地球科学、中でも鉱物と鉱物の化学反応を扱う変成岩岩石学という分野

地学分野の中でも、岩石や鉱物を研究する「岩石学」、特に変成岩岩石学を専門としています。主な研究フィールドは、関東から四国・九州にかけて分布する三波川変成帯です。変成岩は、もとの岩石が地下深くに運ばれ、高い圧力や温度を受けてつくられた岩石です。岩石に含まれる鉱物の種類や化学組成、顕微鏡で見える組織などを詳しく調べることで、その岩石が地下でどのような温度・圧力を経験し、どのように変化してきたのかを読み解きます。また近年は、歴史的建築物に使われている石材を化学分析によって調べ、産地を推定する研究にも取り組んでいます。

研究分野における現在の問題点や関心事、見解など

変成岩研究の難しさと面白さは、今見えている岩石の姿から、それがたどってきた複雑な過程を一つずつ読み解くことにあります。岩石は、できてから現在に至るまでに受けた温度や圧力、変形、鉱物の成長や反応など、さまざまな出来事を重ね合わせて記録しています。
たとえばプリンなら、完成したプリンだけを見て、「材料はどのような配合だったのか」「何度のオーブンで何分加熱したのか」「その後、冷蔵庫で何度まで冷やしたのか」を推定するようなものです。変成岩についても、鉱物の種類や組成、組織を手がかりに、一つ一つの変化がいつ、どのような順番で起きたのかを分解していきます。そこに、変成岩研究の難しさと大きな面白さがあります。

主な研究テーマ①

三波川変成帯の温度圧力履歴

三波川変成帯の岩石を主な対象として、岩石が地下深くでどのような温度・圧力を経験してきたのかを調べます。なぜそんなことを知りたいかというと、三波川変成帯をつくる岩石は、プレートの沈み込みに伴って一度地下深くまで運ばれたと考えられているからです。当時の日本列島の地下がどのような温度・圧力だったかを、岩石を温度計・圧力計代わりにして解明しようとしているのです。野外で岩石の産状を観察し、採取した試料を薄片にして偏光顕微鏡で観察したり、鉱物の化学組成を分析したりしながら、それぞれの鉱物ができるために必要だった条件を推定します。岩石には長い時間の中で起きた複数の出来事が重なって記録されているため、起きた順序や条件を復元することも大切です。

主な研究テーマ②

建築石材の研究

もう一つの研究テーマとして、近代建築などに使われた石材の産地や利用の歴史を調べています。明治時代以降の日本の近代建築物には多くの石材が使われていますが、石材の産地が記録されていないことが多く、日本の近代化において石材が果たした役割はあまりよく分かっているとは言えません。そこで、残された文献や産地での聞き取り調査のほか、近年は建物を傷つけずに化学組成を測定できるポータブル蛍光X線分析装置などを利用して、科学的に石材の産地を推定する手法の開発にも取り組んでいます。

地域連携・社会貢献活動

建築石材の見学会など

駅や公共建築、商業施設など、私たちの身近な場所にはさまざまな岩石が使われています。建築石材は、遠くの山や地層まで出かけなくても、本物の岩石を観察できる身近な地学教材です。これまで、都内の建築石材を巡る観察会や、石材を題材に地球科学を紹介する活動に取り組んできました。石の色や模様、含まれる鉱物や化石を観察すると、建物の一部だった石が、地球の成り立ちや長い歴史を記録した資料に見えてきます。研究成果を専門家だけに閉じず、一般の方や中高生にも分かりやすく伝え、地学を身近に感じてもらうことを大切にしています。

研究室・ゼミ活動

研究室では、変成岩や建築石材を対象に、知りたいことに応じてさまざまな方法を組み合わせて研究します。野外で岩石や地質を観察し、採取した試料を薄片にして偏光顕微鏡で観察したり、鉱物や岩石の化学組成を分析したりします。さらに、得られたデータをコンピュータで計算して温度・圧力条件を推定したり、顕微鏡写真などを画像処理して鉱物の分布や特徴を調べたりすることもあります。ゼミでは研究の進み具合を発表し、結果をどのように解釈できるかを皆で議論します。自分で観察し、データを集め、考え、確かめる一連の過程を経験することを大切にしています。

所属学生の卒論・卒研のテーマ、キーワード(一例)

三波川変成帯長瀞地域における石英脈中の粗粒ザクロ石
関東山地三波川変成帯の緑色片岩中における曹長石斑状変晶の組織
多元素組成データの網羅的探索による建築石材の産地判別

教員メッセージ

岩石を研究するには、野外へ出かけ、試料をつくり、顕微鏡で観察し、データを集めるという地道な作業が必要です。すぐに答えが出るとは限りません。しかし、自分で観察した事実を積み重ね、「なぜだろう」と考え、仮説を立てて確かめる過程には、科学の面白さが詰まっています。卒業研究では、最初から地学や岩石に詳しい必要はありません。自分の得意なことを生かしながら、一つの問題を自分の力で調べ、根拠をもって説明できるところまで取り組んでほしいと思っています。研究を通して身につけた「事実を確かめて考える力」は、どのような進路に進んでも役に立つはずです。

関連リンク

教員情報:乾睦子教授