ブックタイトル国士舘史研究年報第8号

ページ
169/220

このページは 国士舘史研究年報第8号 の電子ブックに掲載されている169ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

ActiBookアプリアイコンActiBookアプリをダウンロード(無償)

  • Available on the Appstore
  • Available on the Google play
  • Available on the Windows Store

概要

国士舘史研究年報第8号

国士、海を渡りて167地区には他にも二段ベットだけを設備した宿泊所B3があり三〇名の宿泊が出来た。B1の裏手を上がって行くと日系人の使用人ネルソンと家族が住む住居があった。専任料理人が住込みで雇われるまで支部職員は使用人ネルソンの妻に内々の契約で昼食と夕食を作ってもらいネルソンの家で食事をしていた。A地区には武道体育館と体育館裏手に支部職員用住居A1があった。A1は3LDKで、各支部職員が入れ替わりで宿泊した。使用人支部には地区ごとに使用人家族が四家族住んでおり、芝生・道路整備・建物の補修等の作業を行っていた。使用人達は陽が昇る前には自宅の鶏や畑の世話をして、七時ころには作業に入っていた。午前中に一回休憩をとり、昼休みは昼食前に池で釣りなどをして昼食を入れて二時間くらい休憩する。午後の作業が終わると釣りをしたり狩りに出かけたりして、夕食後暗くなると寝るという太陽の動きに合わせた生活をしている。この地域にはいろいろな動物が棲息し、支部敷地内を出入りしており、ときどき使用人たちは仕事が終わると狩りに出かけていた。使用人たちは年に数回、休日を使ってカピバラを狩りに出る。子豚くらいの大きさでネズミ科に属するという。彼らにとっての狩りは商売目的ではなく生活の一部となっており、食用は勿論、毛皮の利用から煮込んで摂った油は特効薬として家で保存され、塗り薬、飲み薬として重宝される。一度、使用人頭マニエルの家の前で大きな鍋でカピバラを煮込んでいるところを見た事がある。大体このカピバラの油で作った薬で何でも治してしまうようで、彼らは滅多なことでは医者に行かない。しかしある時、マニエルが具合が悪く医者に行きたいので車を出して欲しいという。連れて行った先は普通の民家で、表で車を停めて待っていると三〇分位して出てきたが、体中から異様な臭いがしており、どうやら卵と何かを混ぜたものを背中に塗られお祈りを受けたようで、一週間体を洗ってはいけないという。その後、一週間くらいで体は治ったようで有難がっていたが、私には自然治癒しただけのように思えた。そんな彼らと蛙を狩りに行ったことがある。C地区とB地区の境に小さな沼地があり夕方近くを通るといつも蛙の啼き声が聞こえる。ある時マニエルがその蛙はハンという食用蛙だと教えてくれた。そこである晩、マニエ