2020年10月25日
コロナ禍時代の防災ー「自助」の大切さ再認識【防災・救急救助総合研究所・山﨑登教授】
近年多発する大地震や豪雨に加えて、コロナ禍にあるいま、私たちは災害への備えや知識を常にアップデートしていく必要に迫られています。そこで、本学防災・救急救助総合研究所の山﨑登教授に、被害を最小限にするための「減災」の取り組みと、学園を挙げて行う防災教育の今後について聞きました。(国士舘大学新聞編集部)
<令和2年9月24日取材>
「防災リーダー養成論」遠隔講義の成果
(コロナ禍で実施されたオンライン授業については)必要に迫られ不安のなか始まった遠隔での講義でしたが、手応えを感じるレポートを目にしたときは、いささかでも理解してもらえる講義ができたかとうれしくなりました。対面に勝る授業はないと考えていますが、多人数の授業でも、画面上では一対一の講義として実践できることは、遠隔ならではでしょう。教育成果を検証したうえで、遠隔の長所を活用しながら、より良い授業を考えたいと思っています。
コロナ禍での防災対応
私が記者時代に、防災担当として取材した阪神・淡路大震災の死者の多くは高齢者でしたし、最近の災害の犠牲者の多くが避難後の関連死です。人であふれた体育館などでの長期間にわたる避難生活は、プライバシーが守られるはずもなく、持病の悪化、エコノミークラス症候群の発症リスクも高まります。避難所の過酷な環境で、せっかく助かった命が失われることになんともやりきれない気持ちになります。
豊かな生活に慣れ、高齢社会となったいま、従来の方法で犠牲者を減らすことはできません。その意味で、コロナ感染防止対策を通して従来の防災対策の課題が顕在化し、避難所や避難の在り方の見直しが図られるようになりました。
避難は「難を逃れること」ですから、指定避難所だけでなく、実家や親せき、友人、ホテルなどでもよいのです。また、自治体が出す避難情報は、「避難勧告」を廃止して来年度から「避難指示」に一本化され、住民にとって避難するタイミングが明確になります。一方、コロナ禍で日常となったマスク・手洗い・うがいなど自らを守る「自助」の行動により、安全は人任せにはできないことを学ぶことになりました。
- 全新入生に毎年「防災総合基礎教育」を実施
- 国士舘高校生徒に向けた防災学習の講義をオンラインで行うなど、コロナ下でも防災教育に注力する
国士舘の防災教育が果たす役割
災害時は社会の問題点が見えやすくなります。災害の影響を被りやすい高齢者や障がい者などへの福祉の充実や地域で助け合う社会の実現への取り組みが減災につながります。そのうえで、全国津々浦々の地域や職場で必要なのは、防災知識とそれを適切に活用する力を備えた人、つまり「防災リテラシー」を有する人材です。
本学はすべての学生・生徒が防災教育を学ぶ体制が整っています。このすばらしい取り組みをたゆみなく浸透させ発展させていくことで、日本の防災力がさらに向上していくことと期待しています。
プロフィール
山﨑 登(やまざき・のぼる)教授
専門分野:社会学
防災・救急救助総合研究所
救急システム研究科 救急救命システム専攻
(修士課程・博士課程)
元NHK解説委員。30年にわたり国内外の被災地を取材し、各地での講演、メディア出演も多数。著書に『地震予知大転換~最近の地震災害の現場から』など。内閣府が設置する「災害からの避難に関するワーキンググループ」委員。
平成30年防災功労者内閣総理大臣表彰