Kokushikan Magazines Feature

「落ちこぼれ」からの大逆転ー雑草魂で超えたトビタテ!留学JAPANへの挑戦

体育学部 体育学科 4年 面出晟生
トビタテ!留学JAPANの支援を受け、ハンガリースポーツ科学大学に約2か月留学した面出晟生さん。かつて「落ちこぼれ」と自嘲した面出さんの逆転劇の裏には、「練習・就活・教職・留学試験」を同時に走らせるという異例の挑戦がありました。いかなる逆境でも諦めない、彼の「不屈の雑草魂」に迫ります。

文部科学省と民間企業・団体が連携して行う、日本の若者の海外留学支援プロジェクト。高校生から大学生・専門学校生までを対象に、多様な目的の留学を支援し、奨学金や事前・事後研修を通じて「世界で挑戦する人材」を育成することを目的としています。

「落ちこぼれ」からトビタテへ

高校時代、水泳では全国大会に出場しつつも下位に沈み、大学入学後のインカレでも満足のいく結果は出ませんでした。さらに大学2年時には交通事故で全治半年の大ケガ。英語もTOEIC 375点。教員免許も諦めかけ、「水泳も勉強も中途半端で、プライドだけ高い“落ちこぼれ”だった」と当時を振り返ります。

転機は、大学のホームページで知ったトビタテ!留学JAPANでした。

「ここで人生を変えたい」と決意し、すぐにトビタテ!留学JAPANへの応募を決めました。そのとき面出さんが選んだのは、「一つに絞る」のではなく、あえて「全部やる」という道でした。その「全部」とは、朝5時からの水泳練習、日中の授業と教職課程、夜は練習や就職活動に加え、トビタテの書類・面接準備。睡眠時間を削って走り続けた日々は、「正直かなり過酷だった」と振り返ります。

それでも準備を重ねた結果、1204人中268人に選ばれ、国士舘大学史上2人目となるトビタテ生に。しかし、「水泳も就活も留学も全部やろうとして中途半端だ」と周囲から言われる中での挑戦は、ここからが本番でした。

エリートに囲まれた研修での「場違い感」

トビタテ!留学JAPANの研修には、難関大学の学生や起業経験者、多言語話者など、多彩な「エリート」たち。「自己紹介の時点で、『難関大』『起業』『海外複数カ国滞在』といった経歴が並ぶ中、自分は『水泳一筋・英語もできない』状態。正直、場違いだと感じました」。研修の場で彼を待っていたのは、華やかな雰囲気だけではありませんでした。

研修では「『なんで君がここにいるの?』『その英語力で大丈夫なの?』と直接言われたこともあります。英語でのディスカッションでは輪に入る自信もなくなり、本当に堪えました」と、孤独な闘いを振り返ります。

厳しい言葉は、身近な場所からも飛んできたりして、「どこにいても“中途半端だ”と指摘されているような感覚でした」と当時の葛藤を語ります。

あまりの「場違い感」に、トビタテ!留学JAPAN事務局に「自分は本当にここにいていいのか」相談したことも。その時返ってきた『それでも選ばれてここにいる。君にしかない強みをもう一度考えてみなさい』という言葉が、面出さんの“雑草魂”“行動力”“継続力”に再び火をつけました。

ハンガリーでも続いた「録音とノート」

ハンガリースポーツ科学大学でも、面出さんの「行動力」は健在でした。授業は90分間すべて英語で、当初はほとんど理解できなかったものの、毎回講義を録音し、寮に戻ってから深夜1~2時まで録音を聞き返しながらノートに書き起こすことを習慣化していたそうです。移動中も録音を聞き続け、休みの日には周辺の約10か国を旅しながら、飛行機の中でもノートを取り続けたといいます。

授業では学校体育について学んだ
書き起こしたノート

一方で、「量」をこなすのは勉強だけではありません。「嫌われてもいいから、とにかく大学で会う人には全員にHello!と声をかけていました。そうやって少しずつ友達を増やしていきました」と振り返り、持ち前のコミュニケーション力で現地のコミュニティに溶け込み、自らの手で強固な繋がりを築いていきました。

旅行先でもたくさんの人とコミュニケーションを取った

ハンガリーで学んだ「才能発掘重視」の体育

英語にも慣れ始めた頃、学校体育の授業で特に印象に残ったのは「才能発掘に特化した仕組み」でした。

  • 幼少期から複数のスポーツ要素を組み合わせた運動を行う
  • 学校の体育の授業に地域クラブのスカウトが来て、子どもをクラブにつなぐ
  • 月謝免除や送迎など、才能を伸ばすための支援体制が整っている

人口約900万人の国から世界レベルの選手が多く生まれる背景には、こうした「仕組みとしての体育」があることを肌で感じたと言います。一方で日本では、一つの競技を長く続ける傾向が強く、別の競技で花開くはずの才能が埋もれてしまう可能性もあると指摘します。

「落ちこぼれ」だった自分がハンガリーで見た体育のあり方を、日本の教育現場にどう生かすか。これからも試行錯誤を続けながら、スポーツの力を自分なりの形で子どもたちに届けていきたいと考えています。

スポーツで社会を変えるために

スポーツは、人の心を動かし社会を前向きにする力がある」と面出さんは話します。ハンガリーでの学びを生かし、今後は以下のような提案を形にしていきたいと語ります。

  • 学校体育に複合的な運動や才能発掘の視点を導入する
  • 種目変更・移籍がしやすい柔軟な仕組みをつくる
  • 体育の授業時数を年間数時間増やす

9月のトビタテ!留学JAPANの事後研修では、こうした考えを文部科学省の担当者に直接届けることを目標に、まずは同期のトビタテ生への発信から始めたいと考えています。「すぐには実現しないかもしれませんが、時間をかけてスポーツの仕組みを変え、社会に貢献したい」と目線は先を見据えています。

水泳部では80人の大艦隊をまとめる

そんな面出さんは、今まさに「もう一つの闘い」の真っ只中にいます。それが、副主将を務める約80人の水泳部です。
かつてはインカレの総合得点がわずか20点だった水泳部は、昨年100点を獲得し、周囲を脅かすダークホースへと急成長を遂げました。自身も3年連続でインカレレギュラーを務めてきましたが、今季は怪我に苦しんでいます。それでも「這い上がるために練習し、たとえ選ばれずとも全力で仲間をサポートする」と、副主将としてチームに全てを捧げています。
ここまで頑張れたのは、水泳部のおかげ」と語る仲間との絆こそが、彼のすべての挑戦を支える原動力となっています。

そして、面出さんの根底には、大きな目標があります。「父親が元プロ野球選手(阪神タイガース)で、昔から『お父さんすごいね』と言われて育ってきました。だからこそ、これからは自分自身が、関わった人全員に自慢してもらえるような人間になりたいんです」。 周囲の「誇り」となるため、そして日本のスポーツ界の未来を切り拓くため。卒業後も、彼の誠実な挑戦は終わりません。

留学を目指す後輩へ

留学に興味はあっても、『英語ができない』『お金がない』と諦めてしまう人は多いと思います。それでも、英語日記を書いたり、通学中に単語帳を開いたり、スマホの言語設定を英語にしたりと、日常を少しずつ変えていくことで、確実に力はついていきます。

できない理由を探すのではなく、メールを1通送る、国際交流課に相談に行く、説明会に参加する、といった小さな一歩から始めてほしいです。

やらないことの方が失敗だと、留学を通じて強く感じました。


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