祝辞

学校法人国士舘 理事長　大澤 英雄

皆さん、ご卒業おめでとうございます。　　
学園を代表してお祝いの気持ちをお伝えします。
ご臨席いただいております ご家族の皆様にも併せて衷心より お慶びを申し上げます。

皆さんは本学で学問を修め、研鑽を積んでこられた結果、学士・修士及び博士と称する栄誉と称号を手にされました。今日の皆さんからは、一つの事を成し遂げたという達成感と自信が見て取れますが、国士舘で過ごした青春の一時期はどのようなものだったでしょうか。
私は此処におられる方の多くが入学された平成31年4月、入学式で皆さんに「数年後に社会に飛び立つ人間として、国士舘で自主性を確立させて欲しいとともに多くの語らいと発見を通して豊かな人間関係を築いて欲しい」と歓迎・激励の言葉を申し上げましたが、充実した学生生活が送れたでしょうか。
世界中が新型コロナウィルスに翻弄された時期と大半が重なってしまった皆さんの学生生活には、予期せぬ苦労や試練が多くあったことと思いますが、人は苦難を乗り越えることで大きくなります。今後、この体験は皆さんの人生で大きな力を発揮することになると確信しております。

さて、皆さんは、それぞれの学位を手にされ、これから新たな生活を始めるのですが、同時に長きにわたる学校生活の終わりを迎えます。これは皆さんの人生における大きな節目の一つといえるのだと思います。
現在、我が国においては大学教育が一般化傾向にあり、大学に学ぶこと自体、ごく当たり前という見方さえあります。しかし、皆さんにとって大学に学ぶ機会を得たことは、大変に貴重な体験であったことに間違いありません。コロナ禍における経済状況悪化や自然災害などの中、皆さんの大学生活を最後まで可能にして下さった方々に感謝の想いを忘れずに伝えて下さい。

そして今、この時に各自、実社会を生き抜くための心構えや目標を、確認しておく必要があります。進む道は皆さんそれぞれですが、一つ言えることは、どの道に進んでも甘いものではないということです。勿論、各自の進む先は、それぞれの夢や希望を実現する場なのですが、その一方で実社会の厳しさを知る場でもあるからです。
今後は、社会人としての目標をしっかり定め、それに向かい今まで学んで来た基本的な知識を役立て、自分の物として身につけていくという、新たな形の学びと努力の日々が始まります。
皆さんが今後、 自身の資質、能力を十分に発揮する努力をしなければ、大学で学んだ体験も無駄になってしまいます。仕事に就くこと、つまり働くことは、生きていくための糧を得る手段というだけではありません。組織の中で、自分の置かれた環境や与えられた条件に、どう対処するか、如何に工夫して前進していくかという力を養っていくことでもあります。
当然、そこに人格も現れます。実社会は本来の自分と向き合う「自分磨きの場」でもあり、そこには自分を成長させる力が潜んでいます。自分に何ができるのか、どうなりたいのか、その為に何をすべきなのかを考え、努力と工夫をじっくり重ねてください。

もう一つ、お伝えしたいことがあります。
人間が人間らしくいられるのは、他者との関りがあるからです。人は社会の中で、多くの人と多種多様な関係を結んでおり、孤立しては生きていけません。他者との関係が互いを支え合い、自分を育んでいるのです。人は皆、幸福を求めて生きていますが、人の幸・不幸に大きく影響を与えているのが周りの人との関係、つまり人間関係ではないでしょうか。 
皆さんには今後多くの出会いが待っているはずですが、その一つ一つを大切にして、誠意をもって対応すること、感謝することを心掛けてください。
自分の行為が「誰かを支えた」「誰かの役に立った」という喜びの気持ちこそが、国士舘精神の原点であります。これは人の幸せを自分の幸せとして生きるということです。国士舘の教育理念である四徳目の一番はじめに掲げている「誠意」、つまり真心は、まさに人格の基礎を成すものであり、誠意があってこそ、世のため人のために貢献できるのです。
感謝されることにやりがいを感じたり、人の役に立っている自分を誇らしく思ったりと、これは自己満足なのかもしれません。しかし、人を思いやることで感謝され、その人だけでなく自分も豊かな気落ちになるのですから、大いに結構です。
今、世界中が不安定な状況に直面していますが、こんな時だからこそ、皆さんには 「思いやりの気持ち」 を持ち続けて、豊かな人生を歩んでいただきたいと思います。

終わりになりましたが、卒業生を支えてこられたご家族の皆様に、この場をお借りして、大切なお子様を国士舘の教育理念に ご理解を頂戴し、本学に託していただきましたことに、 国士舘関係者を代表いたしまして、心から御礼を申し上げます。 有り難うございました。
最後に国士舘も皆さんの母校として、次の100年に向け、建学の精神を受け継ぎ、更なる発展へ向かうことをお誓いして私の餞のことばといたします。

令和5年３月20日