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教員の研究・指導テーマ

国士舘大学大学院政治学研究科では、政治学・行政学を中心に社会科学のさまざまな分野を専攻する教員が、皆さんの研究指導を行います。ここでは、各教員が近年取り組んでいる研究の一端を紹介します。

行政や政策について学ぶ

行政学研究(平石正美
行動行政学・行動公共政策の研究

 私の最近の研究に「行動行政学・行動公共政策」があります。これは人々の心理的な傾向を捉えて、人々の行動変容を促し、制度や法律をいかに遵守させるかを考える学問分野として注目されています。人は潜在的にバイアス(好みや偏向)を持っています。例えば、「ワクチンを打つと3%の副作用があります」と表記するのと、「100人の内97人は病気にかからなくなります」と表記するのでは、どちらが有効であるかといった心理学を用いた研究になります。

協働の研究

 私がずっと研究を続けているテーマに「協働」があります。現代社会の中で絆やコミュニティが崩れ、疎外感や孤独感を味わう人々が増えています。自治体や政府が呼びかけてすぐに「協働」が増えることはありません。いろいろなイベントや仕掛けを通じて「協働」は共感され、蓄積されます。「協働」を増やしていくことで、地域の活力や健康度の向上など、さまざまな地域力の向上につながっていきます。

地域行政研究(石見豊
人口減少時代のまちづくりを考える

東京の都心では、再開発が続き、オフィス・ビルや商業ビル、タワーマンションなどが次々とつくられています。私は、東京西部の郊外(多摩エリア)に住んでいますが、近年、自宅の周りでも、都心に引っ越す人が増え、空き家が目立ち始めました。人口が減り、ゆとりができた郊外を、成熟した豊かな暮らしができるそんな生活空間に変えられないか、そんなまちづくりのあり方に関心を持っています。

イギリスの住まいとまちづくり

これまで、イギリスの地方自治に関心を持ってきましたが、いま特に関心を持っているテーマは、公営住宅についてです。イギリスの公営住宅は、ハウジング・アソシエーション(HA)と呼ばれる慈善団体が管理・運営しているケースが多いです。HAの中には、全国的規模で活動するものや、長い伝統を有するものもあります。いくつかの地域のHAの活動を通して、イギリスの住宅政策やまちづくりの特徴を明らかにします。

日本教育制度史研究(小池亜子
グローバル化時代の教育制度に関する研究

グローバル化の進展に伴い、教育のあり方は大きな転換点にきています。しかし、公教育の法制度や政策は、時代の速い流れに必ずしも対応できていません。日本教育制度史研究室では、日本や他国の公教育に関する法制度や政策を比較検討し、学生同士で議論しながら各自の研究課題を設定します。外国人労働者の子どもの教育、少数民族教育、インターナショナルスクール、ホームスクール、遠隔教育、AI(人工知能)と教育など、公教育の現代的課題を追究していきます。

事例研究(ケース・スタディ)で深く学ぶ

理論を検証し、新しい事実を発見する方法には、実験、統計分析を行う定量的な多数事例研究、少数事例を精査する定性的な事例研究(case study)があります。日本教育制度史研究室では、定説とされてきた理論を制度の運用事例や教育現場の実態と照らし合わせて検証する方法として、事例研究を勧めています。優れた事例研究は、物事が「なぜ」そうなっているのか、問題の本質に迫る視点を与えてくれます。2年間の修士課程で、自分から現場に足を運んで深く探究していきましょう。

国際関係やさまざまな地域について学ぶ

国際関係研究(上村信幸
地球的問題群とグローバル・ガバナンス

現代の国際関係の特徴のひとつは、国際社会における規範性の高まりにあります。気候変動リスクの深刻化は世界に規範の共有化を要請しています。紛争解決のための予防的な措置や平和構築に加え、集団殺戮のような重大な戦争犯罪をおかした個人の刑事責任を裁く仕組みが存在感を高めています。軍備管理でも紛争後の市民社会を脅かしてきた対人地雷等の禁止条約が制度化されました。国際公共空間における規範と秩序形成を考えていきます。

多主体間主義と国際協力

相互依存が深化した現代は国際協力の時代とも呼べます。安全保障から経済社会までの幅広い領域で多元的な国際協力を促す国際組織の存在を例にあげるまでもなく、世界では国家体系を基盤に二国間及び多国間国際協力の制度化が進行しています。また、地球社会にあって国境を越えて展開される市民社会次元での国際協力はミクロなコミュニティの持続可能性に無視できない影響を及ぼしています。多様な国際協力について共通利益の制度化の観点から多角的な研究をおこないます。

アメリカ地域研究(砂田恵理加
「アメリカ」の「歴史」を学ぶということ

地理的にも遠く、時差も大きい「アメリカ」を「歴史」的に学ぶことに、どのような意味があるのでしょうか。歴史の研究とは、単純に過去に何が起こったかを調べることではありません。過去に起こったことを調べた上で、そこに意味を見出していくことです。遠い「他者」の物語に耳を傾け、その意味を考えることで、人間の文化や社会の重層性への理解を深めることができると私は考えています。こうした理解を通じて、私たちが生きる社会・時代の新たな側面が見えてくることでしょう。

正解のない問題に取り組む

20年ほど前、アメリカで、ある小学校を見学する機会がありました。教室に入った途端、子供たちの様々な髪の色、肌の色、カラフルな衣服といった、色の洪水に圧倒されたことをよく覚えています。何がこの多様な人々を「アメリカ人」にしているのだろう、その疑問を持って今までアメリカ社会の研究をしてきました。この疑問に正解はありませんし、答えに近いものがあったとしても、ひとつではありません。結局こうした謎は解けませんが、考え続けるプロセスを研究と呼ぶのだろうと思います。

南アジア地域研究(川島耕司
キリスト教とアジア社会

かつては近代化とともに宗教は衰退するだろうと考えられていました。しかしこの世俗化論に対しては今日大きな異議申し立てがなされています。実際今でも宗教は多くの人に信仰され、社会、政治、あるいは経済に影響を与えています。キリスト教においては特にペンテコステ派を中心とする聖霊信仰に重きを置く宗派が、アジア、アフリカ、ラテン・アメリカなどで急速にその信者数を増やしています。それはなぜなのか、どのような影響を社会に与えているのかを考えています。

仏教・ナショナリズム・暴力

スリランカ、ミャンマー、タイなど上座仏教を信仰する人々が多数を占める国々では少数派であるムスリムへの差別や暴力が深刻な問題になっています。これらの国々では仏教徒による過激主義的な組織が設立され、ソーシャルメディアなどを通じて反イスラーム感情が煽られています。民主化や新自由主義的な経済のあり方はこうした動きにどのような影響を与えているのか、ナショナリズムや社会のエスニック化とはどのように関連しているのかについて研究しています。

アフリカ地域研究(鈴木裕之
人間の営みとしての文化の研究

私の専門は文化人類学です。文化人類学では、衣食住や音楽、文学のみならず、政治も、経済も、宗教も、すべての人間の営みを文化として捉えます。政治学で一般的に扱われるようなテーマも、それ以外のさまざまな要因と結びつきながら生起する現象と捉えることで、より総合的な理解を得ることができます。政治学の研究に文化人類学の手法を取り入れることで、より新しく、学際的な視点に立った研究を進めてゆくことができます。

音楽からポップカルチャーまで

私の専門はアフリカの音楽と都市文化です。そこでは、伝統的な音楽・舞踊から、現代都市のポップカルチャーまでを幅広く扱っています。これらの現象は地域を変えても共通する部分が多く、グローバル化した現代では、都市文化が地域を横断して発展し、政治的・経済的状況を反映しながら最先端の「カルチャー」を生み出しています。アフリカに限らず、日本、アジア、欧米などのポップカルチャーを比較することで、現代社会への理解を深めることができます。

政治文化研究(佐藤圭一
日本人の宗教研究

日本人の信仰形態としてSyncretism(=諸説統合主義)というものがあります。外国の方々、特に一神教を奉じる人々にとっては不節操な形態かもしれません。しかしながら、多くの日本人は疑問を持ちません。古くは「十七条の憲法」(604年制定)に第二条「篤く三宝を敬へ」というものがあります。古来の神道を基本とした上で、外来宗教である仏教との調和を求めたものです。第一条「和を以て」と並び、日本人の特性である協調性、自制心…“おもてなし”…の起源を見出すことができます。「日本人の宗教研究」では日本人の心の奥底に流れる価値観を宗教面から探求します。

宗教から見た国民性

“united we stand”(団結すれば、立ち上がれる)、”one nation under God”(神の下にある一つの国民)。歴史が浅く、移民国家のアメリカでは多種多様な価値観が渦巻いています。新型コロナウィルス禍に留まらず、同国の最大の課題は、危機に直面した時に、国是として自由と民主主義を基底としながらも、いかにして結束を保つかにあります。創作された上記2つの造語は人工国家アメリカの特性を示す典型です。他方、日本はどうでしょうか。“うがい・手洗い・マスク…自粛” 声高に結束を叫ぶこともなく、自主性に偏重し過ぎる感すらします。普段、私たちがイメージする両国民の特徴とは真逆ではないでしょうか。その違いを文化(=宗教)から究明するのが「政治文化研究」の役割なのです。

歴史や理論について学ぶ

日本政治思想史研究(織田健志
現在を見つめなおす視点

日本を対象とした思想史を研究しています。思想史を学ぶことで、現在に生きるわれわれが無意識に前提としている価値観や考え方を相対化し、社会をみる眼を変えるきっかけが得られます。例を出します。江戸時代は将軍や藩主が支配者であり、民主主義からは程遠い社会でした。その一方で、200年以上も戦争のない安定した社会でした。平和と繁栄をもたらした当時の政治体制を学ぶこと。それは、われわれの「常識」である民主主義社会について、一歩離れた位置から課題や問題点を考えることを可能にします。

世界のなかの日本、アジアのなかの日本

日本はアジアという地域の一部であり、グローバルな世界の一部です。日本の思想や文化は、中国や朝鮮半島などのアジア地域、西洋諸国との文化接触によって形成されてきました。たとえば現代でも、K-POPは日本でも人気があり、日本の漫画は世界中で好評を博しています。したがって、日本の思想を理解するには、アジアや世界における相互作用の産物として捉える視点が重要です。留学生の皆さんにとって、日本の思想を学ぶことは、自国の思想や文化に対する理解を深めるきっかけとなるでしょう。

現代政治理論研究(中金聡
エピクロス主義の研究

古代ギリシアの哲学者エピクロスといえば、現代でも享楽家や美食家のことを「エピキュリアン」というくらい快楽主義の倫理学で有名です。しかしエピクロスにはそのほかにも、自然科学の分野で原子論、政治学の分野で社会契約論の先駆けとなる思想などがあり、その遺産は近代世界に多大な影響を与えました。その歴史をたどり、意義を確認する思想史研究が、10年がかりでようやく完成しつつあります。

「政治」とはなにか

政治理論は「自由」「平等」「正義」などの政治的価値をあらわす概念を厳密に分析し、現代のさまざまな問題の解決に適用します。わたしのテーマはすばり「政治とはなにか」。政治学で用いられる概念のなかでも、「政治」ほど多様に定義される論争的な概念はありません。「政治」の定義次第で「政治にできること/できないこと」も変わるはずです。現代にふさわしい「政治」の定義をつくりあげることが目標です。

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