変形と流動を観る、解く、創る ―実験・計算科学・AIによるものづくり研究

本研究室では、「変形と流動を観る、解く、創る」をキーワードとして、実験、計算科学、AIを融合したものづくり研究に取り組んでいます。主な対象は、塑性加工、金型・工具設計、材料の変形・流動解析、新材料の開発と評価です。実験では、実際の加工現象や材料挙動を観察・計測し、変形機構や加工特性を明らかにします。計算科学の分野では、有限要素法などの数値解析に加え、材料の変形・流動を力学的に許容される速度場から記述する独自の解析手法「Structured Admissible Velocity Field(SAVF)」の研究を進めています。また、AIや最適化手法を活用し、解析の高度化、加工条件や金型形状の設計、新しいものづくり支援技術の構築にも取り組んでいます。さらに、摩擦攪拌成形技術や繊維強化氷のような特徴的な複合材料についても、作製、力学特性評価、構造・変形挙動の解明を行っています。実験と理論・計算を往復しながら現象の本質を理解し、その知見を新しい加工法、設計法、材料へとつなげることを目指しています。

SAVF

研究分野における現在の問題点や関心事、見解など

現在、ものづくり分野では、加工現象の高度化・複雑化に加え、熟練技術者の減少、材料・エネルギーの有効利用、開発期間の短縮などが重要な課題となっています。また、有限要素法をはじめとする数値解析やAIの利用が急速に広がる一方で、計算結果やAIの予測を単なる「答え」として利用するだけでは、変形や流動がなぜ生じるのかという物理的な理解が十分に得られない場合があります。私が特に関心を持っているのは、実験・力学・計算科学・AIを相互に結びつけ、加工プロセスや材料の変形と流動を「見える化」するとともに、その背後にある構造や原理を明らかにすることです。実験によって実現象を捉え、数値解析によって内部の変形や流動を調べ、さらにAIや最適化を利用して新しい加工条件、金型、材料の設計へつなげる研究を進めています。一方で、計算やAIが高度になるほど、物理法則や境界条件をどのように保証するかも重要になると考えています。そのため、既存の解析法を利用するだけでなく、力学的な条件を満足する速度場を構造的に組み立て、物理的知識と計算を一体化した新しい解析方法についても研究しています。「よく当たる計算」だけでなく、「なぜその結果になるのかを理解でき、そこから新しいものづくりを創り出せる計算」を目指すことが、今後ますます重要になると考えています。

主な研究テーマ①

塑性加工・金型設計における高度設計技術とAI活用

材料試験や鍛造、押出しなどの塑性加工を対象として、加工中に材料がどのように変形・流動するのかを、実験と数値解析の両面から研究しています。また、加工プロセス設計や金型設計において、AI、機械学習、最適化技術を活用し、加工条件の探索、材料流動の予測、さらには金型形状の設計支援に取り組んでいます。
数値解析や実験から得られるデータとAIを組み合わせることで、従来は多くの試行錯誤を必要としていた設計・開発プロセスの効率化と高度化を目指しています。また、単なるデータ駆動型の予測にとどまらず、塑性力学や塑性加工に関する知識、物理法則、数値解析技術とAIを融合することで、予測結果の解釈や設計根拠の提示まで可能とする、新しいものづくり支援技術の研究を進めています。

金型技術①
金型技術②

主な研究テーマ②

摩擦攪拌成形技術

摩擦攪拌接合(FSW)は、英国のTWIによって固相接合技術として開発された加工法です。私たちは、この技術を接合ではなく、材料に形状を付与する新しい成形・賦形技術として活用することを目指して研究を進めています。
摩擦攪拌によって材料は優れた転写性と高い変形能を示すことから、従来の加工法では実現が難しかった機能性部材や新しい構造を有する製品の成形への応用を検討しています。また、機械的接合構造とFSW本来の冶金的接合を組み合わせることで、高強度化と分解・リサイクル性の両立を実現する新しい接合技術の開発にも取り組んでいます。

摩擦攪拌成形
FSFによる機械的接合

主な研究テーマ③

圧縮加工を用いた中空製品製造技術と繊維強化氷

パイプなどの中空素材内部に固体コア材を充填し、圧縮成形後にコア材を除去することで複雑な中空製品を製造する加工プロセスの研究を行っています。また、このプロセスに用いる充填材として、環境負荷の低い鉛代替材料である繊維強化氷の開発にも取り組んでいます。
繊維強化氷は、氷に短繊維を分散させた複合材料であり、安価でリサイクルが容易という特徴を有しています。さらに、繊維のアンカー効果によって高い圧縮強度を示し、その強度は鉛に匹敵します。また、氷単体では得られない延性的な変形挙動を示すため、大きな塑性変形を伴う中空素材の成形においても効果的に追随することができます。

中空成形技術
繊維強化氷

研究室ホームページ

https://www.mech.kokushikan.ac.jp/ohashilab/

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教員情報:大橋隆弘教授