政経学部

チャオプラヤー川から市内を望む

市内アソーク交差点

今回、在外研究として、タイの泰日工業大学で研究する機会をいただいた。タイ生活は前職時代の平成25年以来９年ぶり、計10年になった。

生活に仏教が根付くタイは、「目上の人を敬う」「謙虚さ」など、日本人とも共通する価値観を持つ国民性もあり、日本企業の有力な進出先である。日系製造業の進出企業数は中国に次ぐ。これまでタイは製造業を中心とした外国投資をエンジンに成長を遂げてきたが、「若い国」というイメージとは裏腹に、生活が豊かになるに従い「少子高齢化」が進展、慢性的な労働力不足に陥り、経済成長も陰りを見せている。著しい賃金上昇も追い打ちをかけ、省力化・自動化は待ったなしである。

タイは2037年までの先進国入りを目指し、18年に「20年国家戦略計画」を打ち出した。その核が「タイランド4.0」である。今回の研究テーマは、第4次産業革命に向けたタイの産業構造転換と課題である。中所得国が高所得国入りを実現するに際し、タイ政府の取り組みを踏まえながら、構造転換上の課題や日本の貢献を研究する。

私が同大学に籍を置いたのは、産業高度化の中核人材を「日本型ものづくり実践教育」で育成し、まさにタイランド4.0を支える現場だからである。同大学の幹部は元日本留学生が大半で、日本の企業文化やものづくり精神を理解し、価値観を共有する知日産業人材の育成を目指している。

タイの産業高度化の現場で、国士舘卒業生も奮闘している。知己を得たランサン・マタロート氏（平成5年政経学部卒）は、矢崎総業タイ工場（タイアロープロダクツ社）工場長。テラデス・デマニ氏（平成7年工学部卒）は、自動車生産設備の保守・調達を担ういすゞテクノ（タイ）で総務部長を務める。飯田恭輔氏（平成11年政経学部卒）は、エレクトロニクス専門商社伯東で部品供給の面から製造業を支える。国士舘も人材育成の面からタイの産業を支えているのである。

国士舘では国際経済および経済開発の科目を担当しているが、間近に見た中進国タイの先進国入りの取り組みや国士舘卒業生の奮闘など、まさに現場での取り組みを、帰国後、国士舘の多くの学生に伝えていければ幸いである。