2020年09月15日
【祝ご卒業】令和2年度(2020年9月)卒業生・修了生の皆様へ大澤英雄理事長から卒業生の皆さんへのメッセージ
日々、努力
―― 20年後の自分を描いて ――
学校法人国士舘 理事長 大澤 英雄
皆さんのご卒業を心からお祝いいたします。
併せてご家族の皆様にも衷心よりお慶びを申し上げます。
今、皆さんは入学からの日々を振り返っていることと思いますが、青春の一時期を過ごした国士舘での日々は皆さんの人生にどのように位置付けられていくのでしょうか。 これから十年先、二十年先に青春を謳歌できたこの時期を懐かしく思える日がきっと来ることと思いますが、充実した学生生活を送ることができたでしょうか。
皆さんは本学で学問を修め、研鑽を積んで来られた結果、それぞれの学位を手にされ、新たな人生を始めるわけです。同時に殆どの方が小学校入学以来の長きにわたる学校生活の終わりを迎えたことと思います。これは皆さんの人生の中で、大変大きな節目の一つだといえるのでしょう。この節目を迎えるにあたり、一堂に会して皆さんの門出をお祝いするはずでしたが、それを叶えることができず、誠に残念でなりません。
皆さんが、これから新しい生活を始める前に、大学に学ぶ機会を与え、支えて下さったご家族をはじめ、周りの方々にまず感謝の気持ちを伝えることを忘れないでください。特にご家族はこの日を心待ちにして来られたことと思います。
さて、皆さんが手にされた学位記は、学問や物事の基本的な部分を身に着けた証明書です。当然のことながら、実社会で必要とされる全ての知識を習得したということでも、学ぶことの終了を意味するものでもありません。皆さんにとって大学に学ぶ機会を得たことが貴重な体験であったことに間違いはありませんが、 このかけがえのない体験も目的を定め、自身の資質、能力を十分に発揮しなければ、意味を成さないのです。皆さんは大学を出たというだけで、まだ何の成果も上げてはいません。
今後は、社会人としてしっかりと目標を定め、それに向かい今まで学んで来た基本的な知識を役立て、自分のものとして身に着けていくという、これまでとは形を変えた新たな学びと努力の日々が始まります。
そして多くの体験を通して、変化に対する適応力を身に付けていくことも必要です。自分の置かれた環境や与えられた条件にどう対処するか、如何に工夫して前進していくかということです。
まず、仕事に就いてからの数年が勝負です。強い意志と覚悟を持って、じっくりと経験を積んでください。働く上で自分の意に沿わない内容や、やりたくないことも出てくるでしょうが、それには自分を成長させる力が潜んでいると捉えてください。すぐに結果を求めてはいけません。
人として真の価値を発揮するために、各自が自分の能力を開発し、それを最大限に活用していく必要があります。世界に唯一人の自分です。内に秘めた自らの誇り、プライドを持って仕事に向かい、価値を発揮してください。「価値を発揮する」ということは、世の中の役に立つ、力になるということです。自立は勿論、社会人として何らかの形で世の中に還元することを目指す必要があります。当然、一朝一夕で叶うことではありません。自分に何ができるか、どうなりたいか、その為に何をすべきかを考え、努力と工夫をじっくり重ねてください。皆さんには長い人生、努力と忍耐によって得られる喜びを一つでも多く実感されることを願っています。
もう一つ、お伝えしたいことがあります。それは、国士舘の卒業生には如何なる時にも「人を思いやる心」を忘れないでほしいということです。
社会的動物である人間は、他者との関係が互いを支え合っています。つまり、人の力を借りて生かされており、他者との関係が自分を育んでいるのです。互いに支え、授けあう、この人間関係が人の一生に大きく影響を与えているのだと思います。
今、世界中が新型コロナウィルスや、異常気象をはじめとする自然の猛威と闘っていますが、これらの現象を見るにつけ、人間の力の弱さを思い知ることが多くなっているように思います。それと同時にこれまでの日常化した環境がそうでなくなった時、初めて自分以外の多くの人の手によってその環境が保たれていたことにも気付くのではないでしょうか。
皆さんには、今後多くの出会いが待っているはずです。その一つ一つを大切にして、誠意をもって対応すること、感謝することを心掛けてください。
自分の行為が「誰かを支えた」「誰かの役に立った」という喜びの気持ちこそが、国士舘精神の原点であります。これは人の幸せを自分の幸せとして生きるということです。国士舘の四徳目「誠意・勤労・見識・気魄」の一番始めに「誠意」を掲げているのもこれが建学の精神の礎となっているからですが、これを卒業していく皆さんに今一度、お伝えしておきたかったのです。
誠意、つまり真心は、まさに人格の基礎を成すものであり、誠意があってこそ、世のため人のために貢献できるのです。現代社会は、お金さえ払えば、大概のものが手に入りますが、物理的な豊かさは心の隅間を埋めてはくれません。豊かさは周りの人が与えてくれると思いがちですが、自分の人生を豊かにするのは他人ではありません。その人生の主役である、皆さん一人一人です。人を思いやることは、その人だけでなく自分をも幸せにするのです。
今、世界中が不安定な状況に直面していますが、こんな時だからこそ、皆さんには人を思いやることで心豊かな気持ちで人生を歩んでいただきたいと思います。
終わりになりましたが、卒業生を支えてこられたご家族の方にこの場をお借りしてお伝えしたいことがございます。
国士舘の教育理念に ご理解を頂戴し、大切なお子様を本学に託して頂きましたことに、 国士舘関係者を代表致しまして、心から 御礼を申し上げます。有り難うございました。
最後に国士舘も皆さんの母校として、次の百年に向け、建学の精神を受け継ぎ、更なる発展へ向かうことをお誓いして私の餞のことばと致します。
令和2年9月16日
学校法人国士舘
理事長 大澤英雄