世田谷区と本学は今年6月から9月にかけて、区内公立小学校に在籍する外国人児童の学級に本学外国人留学生を派遣し、授業内支援を実施しました。
同区の帰国・外国人教育相談室では訪問指導などを通して、日本語の習得が不十分な児童生徒への日本語指導を行っています。現在は個別指導の形を取っていますが、学校現場からは学級に入った形での支援ニーズが高く、今回初の試みとして、授業現場での支援が行われました。
支援に入ったのは、本学大学院人文科学研究科博士課程1年の張琢月さん。中国から昨年来日した小学校3年生の女子児童に対し、週1回2つの授業で支援に入りました。女子児童は、来日当初は初期指導として集中した日本語指導を受け、その後は週末の補習教室に通い教科の補習をしています。張さんが支援に入った9月26日の授業では、わからないことを張さんに聞きながら授業に参加していました。児童は「国語や算数が難しいので、解説を聞いてわかることが増えてうれしい」と話しました。
張さんは「難しい日本語の場合は、かみ砕いてわかりやすい日本語で説明し直し、中国語で説明するのは最終手段にした。また、他の児童と壁ができないように、自然な形で支援に入ることを意識した」と話し、「今回は短期間での試みだったが、長期的に行うことに意味があると感じた」と全8回の支援を振り返りました。
帰国・外国人教育相談室の教育相談員である宮本正彦さんは、「子ども同士で日常会話ができていても、読み書きの習得には時間を要するため、教科学習についていけないケースも多い」と話します。当該児童の場合も、自身では回答できない学生生活アンケートの内容を張さんが伝えることで、来日当初に抱えていた学校での苦い経験が引き出されたといいます。宮本さんは「思いや悩みを出せない現状があり、同じ母国語をもつ大学生が入ることで心理的な軽減も図られた。言語の力の大きさを感じた。教科学習だけではなく学校生活支援という意味でも、児童と学校側双方に価値のあることだとわかった」と今回の試みについて評価しました。
今回の試みは、日本語教育支援の充実を図りたい世田谷区と、本学資源を生かした地域貢献を模索する本学が、具体的な取り組みを検討する中で生まれました。本学地域連携・社会貢献推進センターの村上純一センター長は「こうした活動は地域のお役に立てるだけでなく、本学の学生・大学院生の学びを深める意義もあるので、今後いっそう熱心に取り組んでいきたい」と話しました。
本成果を踏まえて、今後も継続した取り組みを検討していく予定です。



