5月15日、世田谷キャンパスメイプルセンチュリーホール1階大教室で、建築学系主催のシンポジウム「ル・コルビュジエを協奏する〜建築文化リターンズ〜」が開催され、学内外から約260人が来場しました。
当日は、理工学部建築学系の南泰裕教授をはじめ、(株)後藤武建築設計事務所代表取締役の後藤武氏、中部大学の中村研一氏、関西学院大学の米田明氏の4人の建築家が登壇し、各テーマによるレクチャーが行われました。
また、ライター・エディターとして、エクリマージュ主宰の内野正樹氏が司会者を務めました。
20 世紀を代表し、近代建築の三大巨匠のひとりでモダニズムをけん引したル・コルビュジエの生涯と作品を包括的に分析した書籍「ル・コルビュジエ 理念と形態」の日本語版(第2版)が昨年出版されました。今回、その出版を記念してシンポジウム「ル・コルビュジエを協奏する~建築文化リターンズ~」を開催しました。
■中村氏:「原理と変容 ー『ル・コルビュジエ理念と形態』が映し出す建築の世界ー」
はじめに、中村氏が登壇し、本書の著者であるウィリアム・J・R・カーティスの経歴などを紹介しつつ出版に込めた思いをひも解きました。
中村氏は、著者がコルビュジュエの建築作品は普遍的な「型(タイプ)」や「図式(スキーマ)」といった原理を状況に応じて変容していくものであり、その中で生まれる「独自性と典型性」のせめぎ合いこそがコルビュジュエの建築の知性をつくり出していると捉えたと説明しました。そして、それらを象徴するコルビュジュエの建築作品を紹介しつつ、本書は建築家にとって自身のテーマを見つめ直すとともに、さらに思考を深めるための示唆を与えるなるような一冊であると締めくくりました。
■後藤氏:「近代建築のアンフォルム:ロンシャン礼拝堂とチャンディーガル議事堂」
続いて、後藤氏が登壇し、アンフォルム(かたちを持たない要素やかたち)を建築の内部に取り入れようと考えたコルビュジエの試みを紹介されました。
コルビュジエは、建築家である一方で画家の一面ももち、1950年代に入ると雲の描写を多く描くようになったと解説。そのひとつとして、インドの天体観測施設をモデルにしたとされる「チャンディーガル議事堂」をあげ、建物内部に取り付けられている音響反射板が、さまざまな形をした雲を表現していること。壁との間に太陽光が差し込むことで影が生まれ、それが雲を表し、また時間の経過と共に影の形が変化する(=雲もかたちが変わる)ことなども紹介され、コルビュジエの形のないものを空間に出現させる定義について理解を深めました。
■米田氏:「規範と自由、もしくは自然:建築における近代的主体の形成」
米田氏は、コルビュジュエの近代的な建築主体への変容について、コルビュジュエの故郷の都市形成や歴史的背景をもとに解説しました。
フランス語圏であるスイスの出身であったコルビュジエは、のちにパリへ移住しフランスを中心に多くの建築物を残すなど、フランスと大きなかかわりををもったことを解説。その一方で、思想面においてはドイツの「薔薇十字団」のような神秘主義的思考などにも大きく影響を受け、コルビュジエの代表的な尺度システムである「モデュロール」もそのひとつであると紹介しました。また、人間や人体を軸とした時の「空間理解の仕方」について、コルビュジエの建築や思想と、フーコやカントといった歴史的哲学者たちの思想と比較しながらも紹介されました。
■南教授:「オリエンテッド」
南教授は、「オリエンテッド(~へ向かうなどの意)」と題して、コルビュジュエの著書『東方への旅(Voyage d‘ Orient 1911)』を紹介しながらコルビュジュエの建築思想を解説しました。
『東方への旅』は、コルビュジエが東欧やトルコ、ギリシア、イタリアなどを知人と旅行し、それを記録を記したもの。南教授は、自身が2015年にトルコのミマール・シナン芸術大学の客員教授を務めた際に現地で撮影した建造物や景観、現地の人々の様子などの写真を用いながら、コルビュジエが著書に記した建物などの模写や写真を照らし合わせ、コルビュジエの見ていた世界観を具体的に解説しました。そのほかにも、自身が客員教授を務めた際の現地大学生の様子や日本との学習環境の違いなども紹介し、建築家を目指す本学学生らは熱心に耳を傾けました。
レクチャー終了後は、各登壇者らが互いの講演を振り返りながら、コルビュジエの建築物や理念について理解を深めるとともに、建築界のさらなる発展を願い本公講演会が終了しました。
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