本学と世田谷区は、今年度から4年にわたり、非認知能力に関する共同研究を行います。研究代表の大久保圭介文学部講師は5月1日、区立教育総合センターで世田谷区教育委員会が主催する令和7年度第1回研究主任研修にゲスト講演者として登壇し、幼・小・中の教員に向けて幼児期からの連続した非認知能力の育成について講演しました。

共同研究のキックオフとなる同研修の会場には、世田谷区の公立幼稚園・小学校・中学校から研究主任教員約100人が集まり、現場の教員がより実践的な知識や技術を習得し、授業の質を向上させることを目的とすべく講演に耳を傾けました。
講演の前には、本学副学長で地域連携・社会貢献推進センター長の村上純一文学部教授より「世田谷区と国士舘大学が昨年、包括連携協定を結びさまざまな分野で連携して活動を進めている。 今日は発達心理学を専門にする大久保先生と一緒に学びを深めていきたい」と、あいさつがありました。
「幼児期から連続した非認知能力の育成について」
講演では、非認知能力(社会情動的スキル)の重要性、学力と非認知能力の関連、共同研究の枠組み、教育現場での評価方法などについて説明がありました。その中で、大久保講師は非認知能力という言葉が曖昧であり、具体的な内容を理解する必要性を強調しました。そして、幼児教育への投資が将来的な成功に繋がる可能性があるという研究例を挙げながら、一方で学力だけでなく社会情動的なスキルも重要であると述べました。
また、教育現場の課題として非認知能力の捉え方、学力偏重の教育、教育研究におけるサンプルの偏りなどを挙げ、社会情動的スキルを育む教育プログラムの導入や学力と非認知能力をバランス良く評価するシステムの構築など、社会性と情動の学習(SEL)プログラムの導入や、感情を理解するための教材の活用が提案されました。そして、非認知能力全体を捉えるのではなく、個別の側面に注目して伸ばしていくことが重要であり、それぞれの学校や先生の取り組みが大切であると強調しました。
続いて、共同研究の枠組みについて説明があり、自己肯定感、コミュニケーション能力、主体性、自己管理能力、感情制御能力に焦点を当てた研究が提案されました。研究の進め方や効果検証の方法についても説明があり、アンケート調査やパフォーマンステストの活用も例に挙げられました。
講演後半には4~5人でグループワークを行い、与えられた課題に対しそれぞれのグループで闊達な議論が交わされ、最後に課題の成果を数グループが発表しました。
大久保講師は「今回グループワークでも作っていただいたルーブリック(※)や調査に関しても、先生方のご協力を得ながら進めていきたい」「本日の内容が少しでも先生方の役に立てばうれしい」と話し、引き続き参加者への協力を呼びかけ講演は終了しました。
(※)ルーブリック・・・学習目標の達成度合いを判断するために、評価の観点と評価の尺度を一覧表に可視化した評価方法の一つ
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研修会の最後には、世田谷区教育総合センター長の宇都宮聡氏が自己肯定感、コミュニケーション能力、感情抑制能力などの重要性を強調し、探究的な学びやキャリア教育、ICT教育と非認知能力とを組み合わせた研究の必要性を述べ、「国士舘大学との連携により、エビデンスに基づいた教育を推進していきたい」と、あいさつし閉会しました。
今後、世田谷区と連携し大久保講師を中心とした研究が進められる予定です。

