調査活動報告
レバノン、ラマリ地区レバノン、ラマリ地区

レバノン、ベイルートの復興計画に伴う遺跡の調査を日本西アジア考古学会が協力する事になった。それを受けた松本がベイルートへ行き交渉を重ね、結果として、北レバノンのアッカール東部の分布調査をおこなった(1988年9月1日~10月30日)。ここでは水源すなわちアイン(泉)に注目し、その周辺を調査した。また東部はレバノン山地中腹から麓になるため、旧石器や新石器などにも注目しながら調査を行った。その結果、旧石器は現海岸線の海辺にも存在していることから海との関係を持った生活も予想される、新石器時代は山麓の中腹や麓にも存在する上、ドルメンと思われる遺構も多数分布していた。青銅器時代や鉄器時代の集落や都市はアッカールの平原に存在するようだ。また地中海沿岸からアッカール川を上流に上り内陸部との交易ルートに位置していることからこれらに関係する遺跡も多い。山岳地帯ではむしろ十字軍の城塞や古いキリスト教教会などの遺跡が目立った。

 

続いてレバノン考古局からの要請で、1998年ティールの遺跡分布調査を行った。これはレバノンを南北に走る高速道路建設に伴う分布調査であった。果樹園の中を徹底的に調査して、多くの遺跡を発見した。中でも新石器時代の遺跡は発掘された遺跡が少ないことから注目される。またヘレニズム、ローマ、ビザンチン時代の遺跡は数多い。あちこちの地下に掘削され、大きく口を明けている。盗掘されている墓がほとんどだが、今回は地中レーダーも活躍した。同時にティールの町の東部になるラマリ地区の墓群の遺跡も綿密に調査が進められ、幾つかは試掘された。ただこの国の問題は盗掘が多いことであり、いっそうの管理が求められる。

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