「今日渡った橋は明日も大丈夫」とは限りません。我が国においては、戦後の高度経済成長期に数多く造られたインフラの老朽化が進み、これに起因する事故が多発しています。その一方で、少子高齢化で技術者も予算も不足し、社会基盤はとてもサステナブルとは言えない、危機的な状況を迎えています。当研究室では、橋梁やトンネルといった既存のインフラを低コストで安全に、長く使うための維持管理技術やシステムの研究開発や、今後新たに整備するインフラを出来るだけメンテナンスフリーで、長寿命となるための材料や構造、施工法の実験研究などを、自治体や企業と一緒に行っています。また、自治体や企業との協働や現場見学を通じ、これからの社会基盤を支えるための即戦力となる技術者の育成に、力を入れています。


研究分野における現在の問題点や関心事、見解など
2012年に中央高速道路笹子トンネルの天井板落下事故が発生し、9名の尊い命が失われました。これがインフラ維持管理の在り方に関する転機となり、道路構造物の5年に1回の定期点検が法制度化され、より手厚い保全業務の遂行が求められています。しかし国家予算における公共投資額は、90年代後半のピーク時から10年程度かけて既に半減されており、それに応じて建設業界の従業員数も、管理者である自治体の担当者数も減少してしまっているため、予算も技術者も足りていません。このため、健全なインフラに基づく安全でサステナブルな社会基盤を維持するためには、予防保全の推進によるライフサイクルコストの低減や予算の平準化、安価で簡易な点検手法や補修補強工法の開発が求められています。また、新設構造物に関しても、出来るだけコストのかからないメンテナンスフリー化や長寿命化が必要です。
主な研究テーマ①
長寿命化に資する建設材料や施工法の研究
疲労耐久性の高い軽量コンクリート床版、塩害や中性化に対する耐性の高い複合コンクリートや表面処理剤、施工の省力化に資する最適なコンクリート表面品質確保手法、環境性能の高い舗装材料などについて、企業と共同で研究開発を行っています。


主な研究テーマ②
簡易かつ安価な道路構造物維持管理手法の研究
自治体や企業と協働で、維持管理費の低減に資する各種検討を行っています。小規模橋梁を対象とした簡易な装置による精度の高い目視点検手法、簡易プログラムを用いた画像解析による舗装のひび割れ定量化、レーザースキャナを用いた擁壁の変状解析、モニタリングによる橋梁の健全性確認手法など、実用性が高く、早期社会実装可能な技術の確立を目指しています。

その他研究テーマ
即戦力となる技術者の育成として、新材料を用いた各種実験、現場見学、橋梁点検、被災地調査などを行っています。



地域連携・社会貢献活動
GIS橋マップの整備
日本大学工学部で始められた「橋守活動」に賛同し、主に青梅市が管理する橋梁の自主点検を行った結果や前述の各種検討結果について、無料のGISマップにまとめて担当者と共有を図り、維持管理業務の一助となるべくデータを蓄積しています。

研究室・ゼミ活動
橋梁やトンネルの建設や維持管理の現場、生コンや二次製品などの工場、研究所、研修センターなどの見学、橋梁の点検デモなど、学外活動を中心に活動しています。また、希望に応じて各種資格試験の対策講座なども適宜開講しています。
所属学生の卒論・卒研のテーマ、キーワード(一例)
研究テーマの例
【修士論文】
・無料公開アプリケーションを用いた低コスト道路舗装ひび割れ評価システムの構築に関する研究
・地方自治体における橋梁のライフサイクルマネジメントに関する研究
・複合コンクリートの塩化物イオン浸透速度に関する実験的研究
【卒業研究】
・膨張材併用軽量 RC 床版の疲労特性に関する基礎的研究
・締固めおよびその後の養生がコンクリートの表層に及ぼす影響
・橋梁アセットマネジメント民営化の実現性検討
・高剛性アスファルト上層路盤の中温化技術の適用検証
所属学生の卒業後の進路
【主な就職先】建設会社、設計コンサルタント、高速道路関連会社、鉄道関連会社、公務員、インフラ関連公社、他(どこも技術者不足で、引く手アマタです)
【推奨資格】土木施工管理技士(1級、2級)、技術士補、土木学会認定技術者、他
教員メッセージ
規模の大きな社会貢献や、地図に残る仕事を、皆で協力して成し遂げることにやりがいを感じられる方、ぜひまちづくり学系で学んでください。日本の社会基盤を支えて、安全安心な市民生活を守る縁の下の力持ち、若い力が求められています。

