2026.10.24

体育学部の中川洸志講師らが総務省消防庁による早期アドレナリン投与を促す全国通知の効果を検証

スポーツ医科学科 講師 中川 洸志
防災・救急救助総合研究所 講師 匂坂 量
スポーツ医科学科 教授 田中 秀治

―全国約18万例を解析、通知による投与までの時間の有意な短縮は認められず―

体育学部スポーツ医科学科の中川洸志講師らの研究グループは、院外心停止の全国登録データを用い、総務省消防庁が発出した早期アドレナリン投与を促す通知と、実際の投与までの時間との関連を検証しました。研究成果は、2026年10月22日、学術誌「International Journal of Paramedicine」に掲載されました。

全国通知は救急現場の処置時間を変えたか

総務省消防庁は2017年3月30日、院外心停止に対する早期アドレナリン投与を促す通知を発出しました。しかし、通知によって救急現場での投与までの時間が短縮したかは、十分に検証されていませんでした。

研究グループは、全国ウツタイン登録から、2010年1月1日~2020年4月26日に発生し、病院到着前にアドレナリンを投与された178,425例を解析しました。評価したのは、救急隊が傷病者に接触してから初回アドレナリン投与までの時間です。

解析には、中断時系列解析(Interrupted Time-Series Analysis:ITS)を用いました。この方法は、通知前から続いていた経時的傾向の推移を考慮しながら、通知直後の変化と、その後の変化の傾きを評価するものです。初期心電図波形が電気ショックの適応となる群18,412例と、適応とならない群160,013例に分けて検証しました。

その結果、両群とも、通知直後の変化と、その後の傾きの変化は統計学的に有意ではありませんでした。全国平均では、通知に伴うアドレナリン投与までの時間の有意な短縮は認められませんでした。

「できるだけ早く」を、測定できる時間目標へ

今回の研究は、全国的な通知と救急現場の処置時間との関連を、実際のデータから検証したものです。通知や推奨事項を周知するだけでなく、それが現場の行動の変化につながっているかを継続的に評価する重要性を示しています。

今後は、「できるだけ早く」という方針に加え、「傷病者接触から初回投与まで何分以内」といった明確な時間目標を設定し、達成状況を現場へ還元する仕組みを検討することが課題です。具体的な目標時間やその導入効果については、他の蘇生処置との優先順位や地域の救急体制を踏まえ、さらに検証する必要があります。

論文情報

■論文名
Impact of a Nationwide Notification Promoting Early Adrenaline Administration on Time to First Adrenaline in Out-of-Hospital Cardiac Arrest in Japan: An Interrupted Time-Series Analysis

■著者
Koshi Nakagawa、Ryu Kimura、 Ryo Sagisaka、 Daigo Morioka,、Hideharu Tanaka

■掲載誌
International Journal of Paramedicine(2026年、第16号、47–61頁)

■公開日
2026年10月22日

■DOI:
https://doi.org/10.56068/CJQM4606