ロボ・メカ技術で医療・バイオ分野を支援


産業用ロボット、宇宙応用ロボット、保守点検ロボット、家庭用ロボット(生活支援ロボット、コミュニケーションロボット)、災害救助ロボット、サービスロボット、医療・福祉応用ロボット(介護ロボット、リハビリロボット、手術支援ロボット)など、現在、多くのロボットが活躍しています。これらのロボットにはさまざまな技術が活用されています。機構技術、計測・制御技術、コンピュータ技術、ソフトウェア技術、センサ技術、音声認識技術、画像処理技術など、とりわけ、機械工学に関連する分野では、機構学、材料力学、機械力学、ロボット工学、振動工学、制御工学などがあげられます。ロボットシステム研究室では、特に、機構とその制御技術を活用し、医療関連従事者を支援するためのロボットの要素技術およびシステム化技術に関する研究を行っています。例えば、現在、広く活用されている手術支援ロボットは、大型・高コストなどの課題が指摘され、眼科などの微細手術領域では、ロボット化が進んでいません。そこで、シンプルな機構のロボット鉗子や、微細手術を対象とした湾曲機構とその駆動システムなどを研究開発しています。さらに、臨床検査やバイオ実験などの従事者の負担を低減するロボットやデバイスに関する研究も行っています。

低侵襲微細手術支援用ハンドヘルドデバイス
臨床検査・バイオ実験自動化用8連マイクロチューブキャッパー/デキャッパー

研究分野における現在の問題点や関心事、見解など

高い技能を有する一部の熟練医師にしか実施できない高度な低侵襲微細手術は、現在も数多く存在しています。そのため、患者さんが受けられる医療の質は術者の経験や地域医療体制に大きく左右されています。そのような課題を解決するために、医療現場でロボット技術の導入が進んでいます。たとえば、腹腔鏡下手術支援ロボットの登場と世界中への普及により、多くの患者さんがその恩恵を受けています。一方、眼科や脳神経外科などの低侵襲微細手術では、微細機構の実現が極めて困難であることから、手術支援ロボットの社会実装はほとんど進んでいません。低侵襲微細手術を実現するための技術は、日本が強みを有する精密加工技術、機械工学、ロボティクス技術を融合することで初めて実現可能となります。日本発の低侵襲微細手術支援ロボットを世界へ展開し、熟練術者だけが可能としてきた高度な微細手術を標準化することにより、患者さんが地域や術者の経験に左右されず、高度な医療を受けられる社会の実現を目指します。

主な研究テーマ①

低侵襲微細手術用ロボット・デバイス技術

本研究では、極狭隘部での微細作業・手技が可能な自由度を有する極細径多自由度先端機構とその駆動機構、さらに、それらをスマートに実装し、システム全体が極めてコンパクトで操作性の高いリーダ・フォロアロボットシステムを実現します。つまり、極細径多自由度先端機構を有する手術支援用遠隔操作型コンパクトマニピュレータの機構システムを開発し、これにより、手術支援ロボットの適用範囲・作業対象が微細化へと飛躍的に拡大することで、誰もが高度な医療を受けられる社会の実現を目指します。
特許:
(1) 特開2023-168932 エンドエフェクタおよびマニピュレータ
(2) 特願2025-086614 マニピュレータ装置
原著論文:
(1) M. Jinno, R. Nonoyama, and I. Iordachita, “Design and Miniaturization of an Ultra-Fine Multi-Degree-of-Freedom Robotic Instrument for Ophthalmic Minimally Invasive Microsurgery,” Robomech Journal, 13:18, 2026, https://doi.org/10.1186/s40648-026-00349-2
(2) M. Jinno and Iulian Iordachita: “Improved Integrated Robotic Intraocular Snake: Analyses of the Kinematics and Drive Mechanism of the Dexterous Distal Unit,” Journal of Medical Robotics Research, (2021) 2140001 (13 pages), https://doi.org/10.1142/S2424905X21400018
表彰:
(1) 日本機械学会ロボティクス・メカトロニクス部門ベストデモンストレーション表彰,“2自由度湾曲機構とシャフト回転軸,マイクログリッパを有する低侵襲微細手術支援用ロボティックデバイスの試作 (Robomech2025:1A1-H16), ”2026.7
(2) 日本ロボット学会優秀講演賞,“マイクログリッパを有する手術支援用ハンドヘルドデバイスの試作(第40回日本ロボット学会学術講演会: RSJ2022AC4J1-06), ”2023.9
外部資金:
(1) 公益財団法人JKA補助事業(2026M-183)
(2) 公益財団法人JKA補助事業(2025M-344)
(3) JSPS科研費(21K03968)

低侵襲微細手術支援用・外径0.9mm4自由度湾曲機構
低侵襲微細手術支援用・外径0.7mm2自由度湾曲機構と位置決めロボットアーム

主な研究テーマ②

臨床検査・バイオ実験効率化のためのロボット・デバイス技術

臨床検査やバイオ実験作業では、危険なウイルスの検体や検査・実験のための試薬などを、マイクロチューブと呼ばれる1.5mLの容器に入れて、取り扱うことが多くあります。そのマイクロチューブのキャップの開閉作業は、検体の飛散や接触によるコンタミネーションのリスクが潜在し、検査や実験の正確性のみならず、作業者の安全を脅かす危険を伴います。本研究では、マイクロチューブを開閉する装置の開発や、開閉装置を組み込むことにより自動化が困難であった作業の実現が可能となります。
臨床検査やバイオ実験作業では、まだまだ、多くの作業が手作業により行われています。そのような現場に、新たな発想のメカニズムを有するデバイスを開発することで、臨床検査やバイオ実験作業従事者の負担と、検査・実験の信頼性向上を目指しています。
特許:
(1) 特開2023-172845 キャップ開閉装置及びその制御方法、マイクロチューブラック
(2) 特開2024-170133 キャップ開閉装置
原著論文:
(1) M. Jinno, D. Kawasaki, R. Nonoyama, “Eight-station automatic microtube capper/decapper system for clinical examinations and biological experiments,” Robomech Journal, 13:6, 2026, https://doi.org/10.1186/s40648-026-00338-5
(2) M. Jinno, R. Nonoyama, “Automatic microtube capper/decapper system for clinical examinations and biological experiments,” Robomech Journal, 12:14, 2025, https://doi.org/10.1186/s40648-025-00306-5
(3) M. Jinno, R. Nonoyama, Y. SAKURAI, R. YOSHIKWA, T. KINOSHITA, J. YASUDA: “Manually operated microtube automatic capper/decapper system for clinical laboratory and biological laboratory personnel,” ROBOMECH Journal, 11:13, 2024, https://doi.org/10.1186/s40648-024-00281-3
表彰:
(1) 日本機械学会ロボティクス・メカトロニクス部門ベストデモンストレーション表彰,“臨床検査・バイオ実験作業者支援用マイクロチューブキャッパーの開発(Robomech2023:1A1-A16), ”2024.5
(2) 佐々木(修士2年),第24回システムインテグレーション部門講演会(SI2023)優秀講演賞, “臨床検査・バイオ実験効率化のためのピペッティングロボットの開発(ガイドレス直動機構を有するコンセプトモデルの基本性能評価), 2023.12
外部資金:
(1) JST CREST「異分野融合による新型コロナウイルスをはじめとした感染症との共生に資する技術基盤の創生」 2020-2023

臨床検査・バイオ実験マニュアル作業用マイクロチューブキャッパー/デキャッパー
PCR検査前処理工程自動化ロボットシステム

研究室・ゼミ活動

3年生ゼミでは、機械工学に関連する技術や学問に注目して、ロボット分野の技術動向調査を、学会誌や論文集などを利用して行います。調査結果から、現在、ロボット分野ではどのような課題があるのか、どのようなニーズがあるのかを抽出します。そして、今後、どのようなロボットが必要になるのかを考え、新たなコンセプトやシステムの提案を試みます。さらに、機械技術者としてその実現に向けたプロセスを考え、実践に向けて必要な工学知識の習得や技術の習得を目指します。すなわち、ロボット分野における課題を見つけ、課題設定を行うとともに、課題解決方法の提案を自主的に進め、課題解決のために必要な基本的な工学知識の習得や技術の習得を行うことを本ゼミの目標とします。ゼミ活動は、以下のような流れで進めます。
1. 技術動向調査(学会誌・論文集・インターネット・公開特許・登録特許などを利用)
2. 現状の技術課題・ニーズの抽出
3. 将来を予測した新たなコンセプト・システムの提案
4. 提案内容の実現方法の検討(必要な工学知識の習得・技術の習得、コンセプトの具体化など)
この他、最新ロボット情報提供(ロボット・メカトロ分野に関する研究内容や技術動向)、(2) 実験実習、(3) 学外研修(企業見学)、(4) ゼミ合宿(1泊2日)などを行います。
4年卒業研究では、「新たなコンセプトのロボットシステムの立案と実現」をテーマに、ロボットシステム研究室のメインテーマである手術支援用ロボットやラボラトリーオートメーション分野に関する課題のほか、学生自身が「やりたい!」と思う機械工学・ロボティクスメカトロニクスなどに関するテーマに自由に取り組むことができます。

所属学生の卒論・卒研のテーマ、キーワード(一例)

2026年度卒業研究テーマ例
(1) ディスク積層構造を用いた4自由度湾曲機構の運動学と位置姿勢制御
(2) 低侵襲微細手術支援ロボット用リーダーロボットの要素技術開発
(3) 臨床検査・バイオ実験プロトコルを対象とした粉体自動分注技術の構築
(4) 臨床検査・バイオ実験自動化用8連PCRチューブキャッパー/デキャッパーの開発
(5) 臨床検査・バイオ実験効率化のための96ウェルプレート用撹拌デバイスの研究
(6) 臨床検査・バイオ実験作業動画を用いた模倣学習によるロボットプログラミング

教員メッセージ

ロボットシステム研究室は、ものづくりに興味のある学生が向いています。自分で課題を見つけ、その課題をどのようにすれば解決できるかを考え、コンセプトを創造し、アイディアを形にするために必要な知識を、機械工学系で学んできたことから絞り出し、不足している知識は、とことん調べて、実現を目指します。その実現に向けて、自主的に行動できることが大切です。もちろん、ヒントやアドバイスは惜しみません。より良いものを創り上げたいと思う気持ちを持った学生が向いています。実現できた時の達成感は、なにものにも替えがたいものです。そして、将来、自分の夢を形にできる人間になってほしいと思います。エンジニアになることは、その夢を実現するための一つの道だと思っています。

ゼミ合宿(国際ロボット展見学)
ゼミ合宿(研究発表会)

研究室ホームページ

https://jinno.mech-kokushikan.com/

関連リンク

教員情報:神野誠教授