アイン・シャーイア遺跡教会堂復原図
70年代から約10年間、ハムリン、ハディーサ、エスキ・モースルと、水没遺跡群の救済発掘を続けていた私たちだったが、再び古巣の西南沙漠にもどることになる。かねて、アッタール洞窟に埋葬された人々の生活跡を探そうという課題から選んだ遺跡がアイン・シャーイアだった。埋もれていたのは、キリスト教徒たちの修道院跡。内陣に壁画を持つ3廊式の教会堂、前述の僧房、水槽のほか小規模ながらカナート(給水路)も発見した。修道僧がこもった洞窟もあった。出土品には十字架を描いたスタッコやシリア文字を記した壁の残片も混じる。イスラームの時代になってから後も、当地にキリスト教(俗にネストリウス派と呼ばれる)が根を下ろしていたことを裏付ける遺跡である。
- 彩色の板状十字架2種。石製。
- 彩色の板状十字架2種。スタッコ製。
アイン・シャーイア出土のスタッコ壁画片
イラク西南沙漠の調査、主要参考文献
藤井秀夫、他「アイン・シャーイア遺跡とドゥカキン洞窟の発掘調査報告(英文)」『ラーフィダーン』第10巻(1989)。岡田保良「アイン・シャーイア遺跡出土の板状十字架について(英文)」『ラーフィダーン』第11巻(1990)、他、『ラーフィダーン』第12巻(1991)、第13巻(1992)に掲載。