Kokushikan Magazines Feature

「総合知の創出」目指す

田原淳子学長インタビュー

4月1日付で学長に就任した田原淳子体育学部教授。オリンピックの理念や歴史に関する研究と普及・教育活動に長年従事しています。田原学長の目指す「次世代の国士舘」について、インタビューしました。

創立108年で初の女性学長として指揮することに注目が集まっています

男性的なイメージが強い本学ですが、多くの女子学生が学生生活を謳歌し卒業後も活躍しています。私が学長に就任することで「ガラスの天井がない国士舘」が女子学生や女性教職員にとって、さらにより開かれた環境になることを期待しています。
国士舘生の伝統的な気質として、男女を問わず素直で真面目な学生が多いと肌で感じています。指導に対し真摯に取り組み、必要な場面では高い集中力を発揮します。仲間を思いやる気持ちも強く、優れた人間力を備えています。社会に求められる人材であることは就職実績にも表れています。

「国士舘の魅力を最大化する」という目標のもと、さまざまな改革にどう取り組みますか

現代に通じる国士舘のよき伝統や価値をさらに発掘し展開していきます。
具体的には、総合大学の強みを生かした分野横断的な学術交流の促進です。学際的な研究は社会課題解決の糸口にもつながります。学部を越えた科目履修、学生交流など、建学以来の精神でもある「活学」に由来する総合知の創出を目指します。さらに、社会人の学び直しの場として大学院を活用できるよう大学院教育の充実にも力を入れます。
学生の安心・安全を充実させることも重要な課題です。女性アスリートの専門的なサポートや精神的な不安を抱える学生へのケアなど手厚い相談体制を整え、すべての学生が安心して学びに集中できる環境を構築します。

ドイツ留学の経験があり、オリンピックを研究したと伺っています

留学は私にとって大きな転機となりました。小学校教員を目指して大学に入学。陸上競技部の短距離ランナーでしたが、大会中に負傷し競技の道を断念しました。その結果、スポーツ以外の分野にも目を向けるようになり、かねてから興味のあったドイツ留学を決意しました。
奨学金を得てケルン体育大学へ留学していた時、ギリシャで開催された国際オリンピック・アカデミーのセッションに参加、世界各国の若者と交流する機会を得ました。そこで、スポーツを通じて国や文化を超えた絆が生まれることに感銘を受け、オリンピックの理念に興味を持ち、研究者の道へ進みました。
挫折も別の道を開く転機になるという一生の教訓になりました。

「人の話を聞くことが好きで、調整役として動ける点が私の長所」と終始笑顔でインタビューに答える田原淳子学長=3月14日、世田谷キャンパス

「地球市民」をキーワードに掲げていますが

オリンピックの理念であるオリンピズムは、単なる競技大会の枠を超え、平和や国際理解を促進するものです。私は、スポーツを通して人間がどう成長し、国境を越えてつながるのかに関心を持つようになりました。「地球市民」とは国や文化の違いを超え、人類全体の発展を考える意識を持つ人のことだと思います。
創立者・柴田德次郎先生も国際化に早くから目覚めていた方でした。かつて本学でも指導を行い、高弟を送り込んでくださった柔道の生みの親、嘉納治五郎先生の「自他共栄」の思いと通ずるところを感じます。
学生の皆さんには、それらの学びをベースに、地域・社会連携や国際交流を通じて多様な人々と出会い、人生を変えるようなインパクトのある経験をここ国士舘で育んでほしいと思います。

    

【略歴】

神奈川県生まれ。62歳。
中京大学大学院博士後期課程で博士(体育学)を取得。中京女子大学(現・至学館大学)を経て平成18年に本学へ入職。平成21年体育学部教授。令和6年大学院スポーツ・システム研究科長、学校法人国士舘常任理事。令和7年国士舘大学学長。専門はスポーツ史・スポーツ倫理。

    

【ひと口メモ】

中学時代に聴いたバッハがきっかけでオルガン演奏に興味を持ちました。ドイツ留学中にパイプオルガンに触れる機会があり、後に本格的に習い始めました。現在も教室に通い、日々の気分転換も兼ねて楽しんでいます。

2025年4月27日発行 国士舘大学新聞540号掲載


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