学びのそのさきへ。ドキュメント国士舘

夢をあきらめない 国士舘大学
政治行政学科  古坂 正人 × 卒業生  神子島 大稀・水石 貫太・齋藤 優衣 政経学部の切磋 公務員試験を突破できたのも、同じ仲間とともに学び合える環境が学内にあったからだ。

今回は国士舘大学政経学部政治行政学科を卒業した3名の方にお集まりいただきました。3名とも古坂先生のゼミの出身で、今は公務員として活躍されています。国士舘大学の政経学部には、教員による「公務員相談室」や、学生の自主的な勉強会「公務員塾」など、公務員志望の学生を応援するさまざまな取り組みがあります。互いに励まし合い、切磋琢磨しながら、難関試験に合格した卒業生の話を通して、公務員を目指す学生へのサポート体制についてご紹介します。

大学での学びについて

編集部
今日お集まりの3名は、みなさん政治行政学科の卒業生ですよね。今はどのようなお仕事をなさっているのですか?
神子島
私は今、茅ヶ崎市役所で、幼稚園の無償化に関する業務を担当しています。市民から申請をお受けし、認定して、無償化部分を幼稚園側にお支払いする仕事です。
齋藤
私は豊島区役所で、国民健康保険に加入される方の手続きを担当しています。加入者の資格の有無を判断したり、保険料の通知を送ったり、保険証の発行などをしています。
水石
私は甲府市役所に勤めています。固定資産の税金の徴収や、税額の証明書を発行したりしています。
編集部
3名とも古坂先生のゼミ出身ですよね。古坂先生のゼミでは、どのようなことを学ぶのですか?
古坂
私のゼミは、専門分野でいえば政治学、行政学になります。その中でも公共政策について、「社会連携」ということをキーワードに学んでもらっています。
編集部
社会連携とは、どういうことでしょう。
古坂
世の中には、行政の力だけでは解決しえない課題があります。それを解決するには、市民や企業の協力が必要です。それぞれ考えや立場の違う人が、どうやって同じ方向を向いて連携していくか。一つはその調整の仕方ですね。また、そういう連携をいかに継続的に推進していくか。社会連携のマネジメントをキーワードに、理論と実践の両面で学んでいきます。
編集部
座学の学びと実際の経験、両方が大切ということですね。
古坂
そうです。そのために公務の現場にある社会課題を教室に持ち込んだり、逆に教室から外に出て、学生ならではの感覚で地域の課題解決に貢献できないかといったことを模索しています。古坂ゼミは公務員志望の学生が多いので、なるべく現場に出向いて、政策ベースで考えることをやっています。
編集部
具体的にはどのようなことを行っているのですか?
古坂
2017年に本学と埼玉県の八潮市との間で包括連携協定を結び、翌年から「社会連携プロジェクト」という名前で活動を始めています。本学の政経学会が中心となり、大学と行政がタッグを組んで、社会連携を行うための政策プレゼンテーション大会を実施しています。これには政経学部の複数のゼミが参加しています。行政の現場に学生が出ていって、課題を見つけ、それに対する解決策を提案するコンテストです。
編集部
面白そうな取り組みですね。学生にはいい学びになるのではないですか。
古坂
そうですね。ゼミの3年次の取り組みですが、学生には現地に行ってもらって、課題を抽出し、政治学や経済学などの各ゼミの専門分野に応じてどういうアプローチで解決できるかを、大学生ならではの視点で考え、自治体にプレゼンテーションします。神子島くんはちょうどプレゼン大会の1回目に参加したよね。
神子島
はい、自分は1回目に参加しました。
古坂
彼の時は八潮市との取り組みがスタートしたばかりなので、市と大学との調整などが特に大変でした。「八潮メセナ」という市民文化会館の大きなホールで、市長や市議会議員、市役所の方々のいる前で、プレゼンしたよね。
神子島
緊張しましたね。でも、実際に行政の職員の方と話す機会があり、行政の方が求めていることを知れたのが、すごく学びになりました。プレゼン大会の運営も手伝わせていただいて、現場が何を求めているのかを肌で感じられました。公務員試験を受ける前に、それを体験できたのは大きかったですね。
古坂
華やかなのはプレゼンの舞台だけど、そこに至るまでには、事前の準備が必要です。説明会やポスターの作成など、いろんな雑用があります。そういうことも全部ゼミ生に担ってもらっています。公務員はどちらかというと裏方的な仕事が多いので、こういう準備もいい経験になると思います。
編集部
齋藤さんと水石さんも、3年生のときに参加したのですか?
齋藤
はい、私も水石くんと一緒に参加しました。
古坂
うちのゼミは基本、全員参加です。齋藤さんはイラストを書くのが得意で、デザイン力を活かして大会のポスターを作ったりしたよね。水石くんは、プレゼンの発表者として頑張ってくれました。
水石
僕もめちゃめちゃ緊張しました(笑)。
古坂
今こそちゃんとしたプロジェクトに見えますが、当初はこちらも試行錯誤で、どうやればこれが学生の学びにつながるのか分からないまま進めていました。1年目の学生には相当大変な想いをさせてしまったと思います。こっちも一杯一杯なので、プレゼン前の準備のときに、真剣にぶつかりあったりしてね。僕がこうするといいよというと、神子島くんが、それは違いますよって言って意見が衝突して「バトル」を経験したりして。
神子島
ええ、そんなこと言いましたっけ?
古坂
バトったまでは行かないか(笑)。でも、僕としては学生に、こういう機会に熱量みたいなものを感じてもらいたくて。世の中、なんでもすんなりと物事は運ばないので。
神子島
自分が担当したのは質疑応答のパートだったので、全体の流れを全部把握した上で、どういう質問が出て来そうかを事前に想定したりしていました。
古坂
大きな舞台で、市長が目の前にいてね。プレゼンに対して市長が直接質問してくるので、それに一所懸命答えている学生を見て、こっちはもう感激しているんですけど。でも、前日にはバトってるっていうね(笑)。
神子島
大変いい経験になりました。はい。

公務員を目指して

編集部
今日お集まりいただいたみなさんは、なぜ国士舘大学の政経学部に入られたのですか?
神子島
自分は大学に入る前から、漠然と公務員になりたいと考えていました。大学案内のパンフレットを見たとき、確か政治行政学科が公務員試験に力を入れているということが書いてあったような気がして、それで本学を志望した記憶があります。
齋藤
私も同じで、高校生のときから公務員になりたいと思っていました。で、公務員に強い大学をいくつかピックアップして、オープンキャンパスも見に行って。そのときに古坂先生とお話しさせていただいたんですよ。それで、こういう先生もいるんだぁと思って、国士舘に決めました。
編集部
こういう先生って、どういう先生ですか(笑)?
齋藤
他の大学のオープンキャンパスも見たけれど、国士舘大学は、先生と学生の距離が近いなと感じました。公務員はこうやって目指せるよ、みたいなことを気軽にお話しくださって。私は勉強ができないので、周りの仲間と一緒に頑張れる環境が自分には向いているかなと考えて、国士舘を選びました。
古坂
勉強ができないって、さらっと自分から言えるのが、齋藤さんの強味なんですよね。
水石
僕は両親が二人とも市役所の職員で、自分も中学生ぐらいから行政の職員になりたいと思っていました。で、部活の顧問の先生に相談したら、国士舘大学の存在を教えてくださって。公務員試験に特化したカリキュラムがあって、公務員の就職率も上位だったので、国士舘大学に進学したいと思いました。
編集部
政治行政学科に入ってくる学生は、公務員志望者が多いのですか?
古坂
そうですね。政経学部の1年生を対象にしたアンケート結果をみると、卒業後の希望進路としてだいたい40%ぐらいが公務員を志望しています。
編集部
政経学部としては、どのような形で公務員志望の学生をサポートしているのですか?
古坂
一つは、ここにいる3名も参加していた「公務員塾」というのがあります。公務員塾は学生の自主的な勉強会で、いわばサークルみたいなものですね。週に一回、学生同士で集まって、筆記試験の勉強や面接の練習をしたりしています。夏場には合宿もやりますね。公務員塾は3年生から参加できますが、他のゼミの学生も一緒なので、ゼミ間の交流の場にもなり、互いに刺激を与え合っています。
編集部
同じ志を持つ仲間が集まっているのですね。
古坂
そうですね。公務員試験の勉強はなかなかハードルが高いので、モチベーションを維持するのが大変なんです。公務員塾では、同じ公務員志望の仲間が集まって、互いに励まし合い、高め合いながら学んでいます。問題の解き方や勉強の仕方も学べますし、何より週に一回集まることで、継続的に学ぶ習慣が身に付きます。公務員を目指す人にとっては、すごくいい場になっていると思います。
編集部
他にはどのようなサポートがあるのですか?
古坂
「公務員相談室」というものがあります。政治行政学科の教員が協力して開いているもので、1年生から4年生まで、公務員志望の学生が気軽に相談にできる体制を取っています。
編集部
学生からはどのような相談がありますか。
古坂
1年生や2年生は勉強の仕方を教えてほしいみたいな相談が多いのですが、4年生になると、面接練習や小論文の添削をしてほしいといった相談が多くなりますね。この他にも政経学部では、1・2年生を対象にした「公務員試験対策入門講座」というものを開き、公務員予備校の講師を招いて試験対策を行ったり、合格した先輩の体験談が聞ける「公務員&キャリアガイダンス」などもあります。さまざまな角度から総力をあげて、公務員志望の学生をサポートする体制を整えています。
編集部
試験勉強の途中で、挫折する学生さんもいるのですか?
神子島
はい、いますね。学年を経るごとに仲間がどんどん減っていきます(笑)。
古坂
そうですね。公務員試験は勉強する範囲が広いので、なかには挫折するケースも出てきますね。最近は筆記試験もですが、人間性を重視するために面接試験に力を入れる自治体が増えています。専門的な知識の上に、共感力とか企画や運営力、忍耐力みたいなものも問われるので、試験としては難しい部類に入るでしょう。それだけに、ともに学び合える環境を用意することが大切だと思っています。

仲間がいたから頑張れた

編集部
古坂先生から見て、3人はどのような学生さんでしたか?
古坂
神子島くんは優秀な学生で、やる気がすごくありました。八潮市との社会連携以外にも、東京都の2040年代の未来を見据えた長期戦略策定に向けた意見交換会にも参加したり、また子ども食堂に関心があって、世田谷にある子ども食堂でボランティアもしてましたね。
神子島
子ども食堂には、公務員の筆記試験が始まる直前ぐらいまで行っていました。子どもと一緒に遊んだり、ご飯を食べたり、親御さんと話ができたりで、すごく楽しかったです。
古坂
齋藤さんは、もうコミュニケーション力が「バケモノ」級に高い人ですよ。人を巻きこんで、自分のペースに持っていくのがうまい。公務員試験でいえば、面接はまったく問題なし。ただ、面接に行くまでの筆記をどうクリアするかが課題だったよね。
齋藤
はい、私は勉強が全然だめなんで(笑)。
古坂
普通の基準でいえばちゃんとできてるんだけど、本人は自信がないって言うんだよね。
齋藤
いや、ほんとにできないんですよ。国士舘大学を受けるときも、面接と小論文で受かりましたから。本当に人生で勉強をしたことがなくて、ずっと勉強から逃げてたんです。だから、公務員試験の勉強はとても大変でした。
古坂
水石くんは、どっちかというと勉強は得意だったよね。
水石
まぁ、筆記は割と自信があったんですけど、自分は面接が苦手でした。人と話すと頭が真っ白になっちゃうんです。最後の甲府市役所の試験のときも、集団面接があったんですけど、齋藤さんたちがわざわざ自分の練習のために来てくれました。
古坂
水石くんのときは、齋藤さん以外にも、ゼミのメンバーが何人か行って、面接練習を手伝ったよね。
水石
はい、図書館の部屋まで借りて、自分のために面接の練習をしてくれました。本当に助かりました。
齋藤
水石くんと私は、まったく逆なんですよ。水石くんが私に勉強を教えてくれて、私が水石くんの面接練習を手伝って、お互いに助け合いました。
古坂
いいですよね、こういう仲間って。水石くんはゼミで「社会連携プロジェクト」に取り組むときにみんなを引っ張って、かなり大変だったと思うんです。プレゼン大会の提案内容をとりまとめる際にゼミ生同士の意見が合わなくて対立したときも、水石くんは自己犠牲の精神でやってきたので。そういうところを周りの人は見ているんですね。水石くんの公務員試験の合格をみんなで喜んでいました。
齋藤
水石くんは、やさしさの塊なんですよ(笑)。
古坂
学生同士お互いにうまく補完し合いながら、足りない部分をカバーし合って、それぞれの個性をうまく引きだしていけば、目標や夢はきっと叶うと思うんですよね。
編集部
公務員試験を受けるのに、仲間は大切な存在ですね。
古坂
そうですね。齋藤さんと水石くんもそうだけど、神子島くんの代のゼミ生もすごく仲がよかったよね。一緒にずっと励まし合いながらやっていた。そういう仲間がいるのは心強いよね。
神子島
公務員試験は長期戦なので、どうしてもやる気にムラが出てくるんですよ。一緒に頑張れる仲間がいると、モチベーションが保てますね。
編集部
学生さんから見て、古坂先生はどんな先生でしたか?
神子島
先ほど齋藤さんもおっしゃっていましたが、生徒との距離の近い先生ですね。自分は割と言うことを言ってしまうタイプなので、それも許容していただけたのがありがたかったです。ちゃんと話を聞いて、受けとめてくださって、その上でこうなんじゃないのとアドバイスしてくださる、懐の深さを感じました。
古坂
学生から言われたときはこっちもカチンと来るんですけどね(笑)。後からちょっと言い過ぎたかなと思ったりして。でも、こっちが真剣にならないと学生も真剣にならないので、熱量は常に高くありたいと思っています。
齋藤
私は、学生のことをいつも第一に考えてくださる先生だなと思っていました。ご自身の研究やご家庭もあるのに、「こんなプロジェクトやらない?」って、気軽に声がけしてくださったりして。
水石
いつも僕たちのことを気に掛けてくださって、先生には感謝しています。特に就活のとき、自分はいくつか面接で落ちてしまったんですけど、「大丈夫、次頑張ろう」と言って励ましてくださいました。最後に甲府市役所に合格したときも、すごい笑顔でおめでとうと言ってくださって。自分としては心の拠り所になっていました。
古坂
僕としては、ゼミを学生がいつでも帰ってこられる場所にしたいと思っています。卒業しても、「近くに来たので顔出していいですか」みたいに気軽に寄れる場所に。ゼミ生同士の横のつながり、現役生とOBOGの縦のつながり、どっちも大切にしたいという思いがあって、今日ここにいる卒業生たちは、ネットワークの横も縦も両方の中核になれる人材なのかなと思っています。
編集部
先生も含めて、ゼミが一つのチームになっている感じがしますね。
古坂
そうですね。今後は大学での学びを糧に、公務の場でそれぞれの持ち味を活かして活躍してくれることでしょう。みんなのこれからが楽しみですね。
編集部
今日はありがとうございました。

古坂 正人(KOSAKA Masahito)

国士舘大学 政治行政学科 准教授
●政治学修士/東京大学大学院 人文社会系研究科 社会文化研究専攻 社会情報学専門分野 博士 単位取得満期退学
●専門/政治学・行政学

神子島 大稀(かごしま だいき)

2019年度卒業
茅ヶ崎市役所 こども育成部保育課

齋藤 優衣(さいとう ゆい)

2022年度卒業
豊島区役所 区民部 国民健康保険課 資格・保険料グループ

水石 貫太(みずいし かんた)

2022年度卒業
甲府市役所 企画財政部 課税管理室 資産税課 証明係

掲載情報は、2023年のものです。