経営学科で、なぜ「アイドル???」
「アイドルが卒業するタイミングや理由は、所属するアイドルグループによって異なる傾向を示すのではないだろうか?」
「そうであるならば何が影響を及ぼしているのだろうか?」
「なぜ経営学科の説明でアイドル?」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。実はこの問題、本学科のとあるゼミで行われたグループ研究のテーマでした。アイドル好きの方なら「当たり前だ」「〇〇が原因だ」と思われるかもしれません。またネット検索をすれば、それらしい記事もでてきます。しかし、確たる証拠はありません。そこで、その研究グループは根拠を示しながらそれを明らかにしたいと考えました。
まずは複数の女性アイドルグループの卒業メンバー約50名を対象に、卒業時の年齢や在籍期間、卒業の動機を統計的に比較しました。動機については、卒業メンバーが卒業時に発したコメントをテキストマイニングという手法を用いて分析しました。すると、アイドルグループごとに異なる傾向を示すことが明らかになりました。そこで次に、その違いは何に起因しているのかについて分析しました。それぞれのアイドルグループの人気の程度や、選抜メンバーの固定性、運営の方針、売り出し方などを比較可能な形でデータ化し、統計的に検証したところ、それぞれのアイドルグループを取り巻く外部環境要因よりも、グループ内部の組織的要因の違いに原因がありそうだということが明らかになりました。
経営学科で身につけるもの
さてこれらの研究はどのような知識に基づいて行われたのでしょうか。アイドルが卒業するとは、一般の会社でいえば、社員が退職したり転職したりすることです。その理由や行動パターンについては、本学科の科目「組織行動」や「雇用システム」で学習します。また、アイドルグループの方向性や売り出し方などを理解するためには、「経営戦略」や「マーケティング」の知識が必要になります。さらに運営とメンバーの関係やメンバー間の関係性については、「企業システム」や「組織理論」が示唆を与えてくれるでしょう。
また、様々なデータを用いて分析を行うためには、「マーケティングデータ解析」や「マーケティングサイエンス」などで統計的な手法を学ぶ必要があります。そして、これらの知識を使って、問題を設定し、根拠を示しながら、説得的に答えを導いていくためには、論理的な「ものの考え方」を身に付けなければなりません。これは1年秋期の「ゼミナール入門」から学び始めるものです。
こうしてみると、一見、「経営学」とは無関係そうなアイドルの卒業という現象も、経営学の知識を使えば、根拠を示しながら理解することが可能になります。「経営学」というと、「お金儲けの学問」とか「身につければ会社経営がうまくいく」というように考えている方も多いと思いますが、経営に唯一無二の方法はありません。重要なのは、企業や経営における本質的な問題を見極め、その原因を理解し解決していくための知識や能力です。それらがあって、はじめて有効な手立てを考えることができるのです。また一見経営とは無関係そうな問題でも、経営学の知識を使いながら理解することも可能になるのです。
これらの知識や能力は皆さんが社会人になってからのビジネス、ひいては人生に役立つものであると考えています。是非、経営学部での学びに期待して入学してください。
みなさんとキャンパスでお会いできることを楽しみにしています。
プロフィール
小林 崇秀 こばやし・たかひで <専攻>
経営学
- 横浜国立大学経営学部卒業
- 神戸大学大学院 経営学研究科 博士課程前期課程修了
同後期課程満期退学
- 姫路獨協大学 経済情報学部 専任講師
- 姫路獨協大学 経済情報学部 准教授
- 国士舘大学 経営学部教授
- 日本経営学会
- 組織学会