凛とした空気の法廷教室で私たちは裁判員制度をリアルに学ぶ。

 国士舘大学世田谷キャンパスの梅ヶ丘新校舎。ここのB305教室は、全国の地方裁判所の裁判員法廷と同じ造りになっている。正面に3人の裁判官と6人の裁判員の座る席があり、左手に検察官側、右手に被告人・弁護人側の席が設けられている。ここを使って私たちは、来春から新しくスタートする裁判員制度をはじめ、さまざまな法律の分野についてリアルに学び始めた。司法試験用の学びのために法廷教室を持っている大学はいくつかある。でも、学部の学生が、普段の授業で気軽に使える法廷教室があるのは、全国でも珍しいとのことだ。

 

 この新しい教室ができたときは、「たかが教室ぐらいで」と思っていた。でも、実際にここで授業を受けてみると、「法廷をリアルに再現していること」の意味が分かってくる。たとえば、一段高い裁判員席に座ると、心なしか教室の空気が引き締まる。ピンと張りつめた緊張感が漂うのだ。それは人を裁く立場の人間が負うプレッシャーなのかもしれない。裁判員制度では、自分の下した判断が、人の人生を大きく左右する。その裁判員制度の重みを、この教室でリアルに体感することができる。


 法律というと、どこか遠い世界のもののように思っていた。裁判官や検察官、弁護士など、ごく一部の人たちが難しい言葉を操り、物事の良し悪しを決めているものだと。でも、国士舘の法学部に入って、その考えはガラッと変わった。学ぶにつれ、法律が本当は生活に密着したものだということが分かってきたからだ。企業活動はもちろんのこと、コンビニで物を買うとき、車で道を走るとき、アパートを借りるとき、私たちの行動は常に法律によって規定されている。法律と日常はコインの裏表のようなもの。背中合わせになっていて、決して切り離すことはできないのだ。つまり、法律を学ぶことは社会を学ぶことであり、生きていくうえで最も大切な基礎知識を、私たちはこの学部で身につけている。
 そしてまた、法廷教室を使う授業で、私たちはときに被告人や弁護人、ときに検察官、あるときは裁判官や裁判員、そして被害者といったように、さまざまな立場に立たされる。立場を変えて物事を見ることによって、論理的に思考する能力が身につくのだ。それは冷静に客観的に物事を分析し、自分なりの考えを導き出し、裏づけとなる資料を集めて、根拠立てて相手を説得する力だ。


 もうひとつ、国士舘の法学部にはユニークな催しがある。それは「模擬裁判」と呼ばれる法律イベントだ。毎回設定されたテーマに基づき、シミュレーション形式の裁判を創作し、学生や一般の人たちに向けて公開する。裁判官、検察官、弁護人、被告人、それぞれの役回りをこなすのは、自発的にこのイベントに参加した学生たちだ。今年から、模擬裁判もこの法廷教室で行われることになった。与えられたテーマは「裁判員制度」。どのような内容になるのか、取り組む学生はいまから楽しみにしている。
 リアルな法廷教室で学ぶ価値。それは六法全書という書物の中の世界を、形あるものとしてより身近に体感できることにあると思う。法治国家である日本の社会では、すべての活動が法をルールとして営まれている。その社会で逞しく生きていくために必要な知恵と力を、私たちは今日、法律の学びを通して培っている。


第25回「模擬裁判」が開催されました。
桑原 未有希 法律学科4年生(栃木県/県立宇都宮女子高等学校)
高校時代、身近な人に起きた事に対する法的な経緯に疑問を持ったのが、志望動機です。法律は学んでいてとても面白いですね。法科大学院を目指して、将来は法曹界、企業の法務、法律関係の出版社などに勤めたいと思っています。去年の模擬裁判にはナレーション役で参加しました。一般の人にいかに法律を分かりやすく伝えるかに苦心したけれど、この経験は将来に活かしていきたいと思います。
原田 梨沙子 現代ビジネス法学科4年生(東京都/都立三鷹高等学校)
法学部に入ろうと思ったのは、社会人になる前の準備として、ビジネスに関することを学んでおきたかったからです。グローバル化する中で、生きた法律を学びたいと考えましたが、実際に消費者・家族・インターネットなどに関する幅広い法律が学べたと思います。この学部で学んだ事を活かして、将来はIT関係の企業などに就職したいと思っています。
佐々木 将臣 法律学科3年生(千葉県/東京学館船橋高等高校)
警察官である父の影響を受けて、法学部に進学しました。学んだ内容を家で父に質問したり、逆に父に質問されたり、親子で法律を勉強しています。刑事に興味があり、将来は警察を目指していますが、ゼミ旅行で刑務所と少年院を見学し、刑務官の仕事にも興味が出てきました。公務員試験に向かって、頑張って勉強したいと思います。
長妻 温子 現代ビジネス法学科3年生(東京都/桐ヶ丘高等高校)
先輩がこの学科にいたので、ここを志望して入学しました。現代ビジネス法学科の魅力は、基本的な法律や基礎を身につけながら、知的財産法なども学べるところです。また実務検定や行政書士などの資格獲得にチャレンジしています。在学中に資格が取れれば、将来はそれを活かして仕事に就きたいと思っています。
板東 佑樹 現代ビジネス法学科3年生(東京都/聖パウロ学園高等学校)
法学部を志望した理由は、社会に出る上で必要性が高い知識を得る事ができ、また人としての幅が広がると考えたからです。入学するまでは、法というものに全く詳しくありませんでしたが、実際に学んでみると、法律が身近な生活と深く関わり、また生活や人を支えるものだということが分かりました。将来は貿易関係の仕事に就くか、自分で起業したいと考えています。
加藤 龍大 法律学科2年生(千葉県/県立国分高等学校)
法律にも興味があったけど、教員も目指していたので、教育系の勉強もできる国士舘の法学部を志望しました。今は自分にとって何が最も良いのかを模索中です。法学部での学びはグループ発表をしたり、他人と色々議論をしたり、交流できるところがためになります。将来は、法律関係の知識をベースにして、人と接し、人のために何かしていく仕事がしたいと思っています。
加藤 美幸 法律学科2年生(千葉県/県立幕張総合高等学校)
法律の中でも特に刑法の勉強をしたくて、刑法ゼミに入っています。身近に起きた実際の事件に関心があるので、ゼミの内容も興味を持って学んでいます。将来の進路については幅広く、企業の法律関係の部門から法曹関係まで色々と希望を持っています。昨年、模擬裁判を見学して非常に興味深かったので、今年は自分も参加する予定です。
(学年は2008年7月時点)