理工学部の関口宗男教授は、広島大学(稲垣知宏教授、村上祐子准教授)と栄諧情報システム株式会社が共同で開発した生成AI搭載のグループ学習支援ツール「HiGPT」を活用したグループディスカッション型授業の展開について研究を進めています。
HiGPTは、広島大学と栄諧情報システム株式会社の共同研究として開発されたもので、生成AIによる自然言語翻訳技術を活用し、他国の大学生と遠隔でグループディスカッションを実施するなど、国際交流における補助ツールとして研究が進められてきました。
その有用性に着目した関口教授は、大学のオンライン教育や大教室授業での活用を提案しました。本学にあわせた改修を実施したうえで7月17日に概念検証のための授業を行いました。検証授業には法学部の辰野文理ゼミの学生12人が協力し、レジュメで示されたデータをもとに、HiGPTを使用したグループディスカッションを想定して議論を行いました。
学生はランダムに3グループに振り分けられ、HiGPTのチャット上で議論を開始します。音声とテキストで入力が可能で、最初は操作に慣れるのに時間を要しましたが、次第に議論を始めるグループが出てきました。議論の合間には生成AIが議論をまとめたり質問に回答したりと、ファシリテーターの役割を担う様子が見られました。
授業後、学生からは「会話の途中でAIが意見を出してくれたり、皆の意見をまとめてくれるので話の流れをつかみやすく、ミーティングやグループディスカッションで使用するには便利だと感じた」「議論の停滞を減らすことができるのは良いと思う」「皆の議論を整理したり発表用の原稿を作る役割を担ってもらえば、意見の量も増えそう」「発言がない人に話を振る、話の路線がずれたときに戻すなどの役割が期待できる」など、期待する声が聞かれました。
関口教授によると、HiGPTは情報の機密性が担保されていることが最大のメリットだといいます。また、世界の不特定多数の人との議論を想定した開発がされているため、自動翻訳機能が搭載されていることも特徴のひとつです。生成AIが会話に介入し、要約したり質問に答えることで、議論を円滑に進めるサポートをします。大学の授業でグループディスカッションをする際、議論の質や方向性が司会者の技量に委ねられるケースがあります。それらを生成AIが代替すること、そしてディスカッションのログを教員側が確認できることで、学生の適切な評価に結びつくことを期待しているといいます。
検証授業を終えて関口教授は、生成AIを活用する学生側のスキルも求められているとした上で、「生成AIはファシリテーター役などさまざまな役割を担える可能性がある。一方で、きまぐれな部分もあるので、いかにコントロールするかが改良のポイントとなる。今後も実用化の可能性について検証していきたい」と話しました。
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検証実験(10月1日)
10月1日には第二弾として理工学部の研究室に協力を仰ぎ、より専門用語が飛び交う授業において同様の検証実験を実施しました。
授業では「福井市周辺の地質調査をする際に、どんな公開情報があり、どのように調べられるかを考え行動計画を作成する」という課題を提示し、HiGPT内で議論を開始しました。学生らは、ヒントとなるAIの発言をもとに、調べるべきキーワードを洗い出し、授業後半には研究手法や調査するべきオープンソース情報を把握することができました。
担当教員の乾睦子教授は「普段一コマかけて行う議論をHi GPTを使って行ってみた。AIの発言が学生の議論を停滞させる部分もあったので、学生側がAIを使うタイミングを柔軟に取捨選択できると良いと感じた。一方で、普段は、授業のねらいや意図する結論に沿うように、早めに誘導してしまうこともあるので、AIを活用しながら学生同士で議論を深め考えられるのは良い側面もある」と述べました。
関口教授は「これまでの検証実験では生成AIがファシリテーションする役割を担ってきた。その癖が抜けず自律的に議論を進めてしまうシーンが随所にみられた。AIをうまくコントロールできるかが今後の検討課題になりそうだ」と話します。一方で「使い方に慣れていき、最初にAIに投げかける質問方法が的確であれば、目的や結論にさらに早くたどりつくことができる。学生も教員も、生成AIの正しい使い方を習得することが大切」と述べました。
今後も改良を重ね、授業現場での活用を目指して研究を進めていきます。
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