2026.06.10

ー日本で初めて父子関係のアタッチメントタイプを分類し、関連要因を検証ー 育児の楽しさと敏感さのズレがアタッチメントの乱れにつながることが判明

教育学科 講師 大久保 圭介

国士舘大学文学部の大久保圭介講師(研究当時:東京大学大学院教育学研究科附属発達保育実践政策学センター特任助教)、広島大学大学院人間社会科学研究科の梅村比丘教授、静岡健康静岡社会健康医学大学院大学の新屋裕太講師(研究当時:東京大学大学院教育学研究科附属発達保育実践政策学センター特任助教)らの研究グループは、日本で初めて父子関係におけるアタッチメントタイプを分類し、その個人差に対して、子どもへの敏感な関わり方(敏感性)と育児に感じる喜びのバランスが関連していること、また育児時間は関連がなかったことを示しました。これまで、日本を含むアジア圏の母子におけるアタッチメントタイプの分類に関しては、回避型と比べてアンビバレント型が多いことが報告されてきましたが、同じ傾向が父子関係においても示されたことで、その傾向が関係性を問わない文化的な特徴であることが傍証されました。このことは、親子関係や子育ての文化差を理解する上で大きな意義があります。
なお、本研究は、国際学術誌「Early Child Development and Care」(オンライン版:6月9日)に掲載されました。

図1:本研究の概念図とアタッチメントタイプの割合
図1:本研究の概念図とアタッチメントタイプの割合

研究の背景

アタッチメントは、不安や恐怖を感じた際に、この人なら自分を守ってくれるだろうという大人に対して、子どもが近接する行動、または、そうした行動が起こりうるに十分信頼できる関係性のことを指します。日本語では、愛着と言われるものですが、2023年12月にこども家庭庁が、こども施策の基本方針として定めた「こども大綱」の中でも、乳幼児期から安定したアタッチメント(愛着)を形成することの重要性が強く押し出されています。
これまで、乳幼児期のアタッチメントに関する研究のほとんどは、母子関係を対象に行われてきました。しかし、父親の育児参加への社会的関心が高まってきたことに伴って、父子関係におけるアタッチメントについて、その個人差を分類し、それらと関連する要因を明らかにすることのニーズが高まってきました。そこで、本研究グループは、日本の父子を対象に、アタッチメントタイプを分類し、その関連要因を検証するための実験調査を行いました。

研究の内容

本研究は、ストレンジ・シチュエーション法を用いて日本人の父子関係におけるアタッチメントの分類について検証した初めての研究です。54組の父子を対象に実験を行い、アタッチメントタイプを分類し、育児の量、育児の質(敏感性)、育児に感じる喜びなどの要因との関連を検討しました。

まず、アタッチメントタイプを分類したところ、安定型が最も多く、回避型よりもアンビバレント型が多いという結果になりました。母子を対象にしたこれまでの日本や東アジアの研究で得られている分類の偏りと一致しており、アンビバレント型が多いという文化的な特徴が関係性に依らないものである可能性が示唆されました。
分類に関しては、これまでの父子アタッチメント研究では報告されていなかったユニークなケースが見られたことも本研究の重要な結果と言えます。一つは、実験中に、その場にいない母親を呼んでしまうケース、もう一つは、父親との分離場面で強く泣いているにも関わらず、再会する場面で、近接行動なく泣き止むケースです。この二つのケースからは、アタッチメントの伝統的な評定手法であるSSPを、従来の方法で、父子サンプルに適用することの難しさを示しています。

図2:育児に感じる喜びおよび敏感性の差得点スコアをタイプごとに比較(無秩序・無方向型は安定型や回避型よりもそのスコアが有意に高いことが示された=喜びに敏感性が伴っていない)

続いて、安定型か不安定型(回避型・アンビバレント型・無秩序無方向型)かを予測するロジティック回帰分析を行いました。結果として、いずれの要因も、統計的に有意な関連を示しませんでした。ただし、それらの関連要因について4つのタイプ別に多重比較をしたところ、無秩序無方向型の子どもの父親は、喜び感情と敏感性の差得点が、安定型やアンビバレント型よりも有意に高いことが示されました。これらのことから、アタッチメントの重要な規定要因として従来指摘されてきた敏感性に加えて、どれだけ育児を楽しいと思っているかという態度要因とのバランスが重要であることが示唆されました。また、育児の量も関連がありませんでした。

研究結果のまとめ

これまで、日本を含むアジア圏の母子におけるアタッチメント回避型と比べてアンビバレント型が多いことが報告されてきましたが、同じ傾向が父子関係においても示されました。アタッチメントの個人差に対しては、子どもへの敏感な関わり方と育児に感じる喜びのバランスが関連していること、また育児時間の関連はないことが示されました。本研究の結果は、父子関係におけるより安定したアタッチメントを形成するためには、育児参加の量は関連がなく、それよりも子どもに温かく敏感に関与できることや育児に喜びを感じることの方が重要であることを示唆するものです。

研究結果の意義

日本では近年、父親の育児参加時間を増やすための政策が推進されています。しかし、本研究の結果は、育児参加の量を増やすだけでは不十分であり、それよりも、子どもに温かく敏感に関与できることや育児への態度の向上を支援する介入・政策の重要性を示唆するものとなりました。本結果は、親子関係や子育ての文化差を理解する上で大きな意義があります。

論文情報

雑誌名:Early Child Development and Care
題 名:Attachment Classifications and their Correlates in Japanese Father–Infant Dyads
著者名:Keisuke Okubo*, Tomotaka Umemura, Kiriko Emi, Hanae Sanada, Azusa Nishimura, Yuri Hirata, Yuta Shinya (*責任著者)
DOI: 10.1080/03004430.2026.2686139
論文の閲覧はホームページから

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