学びのそのさきへ。ドキュメント国士舘

夢をあきらめない 国士舘大学
法学部 現代ビジネス法学科教授 飯塚 真 × 2018年度法学部卒業生 藤井 勇 法学部の向学 何事にも果敢に挑戦し、学ぶことの楽しさを法学部の4年間で身に付けた。

国士舘大学法学部の現代ビジネス法学科で学んだ藤井さんは、現在神奈川県にある信用金庫で営業職に就いています。中学・高校とずっとテニスに夢中だった藤井さんが、学ぶことの面白さを知ったのは、大学に入ってから。その学びは社会人になってからも続き、今は税理士の資格に挑戦中です。テニス三昧だった藤井さんが、なぜ学ぶことの楽しさに気づいたのか。ゼミの指導教員だった飯塚先生との対談を通して、法学部の学びの魅力についてご紹介します。

法学部の学びについて

編集部
飯塚先生は法学部の現代ビジネス法学科で、どんなことを教えてらっしゃいますか?
飯塚
私が担当しているのは、民法、財産法という分野です。民法は市民生活を規律する法律で、みなさんの生活している基本的なルールを定めています。それを学生と一緒に学んでいます。
編集部
専門のゼミでは、どのようなことを学ぶのでしょうか?
飯塚
ゼミで学んでいるのは裁判所の判例ですね。法律というものはどんなケースでも使えるように抽象化されていて、ちょっとつかみにくい。だから私のゼミでは、社会でそのルールが実際にどう使われているかを、判例を通して学んでいきます。
編集部
飯塚先生は、学部長もなさっていますね。学部長として大切にしていることはありますか?
飯塚
それは、学生ファーストということですね。国士舘大学を選んだ学生が納得して卒業できるような教育の提供を常に考えています。時代とともに学生のニーズも変わってくるので、ニーズに合ったカリキュラムが提供できるように毎年工夫してやっています。
編集部
藤井さんにお訊きしますが、なぜ国士舘大学に入ろうと思ったのですか?
藤井
私は小学校の頃からずっとテニスをやっていて、大学もテニス部があるところに行きたいと思っていました。私が受験する頃に、ちょうど国士舘大学のテニス部が強くなってきて、人から誘われたこともあって、それで国士舘大学を目指しました。
編集部
その中で、特に法学部を選んだ理由はありますか?
藤井
はい、あります。正直いって、私はずっとテニスをやっていたので、学力にあまり自信がありませんでした。法学部なら、高校でやった勉強に関係なく、ヨーイドンで一から学べるかなと思って。大学に入ったことを機に、勉強を頑張ろうという思いがありました。
飯塚
実は、私が高校生に法学部をお勧めする理由もそこにあります。法律の学びは、高校までのカリキュラムに入っていません。みんな大学に入ってから学ぶ。だから、どんな人でも同じスタート地点に立てるんです。それまでの学びをリセットして頑張れる。その上、法学部は卒業後につぶしがきくという社会からの評価もある。アドバンテージが高いんですよ。
編集部
「つぶしがきく」とはよく言われる言葉ですが、どういう意味なんでしょう?
飯塚
「つぶしがきく」というのは、さまざまな形で役に立つという意味じゃないかと思いますね。藤井くんは会社で営業をやっているんだっけ。
藤井
はい、今は信用金庫で営業をやっています。
飯塚
例えば、営業職というのはクライアントの抱えている問題を解決する仕事ですよね。解決策を提示して、お客様にプレゼンをする。そのためには問題解決能力と、プレゼンするための論理構成力が必要です。「こうした方がいいですよ」と提案すると「何で?」と訊かれるから、その「何で?」に説得力のある文脈で応えなければならない。その力が法律を学ぶことで培われるんです。もともと法律の世界は問題を解決するためにあるわけですから。
編集部
なるほど。論理的に問題を解決する力が、法学部の学びで身に付くということですか。
飯塚
そうなんです。社会に出ると営業というセクションはどの会社にもあるし、そもそも会社自体がいろいろ問題を抱えているわけで。だから企画でも管理でも、どんな部署でも問題解決能力は役立つわけです。法学部ではそのための訓練をずっとやっているので、法学部を卒業すると出口が広いわけですよ。それが「つぶしがきく」という言葉で表現されているのだと思います。だから、法学部は就職にも強いですよ。
編集部
藤井さんは、実際に法学部で学んでみていかがでしたか。授業は面白かったですか?
藤井
面白かったですね。法律は高校までまったく学んだことのない分野だったので。特に飯塚先生の授業は、実生活に喩えて教えてくださるので、イメージが湧きやすいんです。君たちは何気に毎日電車に乗って通ってくるけど、その裏にはちゃんと法律に基づく契約があるんだよとか。学んでいて楽しかったし、新鮮でしたね。ただ、判例などを授業で読むことが多いのですが、法律の言葉って堅いというか、分かりにくいんですよね。そこがちょっと大変でした。
飯塚
そうですね。市民のための法律なのに、一般の人が読んで分かりづらい文章になっているのは問題だということは言われています。
藤井
私は今、税法を勉強しているんですけど、思いますよ。一般の中小企業の社長さんが、これを読んで分かるのかなって。
飯塚
たぶんそれを通訳する人が、法学部の卒業生ということになるのでしょうね。法律の細かい部分はいいんですよ。法律は一つのシステムなので、そのシステムについて慣れて、法的なセンスを身に付けるのが、法学部での4年間の学びだと思います。社会は法律に基づいて動いているので、悩みや問題にぶつかったとき、法学部で身に付けたセンスが答えを教えてくれます。
藤井
あとは調べる能力みたいなものも、大学の学びで身に付きましたね。困ったときに、どこを当たって調べればいいかが分かるようになりました。

今の仕事に生きる学び

編集部
藤井さんは仕事をされていて、大学の学びが役立っているなと感じることはありますか?
藤井
ありますね。普段、何気なくやっていることが、何に基づいてやっているのだろうということを考えるようになりました。
編集部
それはどういう意味ですか?
藤井
いつもの仕事で、「これやっておいて」とか「ここに名前を書いて」みたいな形式的な業務がありますよね。そういうときに、これをやる意味は何に基づいているんだろうかと、考えるようになりました。理由があるから署名や捺印をもらう必要がある。今思えば、大学のときにそれを学んでいたんですね。
飯塚
藤井くんの仕事は金融なので、いろいろ書類がありますよね。これについては捺印が必要とか、不要とか。多くの人は恐らく深くは考えないでしょう。でも、疑問を持って調べていくと、その理由が分かってくる。そうすると社会はこうやって動いているんだということに気づかされるんです。
藤井
例えば金融機関で口座を開設するとき、1円でいいからお金を預けてくださいと言われるじゃないですか。大学の授業でやったときはぼんやり聞いていただけなんですが、信用金庫で働いてみて、その理由が分かりました。消費寄託契約というのがあって、それに基づいて行われていることなんですね。
飯塚
消費寄託は預ける契約なので、何かを預けないといけない。ホテルのクロークに荷物を預けるのと基本的には同じ分類の契約です。物を預ける行為がないと成り立たないので、1円でもいいから預けるということになっています。今は法律が改正になってちょっと違っていますが、考え方はそうですね。
藤井
そういうことが分かってくると、お客様に噛み砕いて分かりやすく説明することができるようになります。そういうところは、大学の学びが今の仕事にめちゃくちゃ役立っていると感じますね。法学部でそういう勉強をしてきましたから。分からないことを調べて、それで自分が成長して、その成長がお客さんのためになる、という感じです。
飯塚
大学ではそのための準備をしていたんだよね。自分で疑問に思うことを調べて、成長していく。それをお客さんや周囲の人に還元していく。するとまた新たな疑問が出てきて、また調べて、自分が成長していく。そういうサイクルに入って行くために、4年間の学部での学びがあるわけです。
藤井
なるほど、そうだったのかぁ(笑)。
飯塚
法学部というと法律家をイメージする人が多いけれど、弁護士や司法書士など、法律の専門家を目指す人はごく少数で、ほとんどの学生は民間の会社や行政などに就職します。だから大切なのは法律の知識ではなく、法的な思考のセンスなんです。法律は一定のコンセプトに基づいて作られているので、そのコンセプトについて疑問に思い、調べて、成長していく。そして、その成長に基づいてまた疑問を持ち、調べて、成長していく。そういう学びのサイクルを大学時代に身に付けることが大切で、それがあればどんな会社に入ってもちゃんとやっていけますね。
編集部
藤井さんは、卒業論文はどんなテーマで書かれたのですか?
藤井
卒業論文ですか? ええと、何でしたっけ。よく覚えてないんですが。
飯塚
あれでしょ、貸金業についてだよ。私の記憶によるとね(笑)。
藤井
ああ、そうでした。貸金業について書きました(笑)。
飯塚
昔、日本は自殺者が多くて3万人を超えていた時代がありました。そのときに大阪の方である事件が起きた……。思い出した?
藤井
思い出しました。三人の高齢者が踏切で自殺するという事件ですよね。自殺の原因がヤミ金融に手を出したことで、借りたお金は数万円だったのに、100%以上の金利が付いて返せなくなった。それで三人とも自殺したんですが、社会にインパクトを与える事件だったので、消費者金融に対して社会がネガティブな評価をするようになった、そんな話でしたよね。
飯塚
そうそう。もともとは裏社会のヤミ金の話だったのが、あまりにもインパクトがあったので表社会の議論に移ってきた。そして、法律で定められたルールに則って登録をしている消費者金融までが叩かれるようになってきた、そんな内容の論文だったね。
藤井
そのときは確かもう今の会社から内定をいただけていたんですよ。だからどうせ論文を書くなら、実務に生きるものを書こうと思って消費者金融をテーマにしました。思い出しました(笑)。

税理士の資格を目指して

編集部
先生にお伺いしますが、大学時代、藤井さんはどんな学生でしたか?
飯塚
藤井さんはおもしろい人でしたよ。いつも明るく、ゼミ長をやってみんなを引っ張ってくれました。合宿なども仕切ってくれましたね。そういえばゼミ合宿の日の午前中もテニスやってきたよね(笑)。
藤井
そうですね。練習してから合宿行きました(笑)。
編集部
藤井さんは、大学でもテニスを続けていたのですよね。
藤井
はい、部活でテニスをやって、副主将も務めさせていただきました。
編集部
勉強と部活を両立させるのって、大変じゃなかったですか。
藤井 
そうですね。授業を受けるキャンパスとテニスコートのあるキャンパスが違うので、そこの移動が大変でした。私はよく早朝に練習して、シャワーを浴びてそのまま教室で授業を受けて、また夕方にコートに戻ってきて練習する、そんな日が多かったですね。いま思えば本当に充実した、あっという間の4年間でした。
飯塚
ゼミにもラケットを持って来たよね。バッグが大きいんですよ、ラケットがいっぱい入っていて。
藤井
そうですね。梅ヶ丘のキャンパスでは浮いてましたね(笑)。
飯塚
彼はリーダーシップを取るタイプだったので、ほんと私も助かりました。でも、その分、就職活動のスタートは遅れましたけどね。
藤井
いや、あのときはもう、飯塚先生に本当に助けていただきました。ずっとテニスしかやってなかったので、進路に悩んでいたんです。これ、今でもはっきり覚えているんですけど、授業の後に先生に相談しに行ったんですよ。おすすめの就職先はありますかって。そうしたら先生が、銀行なんて面白いと思うよといってくださった。そこから金融関係の会社を調べてみて、あ、面白いなって思うようになったんです。
編集部
具体的には、どのあたりが面白いと思われましたか?
藤井
それまで銀行って窓口のイメージしかなかったのですが、調べていくうちに、融資を通じていろんな業界に携われることが分かってきました。貸すときは当然その業界について知らないとまずいから。そうするといろんな業界について知ることができる。これ、すごく面白いなと思って。あと、住宅ローンとかマイカーローンとか、個人のローンの知識も増えるので、友人や家族のためにその知識が活かせるんじゃないかと。先生からいただいた「銀行面白いよ」という言葉、本当に面白いと思うようになって、今の会社に入りました。
編集部
信用金庫では、どのような仕事をされていますか?
藤井
営業ですね。主に法人営業ですので、お得意先を回ることが多いです。最近どうですかとかお尋ねしながら。このところ物価が上がっているじゃないですか。建設業界の中小企業などは、木材の仕入れ値が上がった分を価格転嫁できないで困っています。それでお金を一時的に借りたいとか、そういうニーズをお伺いして回っています。お話を聞いて、何か課題解決のお手伝いができないかなといつも考えています。
飯塚
信用金庫は中小企業や零細企業が対象なので、経済の体温を一番感じられるところにいるんですよね。最近は事業承継の後継者探しとかでも信用金庫は頑張っていますね。
編集部
いまのお仕事は楽しいですか?
藤井
はい、楽しいです。いろんな業界に詳しくなれますし、今は先生がおっしゃった事業承継や相続、保険、不動産、資産運用などについても勉強しています。勉強しておかないと、お客様に説明できないので。当然資格も取るんですけど。
編集部
どんな資格をお持ちですか?
藤井
一昨年、CFPというファイナンシャルプランナーの資格を取りました。
飯塚
すごい、すごい。CFPを取っていたらもうプロですよ。
藤井
それから税理士の免許も取りたいと思って、今、MBA(経営学修士)を取るためのオンラインの大学院に通っています。税理士になるためには、税法3法と財務諸表と簿記の5科目受かる必要があります。MBAの大学院で修士論文を書いて国税庁が認めると、税法の2科目が免除になるんです。それを狙って通っています。
編集部
すごい。勉強家ですね。
藤井
気がついたら、そうですね。高校までは勉強嫌いで、テニスばっかりやっていたのに(笑)。
編集部
その頑張りのモチベーションはどこから来るのですか?
藤井
たぶん、自分は知らないことを知れるようになることが好きなんだと思うんです。自分の中できのうよりも一個成長している姿を作りたい。知らなかったことを学び、学んだことで成長し、それをお客様に還元する。自分が成長することによって、周りにいる人の力になれる。それがすごく楽しくて、はまりますね。
編集部
会社でもテニスは続けているのですか?
藤井
はい、会社でもテニス部に入っています。横浜市の実業団に登録していますが、実業団は1部から5部まであって、うちは去年から部活が始まったので5部からのスタートでした。でも、ちょうどきのう入れ替え戦があって、勝って4部に上がれました。
飯塚
おー、それはおめでとう!
藤井
ありがとうございます。
編集部
先生、今日はいかがでしたか。久し振りに卒業生の藤井さんとお会いして。
飯塚
いや、もう、すばらしいの一言ですよね。さすがは飯塚ゼミのOBだな(笑)。
藤井
先生の教えがあってこそだと思っています(笑)。
編集部
本日はありがとうございました。

飯塚 真(IIZUKA Makoto)

国士舘大学 法学部 現代ビジネス法学科 教授 法学部学部長
●修士(法学)/早稲田大学 法学研究科 博士課程 研究指導終了退学
●専門/民法

藤井 勇(ふじい いさむ)

2018年度卒業
横浜信用金庫勤務

掲載情報は、2023年のものです。