東京日本橋にある「東京証券取引所」。ここでは連日、上場された企業の株取引きが行われている。頭上を飾る円形の電光掲示板に、次々と売買の成立した企業の名前と株価が現れる。まさに、日本経済の中心ともいうべき場所。この施設の見学などから、政経学部・経営学科・白銀ゼミの学びはスタートする。 このゼミを専攻する私たちは、いま、株価の予測を通して企業の価値とは何かを学んでいる。予測といっても、ギャンブルのように株価を当てるわけではない。論理的な手法を用いて企業の価値を分析し、そこから適正な株価を割り出すのだ。
 まず、題材として自分の好きな企業をひとつ選ぶ。次に選択したその企業の有価証券報告書や財務諸表、社長が掲げる経営方針など、さまざまなデータや情報を収集する。それを詳しく読み込むことから、企業が備えている底力、いわゆるファンダメンタルズを把握する。そして、「EVA」という企業付加価値を計る手法を用いて、適正と思われる株価を導き出していく。

 

 ここで問題なのは、自分が予測した株価が、必ずしも市場の株価と一致するとは限らないことだ。いや、むしろ違っていることの方が多いかもしれない。そして、まさにこの違いこそが、私たちの学ぶべきポイントとなる。自分の予測した株価と実際の株価、その差違をどう解釈するか。実際の株価が予測値より高ければ、なぜ高くなっているのか。低い場合は、なぜ低いのか。株価のギャップが生じている原因を探り、自分なりの考察を加えて、授業で発表するのだ。
 この発表で大切なのは、正解を出すことではない。授業を通して私たちが学ぶもの、それは自分なりに論理的に仮説を組み立てる方法と、その仮説をきちんと他人に説明するプレゼンテーション能力だ。なぜなら、実社会には絶対的な正解がないからだ。答えは与えられるものではなく、自らの手で探り、見出していくものであり、そこが高校生までの学びと異なるところだ。


 正直いって、ゼミの内容は簡単なものではない。財務諸表の読み方を学ぶのは骨が折れるし、エクセルやパワーポイントなどのパソコンソフトを使いこなすのも一苦労だ。しかし、頑張って付いていくだけの価値がこの授業にはあると信じている。企業とは何か、企業価値とは何か、その本質が面白いように分かってくるからだ。
 いま、世の中にある企業のほとんどは株式会社だ。私たちが将来勤める会社も、たぶん株式だろう。株を学ぶこと、それは日本経済そのものを学ぶことに他ならない。将来どの道に進むにしても、このゼミで学んだ内容や、論理的な物の考え方はきっと役立つに違いない。そんな前向きな予感を胸に抱き、私たちは今日も難解な財務データと格闘する。


3年生 岩崎 杏里(東京都/豊島学院高等学校)
いままで株に触れたことがなかったので、興味があって、学びたいと思いました。
他のゼミに比べて難しいと思うけど、絶対後で役に立つと思っています。
3年生 岡野 翔太(神奈川県/県立大和高等学校)
1年生のときに白銀先生の経営学の授業を受けて、とてもよさそうだったのでこのゼミを専攻しました。
内容はけっこう難しいけれど、面白いので頑張って学んでいます。
3年生 小橋 聖司(埼玉県/県立草加高等学校)
社会に出たとき、経済のことが分かるようになりたいと思って政経学部に入りました。将来は旅行業の方に進みたくて、いま、総合旅行業務取扱管理者の資格のための勉強をしています。
3年生 鐘 建林(中国福建省/福清市東張高校)
株に興味があったので、学校に入る前から白銀先生の授業を受けたいと思っていました。
卒業したら大学院に進んで、中国企業の東証への上場を助ける会社を経営したいと思っています。
3年生 宮本 真由子(東京都/国士舘高等学校)
株をやってみたいと思っているので、このゼミを専攻しました。いまはエクセルの操作に苦戦していますが、頑張ってオフィス検定を取ろうと思っています。将来は女社長になりたいです。
3年生 森下 涼子(東京都/国士舘高等学校)
2年のときにいろんなゼミを見学したんですけど、このゼミはみんないっしょけんめいだったので、専攻しました。内容は難しいけど、がっちり授業に付いていこうと思っています。
(学年は2008年6月時点)