2022年08月05日
文学部教員によるショートエッセイを公開中です(8月5日更新)
リレーエッセイ企画として、文学部の専任教員によるショートエッセイを不定期更新しています。
本企画では、「最近の研究テーマの展望とその成果」をテーマに各教員が「どんな専門なのか」「何が学べるのか」といった内容に加え、受験生の皆さんへのメッセージをショートエッセイとして執筆しています。
文学科 日本文学・文化コース
朱熹の『小学』からひもとく子供の学び
松野 敏之(まつの としゆき)教授
(専門分野:中国思想・江戸儒学)
近世東アジアに大きな影響を与えた朱熹(しゅき)の編纂書『小学』に注目しています。朱熹は人の学びを小学・大学という段階で分け、子供の学びを重視しました。子供にとって適切な学びとは何か。伝統的な学習法をふまえながら、歌のリズムで重要な教えを暗誦していく、将来のためになる教訓や戒めを覚えていく、人らしく生きるために大切な聖賢の教えを学んでいくなど、様々な模索の上で小学教育をまとめていきました。
『小学』という書籍では、(1)学びの大切さを実感すること、(2)家族・仕事・友人と真剣に向き合うこと、(3)日常の言葉や挙措動作をつつしむこと、以上の3点を小学段階で身につけておくべきことの核であると示します。
朱熹自身はどのように工夫しながら『小学』を編纂したのか、また後世の人々はどのように『小学』を活用していったのか、そのようなことを研究テーマとして取り組んでいます。
単著『朱熹『小学』研究』(書影)
「武夷精舎(『小学』編纂時に在住)周辺の眺望」
「日本の倫理思想」を究めて自分らしい生き方を発見
吉原 裕一(よしはら ゆういち)准教授
(専門分野:日本思想史、倫理学)
最近の研究テーマは、正確に言うと「日本の倫理思想における美と道徳をめぐる諸問題」ですが、すごく簡単に言うと「『自分らしさ』って何?」ということです。
日本の先人たちは、幸せな人生を送るためにはまず「この自分は何を幸せだと思うのか」という考察、すなわち「自己」の探究が不可欠だと考えました。他人にとっては幸せなことでも、それを自分が幸せだと思えなければ意味がありません。他人とは違う「この自分」っていったい何だろう…? その問いから出発して、自己と世界とのつながりや、自己と他者とのつながりのメカニズムを発見し、「そうか、自分って実はこういう存在なんだ!」と気づくことができれば、自分にとっての本当の幸せが見えてきます。その理想を追求してゆくのが、まさしく自分らしく生きるということなんだと私は理解しています。 そういう素敵な人生を歩んだ先人たちに憧れつつ、私もまた彼らの後を追っかけてゆきたいと願っています。
武士の心は「常在戦場」(演習の一コマ)
「無念!」さあ、ここからどうする?
「人生」✕「学問」を実現するには?