私たちの生活に欠かせない電気エネルギー。その電気を「つくり」、「おくり」、「つかう」ための電力機器や電気機器の安全性と信頼性を支える「電気絶縁材料」を中心に研究しています。エポキシ樹脂などの高分子絶縁材料や、無機粒子などを添加したポリマーコンポジット材料を対象として、材料の微細構造と電気的・機械的特性との関係や、絶縁破壊・劣化現象のメカニズムを調べています。さらに、画像解析や機械学習などの情報技術を活用し、材料の評価や設計、劣化現象の解析を行う新しい研究にも取り組んでいます。

研究分野における現在の問題点や関心事、見解など
カーボンニュートラルの実現に向けて、電力機器・電気機器には小型化、高効率化、長寿命化が求められており、それを支える絶縁材料にも、これまで以上の性能と信頼性が必要とされています。一方、絶縁破壊や劣化現象には、材料内部の微細構造、欠陥、異種材料の界面など、多くの要因が複雑に関係しています。そのため、従来の実験や経験に加えて、現象を定量的に捉える新しい方法が重要になります。そこで、実験による現象の観察とともに、画像解析やAIを活用して実験や画像から得られるデータの特徴や規則性を見いだし、材料設計や劣化・寿命予測につなげる研究が今後さらに重要になると考えています。
主な研究テーマ①
ポリマーコンポジット絶縁材料の作製と絶縁性能評価
エポキシ樹脂などの高分子材料に、ナノサイズやマイクロサイズの無機粒子、ゴム粒子などを添加したポリマーコンポジット絶縁材料を作製し、その電気的特性を評価しています。材料の性能は、粒子の種類や添加量だけでなく、粒子の分散状態や試料の作製条件によっても変化します。そのため、材料の混合、加熱硬化などの条件を検討し、目的に応じた試料を作製しています。作製した試料については、高電圧試験装置を用いて絶縁破壊特性などを評価します。材料の作製から高電圧試験までを一貫して行い、材料の構造や作製条件と絶縁性能との関係を明らかにすることで、より高性能な絶縁材料の開発を目指しています。


主な研究テーマ②
画像解析による絶縁材料の微細構造と劣化現象の解明
ナノコンポジット絶縁材料では、添加したナノ粒子が材料内部でどのように分散・凝集しているかが、電気絶縁特性に影響を及ぼす重要な要因の一つです。本研究では、電子顕微鏡画像を用いてナノ粒子の分散状態や凝集状態を画像解析により数値化し、材料内部の微細構造を定量的に評価しています。また、高分子絶縁材料に高い電界が加わった際に発生する樹枝状の劣化経路である「電気トリー」についても、画像処理によってトリーの長さ、広がり、形状の複雑さなどを定量的に評価しています。これらの画像解析結果と高電圧試験の結果を組み合わせることで、材料内部の微細構造と絶縁劣化・絶縁破壊特性との関係を明らかにし、より信頼性の高い絶縁材料の開発につなげることを目指しています。

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外部資金:
(1) JSPS科研費(26K07578)
(2) パワーアカデミー研究助成 萌芽研究(チーム型) 2025年
研究室・ゼミ活動
研究室では、学生一人ひとりが自分の研究テーマを持ち、実験、データ整理、解析、考察、発表までの一連の研究活動を経験します。高電圧試験、絶縁材料の作製、顕微鏡観察、画像解析など、テーマに応じてさまざまな技術を身につけます。3年生のゼミでは、電気設備や関連技術への理解を深めるため、JECA FAIR(電設工業展)の見学も行います。4年生では、研究室合宿で卒業研究の中間発表を行い、教員や学生同士で議論しながら研究を深めます。実験結果が予想と異なった場合にも、その理由を考え、次の実験につなげる過程を大切にしています。学会発表や企業との共同研究など、大学の中だけでは得られない経験にも積極的に挑戦できる研究室を目指しています。


所属学生の卒論・卒研のテーマ、キーワード(一例)
卒研のテーマ:
シリカ微粒子分散エポキシ樹脂における絶縁破壊強さの評価
コアシェルゴム粒子分散エポキシ樹脂の耐トリーイング性評価
エポキシ樹脂中における電気トリー進展形状の定量的評価
ナノコンポジット絶縁材料中におけるナノ粒子分散状態の定量分析
キーワード:
高電圧技術,絶縁材料,絶縁破壊,電気トリー,ポリマーコンポジット,画像解析
教員メッセージ
研究では、最初から正解が分かっている問題を解くのではなく、「なぜこのような結果になるのか」を自分で考えることが大切です。実験が思い通りにいかないこともありますが、その原因を考えることが新しい発見につながる場合もあります。今井研究室では、高電圧や電気絶縁材料という電気工学を支える基盤技術を扱いながら、画像解析やAIなどの新しい技術も積極的に取り入れています。電気に興味のある人はもちろん、材料、ものづくり、画像解析やAIに興味のある人も歓迎します。卒業研究を通して、自ら考え、実験や解析によって確かめ、その結果を自分の言葉で説明できる力を身につけてほしいと考えています。
