません。賛同してくださったのは、後藤さんの優しい想いがありました。

「お店の近隣にある国士舘大学の学生さんと新しい取り組みをしてみたかったんです。そうすることで、学生の経験や大学との交流が増えるだけでなく、地域一帯の活性化になると感じました。世田谷区や学生さんの成長を考えたら、私もワクワクしていましたし、利益よりも大切なことがあると思いました」

プロジェクトが決まった大神田さんは「はじめは自分の小さな想いだったものが、実現に至って感無量です。協力してくださる方々に恩返しするためにも全力で取り組みます」と笑顔。
同じゼミに所属する板橋さんと長島さんとの3人チームで本格的にスタートしました。

販売は3種のサンドイッチ 経営学の視点学生らしさを生かして

販売する時間はわずか3時間でもそのプロジェクトは壮大。メニューの考案や調理方法の工夫、オペレーションや広報活動などやるべきことは山積みでした。
そのような中、学生たちが心がけたことは"計画性"。「日ごろのゼミでは、田中教授から計画性の部分をたくさん指導されてきました。経営には自分が想像している何倍もの計画が必要だと学んでいたからこそ、一つ一つに必要なことを順序立てて考えることを大切にしていました」と話します。

多くの課題を乗り越えるために計画する、その姿勢こそ実践型の学びといえます。

まず、取り組んだことはメニューの考案。ここにも、大神田さんは計画に基づいた戦略を立てました。
「お店の方に相談したときには、『ランチタイムは時間との勝負』と教えてもらいました。限られた時間の中で、多くの方に味わっていただくには店内でもテイクアウトでも同じくらいの手軽さが大事だと考えました」。また、「お店の看板メニューであるハヤシライスに挑戦しようとしましたが、難易度が高く、普段のメニューとの差別化が図りたかったです。ボリューム感をアピールすることも含めてサンドイッチなら興味を引けると考えました」と大神田さん。回転率だけでなく、学生ならではのアイデアを取り入れました。

試行錯誤の末、「油淋鶏サンド・とり天わさびマヨサンド・鮭の南蛮漬けサンド」に決定しました。

次に決めるのは販売価格。大神田さんは「ランチに使う金額を調べ、手の出しやすい価格にすることを心がけました」と話します。データをもとに、利益を出しつつ多くの来客が見込める価格に決定しました。

メニューが決まると、早速手作りのチラシを作成し、学内や近隣地域に配布しました。経営学にとって広報活動も重要な学びの一つです。

学生が日頃の学びからアイデアを出し、創意工夫を重ねプロジェクトは進行していきました。

学生が考案したサンドイッチ
学生が考案したサンドイッチ

現場で感じた経営の難しさ

プロジェクトはその後も順調に進み、ついに実働面を踏まえた店舗での前日準備を迎えました。調理、会計、接客のフローなど複数の確認事項がある中、後藤さんたちからの意見は目から鱗の連続でした。

板橋さん
「実際に営業視点で店舗をみると、会計の流れやオーダーの取り方など多岐にわたる気配りが必要だと痛感しました。お店の方々から営業時の留意点などのアドバイスを聞けてとても勉強になりました」

大神田さん
「調理する面での細かな技術に驚きました。教えていただいた内容は、試作していくだけでは気が付けなかったことばかりだと感じています」

机上だけでは気が付けない経営の難しさを痛感した瞬間でもありました。

それでも、学生たちは試行錯誤を繰り返しました。キッチン担当の大神田さんは調理方法、ホール担当の長島さんはテイクアウト時の細かな工夫、兼務の板橋さんは総合的なオペレーションまで、それぞれの役割で着実に準備しました。
準備が終了したのは22時ごろ。それでも、「来てくださるお客様の交流の場となることを」を目標に定めた学生たちの笑顔からは、ビジネスを達成させる強い意気込みがうかがえました。

その様子を見た後藤さんは来たる営業日に向けて期待の言葉をかけました。
「想定外のハプニングは必ず起こります。そのときに、自分たちで解決策を考えて生かしていくことで学びを深めてほしいです」

メニューの仕込み作業に励む様子
メニューの仕込み作業に励む様子
調理時のアドバイスを受ける大神田さん
調理時のアドバイスを受ける大神田さん
接客のアドバイスを受ける様子
接客のアドバイスを受ける様子
会計システムを確認する様子
会計方法を確認する様子

迎えた当日・大盛況の後に完売

迎えた当日。何度シミュレーションをしても学生らの胸には一抹の不安がよぎります。「完売できるのか」「お客様が来るのだろうか」。

しかし、12時の開店と同時にその不安は払拭されます。本学学生、教職員のみならず区役所職員、地域の方々など多くのお客様が来店し、満席の大盛況。

時には、オーダーが立て込み、提供に大幅な時間を要してしまうこともありましたが、3人が一体となり必死に対応しました。キッチンで焦ることもあったと振り返る大神田さんを板橋さんがコントロール、長島さんはホールでお客様への気配りを常に心がけ、まさにチームとしてうまく機能した結果、当初想定していた45食を大きく上回る60食超を売り上げたのでした。

来店者からは「チラシをみて、学生考案のメニューが気になり足を運びました」「ボリューミーで美味しかったです。学生が作ったとは思えないクオリティでした」、「明るい接客で元気をもらえました」といった声が聞かれました。

それらの声は学生のエネルギーとなりました。「美味しいと言っていただいたときの感動は忘れられない」、「調理担当はお客様と話す機会はないのですが、その声が聞けると食を通して会話しているような感覚でした」と笑顔で振り返る姿が何よりの証拠です。

後藤さんも「いかなる時も落ち着いて対応していてよかったです。満点に近い接客でした」と笑顔でねぎらいます。
自らが考えたビジネスで多くの方々が笑顔になる、利益を上げることはもちろん"ビジネスを通して人を幸せにする"その喜びを知ったのでした。

にぎわう店内の様子
にぎわう店内の様子
調理する大神田さん(手前)と板橋さん
調理する大神田さん(手前)と板橋さん
接客する長島さん
接客する長島さん
売上発表でともに喜び合う一同
売上発表でともに喜び合う一同

学生×カフェ 両者にとってかけがえのない経験に

大盛況ののちに無事に終了した本プロジェクトは、学生のみならずカフェの方々にとってもかけがえのない時間となりました。

後藤さん
「普段来られない層のお客様にお越しいただくきっかけとなりました。また、メニューやチラシの配布など、学生視点からのアイデアは私たちも勉強になりました」

プロジェクトを終えた学生たちは次のように話します。

大神田さん
「自らが考えたビジネスを多くの方々からの協力を得て、成し遂げられたことは何よりうれしいです。課題や反省を生かしながら学びを深め、これからも実践型の学びを追求していきたいです」
板橋さん
「とても楽しかったです。3人がそれぞれの役割を明確にしていたからこそ成功できたと感じています。お客様からいただいたうれしい言葉を糧に学生生活を頑張っていきます」
長島さん
「飲食業はいかにリピーターをつくれるかが大事だと教わりました。お客様に"次も来たい"と思われるような接客を心がけ、多くの方々と関わることができた経験は何事にも代えられない経験です」

しかし、もちろんそこには多くの反省や課題が残りました。
「ピーク時の想定がまだ足りていなかったです。多くの方々をお待たせしてしまったことは大きな課題です」と学生たちは口を揃えます。
自ら考えて実践、そして反省して次に生かしていく。机上だけでは学べない実践的な学びを経て、3人はより成長していきます。

理解して協力してくださったカフェの方々や訪れてくださったお客様。
多くの笑顔を生み出した経験を基に、学生たちはこれからも学び続けていきます。

2026年5月取材

■関連リンク

教員情報 田中史人教授

※本企画は、営業許可を有するカフェが販売主体となり、同店舗の衛生管理体制の下で実施しています。


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