政経学部

7月8日、政経学部政経学会が主催する講演会が世田谷キャンパスメイプルセンチュリーホール1階大教室で行われました。今回は「我が国の安全保障政策の現状と課題～ウクライナ侵攻から学ぶこと～」と題し、元自衛隊統合幕僚長の岩﨑茂氏（ANAホールディングス顧問）を招いて行われ、他教室でもライブ中継された講演は、学生・教職員約250人が聴講しました。

講演に先立ち、佐藤圭一学長による開会あいさつ、政経学部の板山真弓講師から岩﨑氏の経歴が紹介されました。続いて壇上に立った岩﨑氏は、まず自己紹介として小学生のときに自衛隊機の飛行を間近に見てパイロットを志したことや、1975年の航空自衛隊入隊以降約100回にのぼるスクランブル（緊急発進）を経験したエピソードなどを織り交ぜながら「本日は我が国の防衛政策の基本を解説するので、この機会にぜひ皆さんも理解を深めてほしい」と促しました。

岩﨑氏は、日本の安全保障政策の前提として日本が海に囲まれた海洋国家であることを挙げ、他国との貿易のための海路・空路の確保が重要である点を強調しました。そのうえで、周辺諸国の戦略概観として「日米（韓）vs 露中」の構図を説明し、隣国中国における軍事力・軍事費のめざましい拡大と南シナ海の領有権等をめぐる問題などを含めた活動の展開、中距離弾道ミサイルを保持する北朝鮮の動向についても写真やグラフなどを用いて解説し、それにならぶ脅威としてロシアの軍事活動にも言及しました。

そのような中、日本では第二次安倍政権以降に政治主導による安全保障政策が大きく前進したと述べ、2013年に設置された国家安全保障会議、翌年に発足した国家安全保障局が外交および防衛政策の中枢を担ったとしました。また、国家安全保障の目標として掲げた「積極的平和主義」を具体的政策とするための戦略的アプローチを解説したほか、自衛隊における統合運用体制への移行について触れ、現在の運用体制の元で統合幕僚長が平時から陸・海・空の各隊を有機的かつ一元的に運用できているとし、統合幕僚長が実施する数々の職務についても紹介しました。

最後に、「国民が議論を重ねた中で導き出した防衛政策があってこそ、自衛隊の能力も最大限生かすことができる」と本邦の防衛政策について述べ、「物事はすべて一方向でなくトータルで理解することで本質をふまえた対応が可能になる。国民の理解にもとづく徹底的な議論を求めたい」と安全保障政策への関心と理解を呼びかけました。

講演終了後には、主催である政経学会会長の生方淳子教授が閉会のあいさつで「政治的、地理的側面などさまざまな観点から日本の安全保障政策について説明いただいた。国防の最前線で指揮を執られた岩﨑先生のお話は示唆に富み、平和と安全を保つにはどのようなことができるか、私たち一人一人が考えさせられる貴重な機会となった」と謝辞を述べ、会場内からは岩﨑氏に大きな拍手が送られました。