Kokushikan Magazines Feature

消防官就職者数全国1位の秘密に迫る

国士舘大学は、四年制大学の中で消防官就職者数全国1位を14年にわたり堅持しています。体育学部スポーツ医科学科の取り組みの裏側から、消防官輩出の秘密に迫りました。

「国を思い、世のため、人のために尽くせる人材『国士』の養成」を建学の精神に掲げる国士舘大学は、建学以来、警察官や消防官、教員など”人を支える職業”に多くの卒業生を輩出しています。警察官と消防官ともに、令和6年度の就職者数が全国1位となったのがその証です。
その中でも消防官就職者数は
四年制大学の中で全国1位14にわたり堅持しています。今回は
体育学部スポーツ医科学科の取り組みの裏側から消防官輩出の秘密に迫りました 

「消防官になりたい」に応えるサポート体制

国士舘大学は体育学部、法学部、政経学部など複数の学部から消防官が誕生しているのが特徴です。中でも顕著な実績をあげているのが体育学部のスポーツ医科学科です。令和7年度の進路決定状況を見ると消防官就職者156人のうち、体育学部の124人が最大で、そのうち108人が体育学部スポーツ医科学科の学生です。スポーツ医科学科の学生が多いのは、入学当時から消防官を志望しているから。消防署の救急隊員を夢見て救急救命士を養成する同学科に入学しているのです。
とはいえ、消防官の仕事は救急隊だけではありません。東京消防庁を例にあげると、ポンプ隊、特別救助隊、はしご隊等で災害現場に行くことや防災安全や防火管理、予防、査察、危険物など多種多様な業務を遂行していく上で、キャリアプランに合わせて研修が行われ専門技術を身につけていきます。救急救命士の募集枠がある消防本部を除き、応募資格に救急救命士の資格は必要なく、本学からも毎年学部問わず学生が採用試験にチャレンジしています。

採用試験対策講座の様子(多摩キャンパス)
採用試験対策講座の様子(多摩キャンパス)

国士舘大学では、全学部の学生の「消防官になりたい」という気持ちに応えるためのサポート体制を整えています。キャリア形成支援センターでは公安系公務員を志望する学生に向けて「警察官・消防官試験対策講座」を開講しています。約9カ月間かけて開講される講座に今年は、3年生を中心に世田谷キャンパスで約150人、多摩キャンパスで約130人が申し込みました。

元消防官管理職による模擬面接

スポーツ医科学科は消防官を目指す学生が多く在籍することから消防官採用試験対策に力を入れています東京消防庁の署長クラス教員ら8ごろから小論文対策と面接対策を行っています 

6月1日、
多摩キャンパスで東京消防庁Ⅰ類採用試験の1次試験に合格した学生を対象とした模擬面接われていました。5月27日、28、6月1日3日間76人が参加したこの模擬面接、スポーツ医科学科に所属する教員が面接を担当し、本番さながらの雰囲気で面接フィードバック行いました模擬面接では、導入の質問から、入庁した後の消防官像、最近の気になる事件・事故などの時事問題まで、さまざまな角度から投げかけられる質問に、学生は緊張しながらも誠意を持って答えていました。フィードバックでは別室に移動し、検証担当の面接官が具体的な助言で改善ポイントを指導ました。 

面接官2人と検証担当1人の3人体制で模擬面接を実施
面接官役2人と検証担当1人の3人体制で模擬面接を実施
受け答えの様子をスマートフォンで録画
受け答えの様子をスマートフォンで録画

今回の模擬面接には他学部・他学科からも13人が参加しましたごろの小論文・面接指導他学部・他学科生参加が可能で、指導を求めて世田谷キャンパスから足を運ぶ学生もいます教員らは空きコマをほぼすべて学生らの指導に当てています。面接室扉に掛けられている予約表に学生の予約がびっしりと書き込まれていることからも、その盛況ぶりが伺えます。小論文対策の時期には扉に備え付けたポストに学生らが小論文を投函し、教員らが添削して返却しているといいます。面接対策のため、小論文添削のため、時には遅くまで研究室に残ることもあるというほど、教員らの献身的なサポートが印象的です。 

面接室の各ブースでは毎日のように個別指導が行われている
面接室の各ブースでは毎日のように個別指導が行われている
面接予約はすぐに埋まってしまうという
面接予約はすぐに埋まってしまうという

学生からも充実の声

この日模擬面接を受けた学生に話を聞きました。 

荒尾 明育さん(体育学部スポーツ医科学科)

中学生の時、ドキュメンタリー番組をきっかけに救急隊員を志し、救急救命士の資格取得と手厚いサポートに惹かれ国士舘大学へ進学しました。大学では学年ごとに基礎から応用にステップアップしていく救急医学の学修に加え、水難・遭難救助実習や救急用自動車同乗実習などの充実した実践、教養は独学で学び、授業での15回に及ぶ小論文指導、面接対策に注力してきました。今日の模擬面接では、言葉の癖や想定外の質問への対応力不足を指摘され、客観的な課題を認識しています。本番までに、今日のように撮影した映像を活用するなどして対策をしていきたいと思います。
私は高校時代のハンドボール部副キャプテンやボランティアの経験から「人のためになる仕事がしたい」という信念があります。将来は専門性の高い救急機動部隊を経て、現場経験を活かせる通信指令員として多くの人々の安心を支えることを目標としています。

三矢 春奈さん(体育学部スポーツ医科学科)

幼少期から消防官に憧れ、「人々の安全安心そのものを支えたい」との思いから、公務員試験に強く設備が充実した国士舘大学へ進学しました。大学では充実した救急医学の学修に加え、スポーツ救護のボランティア活動などで実践的な経験を重ねてきました。将来は救急隊長を目指しており、女性が長くキャリアを積める環境で、信頼される消防官として活躍したいと考えています。大学では同じ目標を持つ仲間と切磋琢磨できる環境が、夢の実現に向けた大きな支えとなっています。
今回の模擬面接では、回答の簡潔さは評価されたものの、表現力の不足、自身の経験を具体的に言語化する課題を指摘され、本番に向けた改善を目指しています。

佐藤 全さん(政経学部政治行政学科)

政経学部のカリキュラムが公務員試験に直結することから進学を決めました。当初は漠然としていた目標も、スキューバダイビング部の経験を通じて消防官へと決意を固めました。部活動では部長を務め、自身の危険な経験から安全管理と人助けの重要性を学んでいます。試験対策では合格に向けてのスケジュール管理やAIを活用した小論文対策など独自の工夫で進めてきました。将来は水難救助隊員を目指しており、仕事のやりがいと自身のライフスタイルに合った勤務形態に魅力を感じています。模擬面接では「自信のなさ」という態度面での課題を指摘されたので、本番に向けて改善していきたいと思います。

内田元高准教授に聞く

体育学部スポーツ医科学科の内田元高准教授に消防官養成にかける思いを伺いました。 

内田元高准教授
内田元高准教授

内田元高准教授
東京消防庁では、救急部副参事(救急相談担当)、救急指導課長、大森消防署長、豊島消防署長を歴任。自治省消防庁派遣時には全国の消防本部における消防・救急業務の発展、東京都福祉保健局派遣時には改正消防法に基づく「東京都メディカルコントロール協議会」の立ち上げに尽力した。令和6年度本学体育学部准教授に着任し、救急救命士、消防官(士)を志す学生への指導に注力している。令和7年度救急功労者表彰「消防庁長官表彰」を受賞。

教養試験・小論文・面接をどう突破するか 

――本日の模擬面接対策はいかがでしたか  

普段は一人につき1時間ほどかけてじっくり行いますが、本日は本番と同じ流れで緊張感のある雰囲気の中で約15分間の模擬面接を進めました用意した回答ではなく、「自分の言葉で語る」ことができているかをみています。自分の言葉で語ることができる学生は日ごろから考えていることが伝わってきます 

――日ごろはどのような対策をしているのでしょうか 

スポーツ医科学科には消防官採用試験対策科目が準備されていますキャリアアップ実践講座(3年次秋期開講)では、消防業務の概要に関する講義に加えて小論文の書き方を指導しています。最低でも15回は小論文を書き添削指導を受けることができます。「コミュニケーション演習Ⅰ(3年次2月頃~)では主に小論文対策を、「コミュニケーション演習Ⅱ(4年次春期)では主に面接対策を個別に受けることができます。
法学部にも消防行政のゼミが設けられており、消防官を志望する学生が学んでいます。

――他学部・他学科の学生も受け入れていると聞きました 

スポーツ医科学科で科目設置していますが、消防官採用試験の合格が目的ですから、履修登録していない学生や他学部・他学科の学生も予約を入れて個別指導を受けているのが現状です。噂を聞きつけて多摩キャンパスに足を運び個別指導を求める学生には、彼らの行動力を評価し、受け入れています。 昨年度は全体で延べ約4,300人の学生が個別指導を受けました 

 

――東京消防庁Ⅰ類の1次試験は、教養試験と小論文ですね。  

教養試験方式の1次試験は、教養試験で基準点を超えなければ小論文を見てもらえません。本学の課題は、1次試験の教養試験で他大学と比べるとやや通過率が低いことです。一方で、基準点に達した学生については、小論文にしっかり取り組ませていますので、自信を持って臨むことができるのは大きな強みです。2次試験の面接についても、本学の合格率は他大学と比較して高いというデータが出ています。  
消防官の採用試験日程が今年から2週間早まりました。教養試験対策のスタートも以前より早くする必要が出てきています。コツコツと積み重ねていく地道さが、最終的な突破力につながると思っています。 

使命感、協調性、自律性、強靭さ」をどう見極めるか 

――面接では、どんな観点で学生を見ていますか

将来の消防行政を担っていけそうか」という観点で質問を投げかけています東京消防庁が求める人物像として、「使命感、協調性、自律性、強靭さ」が明示されています。学生がどの程度それらを備えているか、それを消防官としてどう生かしたいと考えているかを見ています。消防官は生命、身体、財産を保護するなどを任務としていますから、「命にどれだけ真剣に向き合っているか」も重要なポイントです。 

――スポーツ医科学科の学生は、救急救命士としての学びも大きいですね。  

救急救命士の勉強を通じて「救える命を救う」という強い意識と技術は自然と身につきます。ただし、私は学生にいつも「消防官は救急だけが仕事ではない」と伝えています。火災、災害、救助など、マルチな任務を果たすのが消防官です。ですから、「広い視点で消防官として何を見ているか」「さまざまな任務にどう向き合うか」という点も重視します。 

――面接では「人間力」も問われると

面接官は、「はじめの4分間相手度量わかるとよく言われています。まずは、第一印象が大切であり、話していると、用意された言葉の裏側にある、その人の日常考え方、他者への優しさ、広角的なものの見方観察力などが自然と見えてきます。エントリーシートの文章だけでは見えない部分を、会話のキャッチボールの中で確認しているイメージですね。 

国士舘卒業生が消防現場で担う役割 

――消防学校では、国士舘出身者も多いそうですね。  

東京消防庁の消防学校では、ある期の約4~5分の1が国士舘出身ともいわれています。1クラスをつくれるくらいの人数です。それだけ多くの卒業生が消防の現場で働いているというのは、国士舘の魂が多くの消防官に引き継がれていくといっていいでしょう。スポーツ医科学科1期生の中には、東京消防庁で管理職を担う卒業生出てきています。現場で地道に努力してきた成果が、いま「フロンティア」として花開く時代に入りつつあると感じています。 教育理念である四徳目「誠意・勤労・見識・気魄」など国士舘の心を胸に職務を遂行していくものと思います

――国士舘の卒業生には、どのような特徴がありますか

国士舘の学生は、人間味がある。あいさつがしっかりできる。大学にもある「国士」とは力と胆力を持って、私心を棄て公のために資する、見識ある平衡を得た常識人・人格者」という意味がありますこれは消防官必要とする力でもあります。智力と胆力」は考える力と、やり抜く力。その基礎を持っているからこそ、現場で存分に力を発揮できているのだと思います。 

自分で動く力」を育てる 

――学生には、どんな姿勢で就職活動に臨んでほしいとお考えですか。  

自分で動くことです。考えて、情報を集めて、行動する。そのプロセスを早いうちから身につけてほしい。大学でも、消防施設の見学会や各地域の消防本部による説明会、合格者報告会など、働くイメージが持てるような機会を設けていますが、大学から与えてもらうのを待っているだけではだめです。 地元の消防を志望するなら地元の情報を、東京消防庁というスタンダードな知識を押さえつつ、他都市との違いや特色を比較しながら学んでいく必要があります。見学会なども行われていますから、自分で足を運び、肌で感じたものを自分の言葉で語れるようになってほしいと思います。
合格する学生は目的を明確にもっています。何になりたいか、そのために何をしなければならないか、自分から行動して学んだことが、大切な財産となっていきます。

法学部学生とスポーツ医科学科学生を対象とした施設見学
法学部学生と体育学部スポーツ医科学科学生を対象とした施設見学
各地域の消防本部による説明会
各地域の消防本部による説明会

変化する消防の現場と、求められる資質 

――消防を取り巻く環境も大きく変わってきています。  

そうですね。災害はいつ起こるかわかりませんし、技術革新や少子高齢化など社会の状況も複雑・多様化しています。その中で、「いざという時に頼られる存在」であり続けることが消防の使命です。AIの導入など新しい技術への対応も求められています。人員が限られる中で、AIをどう有効活用するか。時代のニーズに合わせて新しい知識を貪欲に学び、チャレンジしていける人が求められています。  

消防官は過酷にみえますが過重労働させないような体制を整えていますし、女性の考えを施策に生かすなど挑戦できる環境も整っています。現状の良し悪しを評価するよりも、消防の抱える課題を改善していく、消防行政を背負って立つくらいの心づもりがほしいですね。 

――どのような公務員像を学生に期待されていますか。 

私は消防官時代心、力、意」――心を尽くし、力を尽くし、意識を継続する――という言葉を大切にしていました。国士舘の「心学、活学」の精神とも通じます。国士舘には、純粋に消防官になりたくて入学してくる学生が多い。そうした志を持った学生が、広い心と多くの経験を通じて、マルチな任務に対応できる消防官へと成長していくことを願っています。  

高校生へのメッセージ 

――最後に、消防官を志す高校生にメッセージをお願いします。  

思い描いたことを現実にするために、今何をすべきか――それをぜひ考えてみてください。志を持ち、その志を実現するための手段として国士舘を選んでもらえたらうれしいです。おぼろげな「なりたい」という気持ちを、確かな目標へ、そして行動へとつなげていきましょう。私たちは、そのプロセスを全力で支えていきます。 

「心、力、意」の色紙を持つ内田准教授

2026年6月1日取材

取材を終えて

消防官になって良かったと素直に思っていから、その経験を学生に還元したいという思い強いいう内田准教授の言葉が印象的でした消防官を目指す学生の強い思いと、それをバックアップする教員陣の利他的なサポート体制が、消防官輩出を底堅く支えていました。 

関連リンク
体育学部ホームページ
体育学部スポーツ医科学科公式インスタグラム


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