2025.09.25

世田谷区シニアスクールで本学教員が講演しています

世田谷区シニアスクールは 2005年に発足し、60歳以上を対象とした世田谷区生涯大学(2年間)の修了後、更に2年間の自主研究会に参加した方、および会員から紹介された方で構成されています。
会員数は 約350名、大学などの施設を利用して年間約30回の講演会を実施しています。
国士舘大学では2006年度以降、地域連携の一環として講師派遣と施設貸出を行っています。

2025年度、本学会場では全7回の講演を予定しています。

関口宗男教授「宇宙は何からできているのか?」

9月16日の講演は、理工学部 関口宗男教授による「宇宙は何からできているのか」がテーマでした。
講演でははじめに、物理学の基本的な考え方を日常的な自然現象を通して解説がありました。その際、空気抵抗と速度との関係については、2つの物体の重さ(重力)が異なっていても、空気抵抗が無視できるような形にすると物体は同時に床面に落ちる(=速度が同じ)実証実験や、ほとんど大気のない月面上での実験映像が用いられ、会場からは大きな歓声が上がりました。その後、物質を構成する最小要素である素粒子が宇宙誕生とどのように関係しているか、私たちが宇宙をどの程度理解しているかを物理学の視点から説明がありました。
「光のドップラー効果」がGPSや航空管制、超音波検査に、また、「反物質」がガン検査に使われている等、これまでの研究が現代社会にどのように活用されているかを、実例を挙げながら分かりやすく紹介された講演でした。

大淵知直教授「明治期のグリム童話」

6月24日の講演は、法学部 ⼤淵知直教授が「明治期のグリム童話」をテーマに講演を行いました。
講演では、はじめに『八ツ山羊』(原題:おおかみと七ひきの子山羊)は英語経由の翻訳が主流だった明治時代において、ドイツ語から直接日本語に翻訳された初めてのグリム・メルヘンの可能性が高いが、当時の人々が受け容れやすいよう、内容や文体の「日本化」が顕著であり、「日本の昔話」として再生されているのが特徴である、との説明がありました。
そしてこの『八ツ山羊』は「異文化を紹介する日本の昔話」として、自国化されることなく後にポルトガルで出版され、僅か50年ほどでドイツ→日本→ポルトガルへとわたった文化の移動と受容の速さは目覚ましいものである、との解説がありました。
当時の挿絵や仕掛け絵本、講談のような七五調のリズムなど、『八ツ山羊』が持つユーモラスな部分も多く紹介され、終始笑いと活気に満ちた講演となりました。

織田健志教授「革命・近代・文明―明治維新再考―」

5月13日の講演は、政経学部 織田健志教授が「革命・近代・文明―明治維新再考―」をテーマに講演を行いました。
冒頭に、「明治『維新』とは?」「明治時代=近代/江戸時代=近世?」という2つの問いが提起され、それらを検証する形で講演は進行しました。
徳川政権の瓦解、その後の版籍奉還から廃藩置県を経て、封建制から中央集権国家へ三年で変貌する当時の日本は、実際に英訳されるthe Meiji “Restoration(復古、復旧)”よりも“Revolution(革命)”が相応しい一方で、下級武士の立身出世への願望や町人の経済競争の概念は、江戸時代から一貫してあったものである、との解説がありました。
そして、「明治維新とは、江戸時代からの『連続性』と『断絶』、その両面を持つ明治『革命』である」と締めくくられ、質疑応答も活発に交わされた講演は大変盛況の中、終了しました。