Kokushikan Magazines Feature

指導者の叫び~バスケットボール部(監督)~

クラブ活動に熱い思いで向き合う指導者たち。その指導者の「叫ばずにはいられない」本音や裏側をご紹介します。

体育学部体育学科 松島 良豪

ープロフィール

松島 良豪(まつしま よしたけ)

沖縄県出身。家族の影響で幼いころからバスケットボールに親しみ、学生時代はバスケ一筋で過ごす。競技人口日本一を誇る“バスケ王国”沖縄で切磋琢磨し、大学進学を機に上京。国士舘大学ではバスケットボール部のキャプテンを務め、チームの一部昇格に大きく貢献した。卒業後はプロ選手として活躍。試合前には独自のパフォーマンスで会場を盛り上げ「劇団松島」の愛称でファンに親しまれ、多くの支持を集めた。Bリーグでは1試合最多アシスト記録を樹立するなど、実力でも存在感を示した。2020年に現役を引退後、大学院で研究に励み、現在は指導者として後進の育成に力を注いでいる。

バスケットボールとの出会い

ー出会ったきっかけを教えてください

バスケ一家で、父、母、姉、みんなバスケと関わっていました。 父がミニバスの指導者、母は元実業団選手で、姉も先にバスケを始めていました。 ミニバスを教える父の小学校には保育所があり、常に一緒に体育館にいるような感じで、私自身気づいたらバスケをやっていました。

ー選手人生はどのくらいですか

選手人生でいうと20年くらいですかね。引退は早かったです。小中高まで沖縄で活動しており、小学校は諸見小学校に通い、そこはミニバスで全国優勝する学校でした。中学はコザ中学校へ進学しました。姉が進学するタイミングで父もコザ中学校で指導を始めたので、私も同じ中学に入学しました。コザ中学は、プロ選手も多く輩出している学校でしたね。高校は、那覇にある小禄高校でプレーしていました。

努力で切り開いた未来ー国士舘で学び、プロで戦う決断

ー国士舘大学に入学後はどうでしたか?

バスケ部に入部後、2年生の時にリーグ戦の入替戦で負けてしまい、3年生でも入替戦で悔しい結果となりましたが、4年時にはキャプテンをやらせてもらいチームを牽引できるよう努めました。私は、かなり言うタイプのキャプテンだったので、言うからには自分も行動で示したいと思い、練習には最低でも90分前に行って自主練を行うなど率先して取り組みました。さらに全体練習後もBチームの練習に参加したり、その後も個人練習を続け、長い時は深夜0時近くまで自主練を重ねていました。

ー当時のチームメイトは、その姿を見て自主練に合流したりするなど、変化はありましたか?

試合に出ていた仲間たちも、 自主練に残ってくることが多くなりましたね。夜遅くまでの練習を終えた後に、みんなでシャワーを浴びるのがすごい楽しかったです。当時、ともに切磋琢磨していた仲間たちの中には、 今でもプロとして活躍している選手が多くいます。 例えば原修太さんとか。彼らは本当に努力家でした。先日もOB戦がありましたが、 まだ10人くらいの選手がプロで頑張っていたので、学生時代に積み重ねた練習の経験が大きな糧になっているのかなと感じます。 

ーそこから卒業してプロに。決断した理由は何ですか?

当時、国士舘大学は関東リーグ二部でしたが、新人戦などで関東3位という好成績を残すことができました。その中で、プロを目指す選手と試合した時すごく楽しく、「自分もプロを目指し、この人たちと一緒にバスケをしたい」と思いました。また、今まで教わってきた父親や高校時代の恩師に自分のバスケを証明するためには、プロになるしかないと感じました。
教育実習で沖縄に戻った際、恩師に「お前には上に行ってほしい」という言葉をもらいました。私自身も当時そんなに上手くはなかったので、周囲からは無理だよと言われる中、同級生もプロを目指していたことが刺激となり、 同級生が行くなら自分も頑張ろうと決意しました。

プロを経験して指導者にー学生スポーツだからこそできる成長がある

ーまずプロと大学スポーツの違いは何だと思いますか

結論だけ先に言うと、お金が発生するかしないか。プロは評価が対価となり、ファンもついてきます。一方で部活は基本的に報酬は発生しません。その中でどれだけ努力を続けられるかが重要です。だからこそ、プロ以上にアマチュアの指導の方が難しいです。毎回彼らには、何のためにバスケをしているのか、なんで僕たちが全員ここで同じチームになったのかということを話します。
彼らが今、国士舘で共にバスケをしているのは運命だと思うんです。大学4年間という限られた時間の中で、どれだけバスケと向き合えるか。誘惑も多い中で自分をどうコントロールできるかが、成長の鍵だと考えています。

ーでは、学生スポーツの価値はどのようなものですか

僕が今までバスケを続けてこられたのは、指導者、友達、家族の支えがあったからだと思います。 バスケ人生の最後の試合に思い浮かぶのはその人たちの顔です。アマチュア選手として僕たちが恩返しできる唯一の方法は、一生懸命頑張る姿を見せること。「このチームを応援して良かった」と思ってもらえるような、そんな姿を届けることが価値になると思っています。

選手のを育てる指導を

ー「スキル」「メンタル」「フィジカル」何に重きを置いていますか

メンタルです。私は、学生たちにバスケを通じて人間形成をしてほしい。 正直、フィジカルが強かろうか、バスケットが上手かろうか、人としての在り方が伴っていなければ試合でも使わないです。諦めた瞬間、本当に叱ります。僕も実は、やる気を失った時期があったのでサボる理由も分かるんです。
バスケは、結果を残さないと評価されないような厳しい世界。人生においても結果を出して評価されるって、本当に少ないと思います。だからこそ、どんなときも耐えて、努力を続ける力を身につけてほしいと思っています。例えば、バスケでディフェンスは目立たないプレーですが、相手の攻撃に我慢強く向き合い、チームを支えています。これは社会に出てからも同じ。地道な努力の先にしか、結果はついてきません。学生たちには、練習や苦しい経験を乗り越えた自信を胸に、どんな場面でも「大丈夫だ」と思えるようになってほしいですね。

ー指導で苦労することはどんなことですか

選手の精神的な揺れに、私自身も日々悩みながら向き合っています。スポーツは生き物ですから昨日は元気で、調子良かったのに、今日は顔も合わせてくれない、なんてこともあります。 選手に、毎日安定した高いパフォーマンスを出させることが本当に難しい。
最近の悩みで言えば、力があるのに本番で発揮できない学生が多い。特に人に見られているとき、自信を持てなかったり、緊張で実力を出せなかったり。だからこそ、選手のメンタルに寄り添い、信頼関係を築きながら背中を押すことが必要だと感じています。選手のパフォーマンスを引き出す力は指導者としての課題ですね。

ー指導者になって一番うれしかったことは

昨年卒業した選手たちが、僕が指導して1年目の選手たちでした。 一人Bチームからずっと見ていた選手がいて、彼はバスケの技術こそ突出していなかったものの、とにかく努力家で、声も出すし、常に全力で取り組んでくれる選手でした。最後の最後、勝敗が決まるような大きな場面ではありませんでしたが、私はその選手を出場させたところ、試合終了のカウントダウンで彼が3ポイントシュート打ち、決まったんです。 その時は本当に泣きそうでした。「この瞬間のためにコーチやってきたかもな」と思えた、最高のワンプレーでした。

ーすごい!ブザービートですね!

そうです!全員がコートに流れ込んできて本当に嬉しかったです。 僕も幸せだなと思いました。

全員に向き合うーそれが私のチーム作り

国士舘大学バスケットボール部には、選手・スタッフ含めて約95名が在籍しています。でも、試合に出られるのはごく一部。だからこそ、出場機会のない選手たちにも、同じように接しています。A〜Cのグループに分け練習をしていますが、失敗のレベルが違っても、プレーの姿勢に対しては、きちんと指導します。「あの子はいいけどこの子はダメ」といった見られ方をされたくないんです。基準は常にフェアであること。それは私の信念でもあります。

ーその考えは誰かから影響を受けたのですか?

今のメンタルケアを含めて、自分が影響されたのは父親です。 中学校で指導者をしていた父は、初心者の生徒にも本気で向き合っていました。その姿勢を見て、人は「見てもらうこと」で初めて愛情を感じるんだと気づきました。だからこそ、私は全員に同じ熱量で接するようにしています。
時には、あえて放っておくこともあります。選手が困って、もう限界って時に声を掛けます。その時に「自分はどういうプレイヤーになりたいのか」を問いかけ、責任を持たせることもしていますね。

目指すは「一部昇格」そして「日本一」

ー国士舘チームの特徴や強みは何ですか

圧倒的なサイズ感とフィジカルだと思います。特に今年のチームはリバウンド。 これはオフェンスリバウンド、ディフェンスリバウンドがあるんですけど、どちらにも引き続き力を入れたいなと思っています。

ー逆に弱点はありますか

メンタルです。 彼らは、練習試合では一部のチームにも勝てるほどの力を持っています。でも、本番で発揮できない。私は、彼らのメンタルが変われば二部で優勝できると本気で思っています。それには、自分の役割と強みを理解し、試合中にどう発揮するかを考えることが大切です。「マインドセット(心の準備)」と「スキルセット(技術の準備)」、この2つが揃えば、今の選手たちには十分な優勝の可能性があります。そのためにも、まずは練習の時から本番のつもりで取り組む姿勢を身につけてほしいですね

ー今の目標を教えてください

目標は「二部リーグ優勝」「一部昇格」「インカレ出場」です。これは4年生を中心にチーム全体で共有している目標です。ただ、私自身の目標は「日本一」です。指導者として、選手たちに負ける姿を見せたくない。だからこそ、常に頂点を目指し続けています。そして最終的には、彼らがバスケだけでなく”人から必要とされる存在”になってほしいと願っています。プレーの技術だけでなく、人としての在り方も大切に育てていきたいです。

受験生・在学生へのメッセージ

ー国士舘でバスケをしたいと思っている高校生へ

日本で一番成長できる場所をあなたと一緒に作っていきたいと思っています。バスケを通じて人間力を高め、その先にはプロの舞台という華やかな世界だけでなく、教育機関や一般企業で活躍する道もあります。私自身、教育機関と一般企業の両方を経験させていただいているので、入学後には、卒業後のキャリアプランとして「こういう未来がある」ということを伝えていきたいです。国士舘大学では、社会に出る準備をしながら、日本一を目指せる環境があると感じてもらえるチーム作りを目指しています。

ー最後に在学生にメッセージをお願いします

自分がやっていることを信じてほしいです。私の好きな言葉は「継続は力なり」と「見ている人は見ている」です。日々の努力は、誰かがちゃんと見てくれています。頑張っている人には、いつか必ず手を差し伸べてくれる人が現れますし、先生たちは君たちのことを思っている以上に見ています。
自分を信じて、継続する。その先に結果がきっと待っている。これが私からのメッセージです。

インタビュー日に自主練をしていた部員たちと

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