2025.01.30

【世田谷区連携事業】留学生による日本語支援活動報告会が行われました


世田谷区と本学との連携事業として今年度実施した日本語支援に関わる活動報告会が1月20日に世田谷区立教育総合センターで行われ、世田谷区と本学の関係者約30人が出席しました。

世田谷区と本学は令和5年度から、区内公立小学校に在籍する外国人児童の学級に本学外国人留学生を派遣し、授業内支援をする取り組みを継続して行っています。今年度は昨年7月から12月にかけて、2校に合わせて4人の中国人留学生が支援に入りました。

報告会では、試行錯誤しながら行った支援の報告と活動を通しての感想を、4人がそれぞれ発表しました。

◆巫 傑聡(ふ・けつそう)さん 院修士1年

来日して間もなく、日常会話の聞き取りができる程度で不安そうな表情を見せていました。4年生ともなると教科学習が難しく大変です。母国語で根気よく話し続けると少しずつ返してくれるようになりました。私の存在が、彼に少しでも変化を与えられたのであればうれしいです。
日本の小学校はクラス担任制で生徒指導にも力をいれています。まるで先生が親、クラスが家庭のように感じました。この経験を通して「勇気を出すこと」を彼に伝えたいし、自分へのメッセージにもしたいです。

◆昂 格魯瑪(あん ぎるま)さん 院修士1年
クラスメートの身振りなどで状況を把握しようとする様子が見られましたが、休み時間には兄のもとへ行くこともあり、自立することが重要だと考えました。休み時間にクラスメートに声をかけて遊ぶように促す、助けてもらったらお礼を言うように伝えるなどして、無理せず、励ましながら寄り添ってサポートすることを心がけました。
1つの言葉に複数の意味があるなど日本語は難しく、学ぶ時の不安はよくわかります。算数で手を挙げて発言できたときの満足そうな表情を見て、言語の習得はその後の学習意欲に大きな影響を与えると確信しました。

◆呂 暁薇(りょ・ぎょうび)さん 院修士1年
支援に入るときは、自分にできるのか、児童が私を受け入れてくれるか不安でした。しかし、私を受け入れ、支援に感謝を示してくれました。時には、「自分でできるからついてこなくても大丈夫」という力強い言葉を聞くこともできるようになりました。得意な図工では中国の流行を盛り込んだ作品を完成させ、クラスメートにも見せるなど関係性が深まっているのを感じました。
時には適切なサポートができず、担任の先生に謝ったこともあります。支援をしている側ですが、私自身も成長する機会になりました。

◆張 琢月(ちょう・たくげつ)さん 院博士2年
国語の物語文では、まずは中国語に訳して聞かせ、その後担任の先生の発言を中国語で伝えました。児童の感想を聞き、日本語に訳して感想を書くように促す、ということをしていました。彼の提出された感想を見て、クラスメートから「ナイス」と反応が。当初はクラスメートの輪の中に入れず中国に帰りたいと話していましたが、「日本の学校が大好き」と言うようにまでなりました。
異国で母国語がわかる留学生の存在は、彼らにとって非常に重要だと感じます。現在は短期間の支援ですが、より長期的な支援が必要だと感じます。

発表の後、帰国・外国人教育相談室の坂本尚子室長と宮本正彦相談員が講評しました。坂本室長は「現在の通級指導や初期指導は小・中学生合わせて約90人ほどが利用しており、支援が十分ではない現実がある。外国人留学生が既存の制度で手の届きにくい部分をつなぎ、不安を抱える児童をサポートしてくれていることに感謝する。今後も中学生への支援や多言語での支援など課題は多いが、日本への愛着、友人の存在、勉強の意欲が外国人児童の心を持ち上げてくれることを期待したい」と話しました。

宮本相談員は、留学生らの、変化を見逃さず柔軟に対応する姿に感謝を示したうえで、「留学生は学校にとっても、当該児童にとっても必要な存在。母語の力を借りながら、教科や友人関係など、すべての学校での活動の意欲につながるように、支援を通して児童の成長につなげていきたい」と話しました。

感想を述べる世田谷区教育委員会の知久孝之教育長
会場の様子
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