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概要

国士舘史研究年報第8号

教育の「土台」としての宗教・文化11はじめに現代において、大学教育の場においても、社会福祉においても、方法論が重視され、本質論が軽視されているように感ずる。しかし、渡辺・長谷川・柴田に通じる脈筋は、必ずしもそうではない。本論文の目的は、一つはこれまで触れられることのなかった仏教社会事業家の嚆矢である渡辺海旭(1)、淑徳大学の創設者であり、宗教と社会事業と教育の三位一体論を唱えた長谷川良信(2)、国士舘の創立者である柴田德次郎のつながりを発見することである。もう一つは、同時期に論じられた福祉や教育の「土台」として仏教に役割が与えられたことを考察することである。渡辺と長谷川は浄土宗の僧侶であるが、柴田は、必ずしも仏教徒であると位置づけられていない。しかし柴田は、日本が明治維新後、西洋文明を積極的に受容し、社会の近代化を急速に推進するなかで、伝統文化を破壊し、軽視することに憂いを感じていた。そして柴田とその有志たちは、日本の「革新」をはからんと、「社会改良」と「青年指導」を目的として「青年大民団」を組織し、一九一七(大正六)年に、「活学を講ず」の宣言とともに、私塾「國士館」を創設した。「国士舘創設趣旨」で謳われているのは、吉田松陰の精神を範とし、日々の「実践」のなかから心身の鍛錬と人格の陶冶をはかり、国家社会に貢献する智力と胆力を備えた人材を養成することにあった。すでに述べたように日本が明治維新後、西洋文明を積極的に受容するなかで、渡辺・長谷川・柴田らは、日本菊池  結論文と資料紹介――論文教育の「土台」としての宗教・文化  ―渡辺海旭から、柴田德次郎および長谷川良信に受け継がれたもの―