Kokushikan Magazines Feature

世界を見据える視野を

佐々木洋氏 × 中山雅之21世紀アジア学部長
4月から21世紀アジア学部の客員教授に就任した花巻東高等学校硬式野球部監督・佐々木洋氏が、中山雅之21世紀アジア学部長と未来を生きる若者が身につけるべき「世界への視野」について語りました。

本学卒業生で花巻東高等学校硬式野球部監督の佐々木洋氏が、4月から21世紀アジア学部の客員教授に就任しました。佐々木氏は、菊池雄星選手や大谷翔平選手など、世界を舞台に活躍する日本人プレーヤーを育てた監督としても知られています。日ごろは高校球児を指導する佐々木客員教授ですが、実務家教員として、大学教育に新しい視点を提供しています。 
佐々木客員教授と中山雅之21世紀アジア学部長が、未来を生きる若者が身につけるべき「世界への視野」について語りました。

2026年4月取材・町田キャンパス 

プロフィール

佐々木洋氏

佐々木洋(ささき・ひろし) 

岩手県出身
1998年国士舘大学政経学部卒業
花巻東高等学校教員、同校硬式野球部監督 

2000年に花巻東高校に地歴公民科の教員として入職。2002年に硬式野球部監督に就任し、3年後の2005年に夏の甲子園初出場。これまでに、夏11回、春6回甲子園に出場し、夏は2009年、2013年にベスト4、春は2009年に準優勝へと導いた。 

中山雅史21世紀アジア学部長

中山雅之(なかやま・まさゆき) 

国士舘大学21世紀アジア学部教授
専門はスタートアップ

スチューデントスタートアップを専門とし、「遊びと学び」をテーマに研究を続ける。自身も学生起業家であった経験も活かして教育を行う。外務省NGO研究会有識者委員やPanasonicNPO/NGOサポートファンド for SDGs審査委員長など国際協力分野でも活躍。
2024年度から21世紀アジア学部学部長。

大学時代の退寮で生き方を見つめ直した 

――佐々木先生は国士舘大学の政経学部を卒業されています。学生時代は町田キャンパスで野球に打ち込まれていたと聞きました 

佐々木
将来は野球の世界で活躍したいと意気込んで国士舘大学に入学しました。硬式野球部で寮生活を送っていましたが、3年生で寮を出されてしまいました。当時でいう戦力外通告のようなものです。上下関係の厳しい寮生活から解放された喜びはつかの間、すぐに目の前が真っ暗になりました。退寮した先輩の多くは部活に来なくなっていましたし、私もこのまま終わってしまうのかと、焦りがこみ上げてきました。「なぜ自分はこうなってしまったのか」「何か解決法はないのか」とすがるような思いで本に答えを探しました。そして、偶然手に取った本に救われ、結果として野球部を卒業まで続けることができました。

中山
挫折経験から目を背け楽なほうに流れることもできますが、書物と出合えたことが幸いしたのですね。

佐々木
当時の私に本を読む習慣はなかったのですが、この出来事がきっかけで漁るように本を読みました。そこで、今の生き方につながる思考の法則を知ることができたのです。卒業後は、国士舘大学硬式野球部OBの水谷哲也監督が率いる横浜隼人高校で1年、野球部コーチを務めた後、今の学校に地歴公民科の教員として入職しました。最初はバドミントン部の顧問から始まりましたが、硬式野球部の監督になって甲子園に出ることを目標に設定し、そのための具体的な行動を起こしました。今でこそ甲子園出場校として認知されていますが、文字通りゼロからのスタートでした。今の私があるのは、退寮をきっかけに生き方を見つめ直したからです。大学時代に野球でそこそこの活躍をしていたら、何も気付くことなく終わっていたかもしれません。この経験が良かったと、今は強く思っています。

意識と意欲を変える仕掛け 

――大学時代の経験は、その後の人生に大きな影響を与えるのですね

中山 
21世紀アジア学部にはスポーツに打ち込む学生も多いのですが、けがなどが理由で夢を諦めざるをえず、アイデンティティ・クライシスに陥った学生を何人か見てきました。 
一方で、彼らの中には海外留学で価値観や人生観を変えた学生も少なくありません。例えば、在学中にワーキングホリデーで1年間オーストラリアに留学し、卒業後はタイで日本語を教えている元陸上競技部の卒業生。アメリカに留学して哲学に興味を持ち、大学院で学び直して大学の教員になった硬式野球部の卒業生。在学中に英語を徹底的に学び直し、プロ野球球団で通訳をしている硬式野球部の卒業生。また、サッカーをしていた学生はオーストラリアの大学で学びエージェントのライセンスを取得して選手の移籍マネジメントをしています。いずれも、留学や語学の学習をきっかけに新しい可能性を見つけ、スポーツの枠を越えて広く活躍しています。 
21世紀アジア学部では、入学当初から「留学に行きましょう」と伝えています。必修科目として海外研修を設けているのも、何らかのきっかけを与えたいという思いがあるためです。 

佐々木 
一歩踏み出して世界を見ると、視界がぐんと広がります。いくら言葉で説明しても限界があり、自分の眼で見ることで魅力に気づきます。意識と意欲を変えると行動が変わっていきます。私たちは、世界に目を向けるような仕掛け「意識と意欲を変えるきっかけ」を提供することが大切だと思います。 

中山学部長

中山 
たとえ英語が得意ではなくても、海外に放り込むと必死に学ぶものです。何かギアを変えるきっかけがあれば、学生は大きく成長していきます。学生には、世界が無限に広がっていることを知ってほしいと思っています。

佐々木  
これまで花巻東高校の硬式野球部は県内の生徒に限定して入部を認めていましたが、「世界から選手を受け入れる」と宣言したところ、世界各国から入部希望がありました。現在は、複数の外国人生徒が学び、野球部で指導を受けています。これは、チームが勝つための施策ではありません。日本野球の育成年代への優れた教育力や育成力を世界に伝えていきたいという思いがあるのですが、加えて、生徒たちには、外国人生徒と生活を共にしコミュニケーションをとることで、多様性を知り、世界を身近なものとして考えてほしいという狙いがあります。

外へ目を向け、常識にとらわれない柔軟な思考

――菊池雄星選手と大谷翔平選手という2人のメジャーリーガーを指導されました 

佐々木 
2人とも高校時代からメジャーを目標の一つに設定し、逆算して高校生活を送ることができていましたから、今があると思います。早くから海外に目を向けさせて、自分の可能性に無意識の制限をかけさせないことには意識を向けました。 

中山 
知らないことによる不安がブレーキをかけてしまうこともあります。そのため、可能性を狭めないような環境を整えることを心がけています。内にこもらず、外の世界を知り、異なる視点を持つ。ビジネスの世界でも、イノベーションを起こすためには異業種と交流し、視点を広げ続けるのが良いとされています。多様な人々とコミュニケーションを取り、外の世界への好奇心が湧くと、挑戦へのエネルギーに変わっていきます。 

佐々木 
人間はどうしてもこれまでの物差しで考えてしまいがちですから、私も意識的に異分野の方々と交流を持つようにしています。さまざまな考え方を吸収していくことで、育成法も日々アップデートしています。 
昔、野球界では「高校生で160キロを投げることは不可能」という固定観念が支配的でした。しかし、大谷選手がその記録を塗り替えたことで、常識は打ち破られました。これからは、160キロを超える選手がどんどん出てくるだろうと思います。 
高校野球界の坊主頭の伝統についても、早い段階で廃止しました。意味のあることであれば世界中で、そして他のスポーツでも行われているはずです。誰もが疑わずに続けてきたことこそ、常識にとらわれず視点を変えて柔軟に考えることが大切だと考えています。 
菊池選手と大谷選手は高校時代から優秀な選手たちで、技術で私が教えることはそこまでありませんでしたが、あえて言うとすれば、生きていく上での「考え方」は伝えられたのではないかと思います。 

野球の、そして人生の具体的な目標設定を 

――高校硬式野球部の部員にはどのような指導や目標設定をしているのでしょうか

佐々木  
これまでの経験から言えることは、指導は一律にはいかないということです。皆が同じ練習をすれば良いわけではありません。個々の目標や個性に合わせて、指導者がカスタマイズすることが必要でしょう。自主性が大切というのはよく聞く話ですが、考え方を教えてからでないと自主性は発揮できないと思います。その境目を見極めながら指導をしていく必要があります。 

中山 
目標設定は野球を超えて考えてもらっているとお聞きしましたが 。

佐々木氏

 佐々木 
野球でプロに行けるのは一握りですし、野球人生は短い。野球に限らず、彼らの未来のための3年間にしてほしいと思っていますから、野球を軸にしながらも、その後の人生にどう生かすかを含め人生の目標設定をしています。僧侶や指導者、さらには政治家になると目標を定めて大学を選び、実現させた卒業生もいます。目標から逆算して考えていくと、野球をやっているだけではダメだとなってくるのです。そこで野球以外のことにも取り組むことに価値があります。広い視野で自分の未来を考えることが大切です。 

――国士舘で学ぶ学生に、どんなことを伝えていきたいですか

佐々木 
大学時代は、その後の人生を決める大切な時間です。何もしなくても日々はあっという間に過ぎていきます。数字と期限を明確にした目標を設定して、行動するための思考パターンを身につけてほしい。「したいこと」と「しなければならないこと」が違うことを理解し、優先順位を決める力もその一つです。 
学生アスリートはどうしても競技が中心の生活になってしまいがちですが、その意識を変えたいですね。ぜひ競技以外のことにも目を向けて挑戦してもらいたいです。私は大学で教員免許を取得しました。硬式野球部員の中で教職課程を履修していたのは、当時おそらく私一人だったと思います。しかし、それが今につながっている。教員免許を取得できたことが、大学への一番の感謝です。 
人生を不幸にするのは、「でも、だって、どうせ」などという「言いわけ」です。他人のせいにしないことです。運命を決めるのは環境ではなく、その人の選択であり行動なのです。常識に捉われない柔軟な思考を育てていけば、必ず自分の望む未来が実現します。

授業する佐々木客員教授
授業する佐々木客員教授

――受験生や若い世代にメッセージをお願いします

中山 
21世紀アジア学部は世界にひとつしかない学部で、広い世界で活躍できる人材の育成を目的にしています。学びの根底にあるのは「アウト・オブ・キャンパス」という考え方です。教室で学んだ後は、実際に現地に行って、本物に触れ、自ら考え、様々な文化・宗教・歴史・価値観をもつ世界を体感します。こうした経験を通じて、世界で活躍するための力を養います。学びの場は広くアジア全域・世界各地です。最初の一歩は少し怖いかもしれませんし、勇気が必要かもしれません。長期留学の前に、まずは1ヶ月ほどの研修で現地の様子を見てみるのも良いでしょう。ワーキングホリデーの制度を使って海外で働きながら語学力を身につける学生もいます。言語は中国語・アラビア語・ロシア語・インドネシア語・日本語・ベトナム語・韓国語・タイ語・英語の9言語を用意しています。さらに日本の伝統文化を身につけてもらうために華道や茶道、日本舞踊などの科目も開講しています。専門コースは「スポーツ・文化」、「日本・アジア地域」、「ビジネス・デザイン」の3つがあり、また日本語教員や社会・英語の教職免許なども取得することもできます。みなさんの付加価値を高め、将来の選択肢を大きく広げましょう。目標を見つけ、将来の扉を開く大学生活を過ごしてください。

並んで立つ佐々木客員教授(左)と中山学部長

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21世紀アジア学部ホームページ


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