学校法人国士舘中長期事業計画(第1次)

本学園を取り巻く環境

本計画を定めるに当たり考慮した本学園を取り巻く外的環境、内的環境及び高等教育行政の動き(方針・施策)は次のとおりである。

外的環境

急激な少子高齢化をはじめ、学校法人を取り巻く環境は厳しく、構造的に大きく変わってきている。また、平成23年3月11日に発生した東日本大震災は、人々や社会の価値観さえも変えたと言える。こうした社会環境・情勢の急激な変化に対応し得る経営の機動性とガバナンスの強化、新たな時代の要請に的確に応える教学展開が必要となっている。

1 就学人口の縮小

18歳人口は、20年前の約200万人から約120万人となり、 平成20年代は120万人前後で横ばいに近い漸減傾向で推移する。しかし、 平成30年代に入ると再び継続して減少が始まり、平成40年代前半までには100万人余りと なることが見込まれている。さらに、今後の推計では、18歳人口は、100年後には 現在の人口の4分の1 になるという試算も散見される (※) 。 このような少子化を背景とした就学人口の縮小は、今後ますます教育・研究機関に甚大な影響を与え、 私立学校全体の経営と存立を根底から揺るがしていくことが予想される。

(※)18歳人口推移の推計

(「学校基本調査」及び国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口」 (出生中位・死亡中位)に基づき文部科学省作成)

18歳人口推移の推計

2 内部統制、コンプライアンス、監査機能の強化

私立学校法の改正、学校法人会計基準の見直し、私学助成策の厳格化等を通じて、学校法人が主体的に内部統制とコンプライアンスの仕組みを整備し、監査機能を強化していくことが求められている。

3 説明責任・透明性の確保、情報公開の促進

公教育の担い手である学校法人自身が、学生・父母等をはじめ学園関係者に対して適正な説明責任を果たし、業務や組織運営の透明性の確保と教育・研究活動等に係る情報やデータの積極的な情報公開を進めることが求められている。

4 経済、社会の変化への対応

経済活動や人の動きのグローバル化が拡大し、産業・就業構造も変化・流動化してきている。国際的相互依存と対立・摩擦が深まる中、日本社会の少子高齢化が進行し、地域社会の衰退が懸念されている。これらの激変する経済、社会に適切に対応し、人材育成や産業振興へ積極的に貢献することが早急に求められている。

東日本大震災による防災意識の高まり

東日本大震災後、首都直下地震や南海トラフ地震などの被害想定が見直され、さらに地球的規模の地殻変動期に突入していると思われる災害に際して、国民の防災意識が高まるとともに、災害等に対して本学園として積極的に貢献できる機能の強化、防災教育の必要性が強く叫ばれている。

内的環境

本学園は、まもなく創立100周年を迎え、歴史と知名度があり、伝統ある武道教育をはじめ体育教育の草分けとして、各スポーツ分野で顕著な実績を持つほか、一般企業等への就職はもとより、教員や警察官・消防官など地方公務員を多数輩出してきた。近年、各キャンパスの4年間一貫教育体制を確立し、梅ケ丘校舎やメイプルセンチュリーホール等を整備する中で、本学への志願者はおおむね堅調に推移してきている。一方で、教学の課題等に対する改革のスピードや実効性の確保が問われ、改革の実質化に向けてのPDCAサイクルの展開が求められている。入学定員超過率抑制政策の中で、教職員年齢構成の偏在を背景に余裕の乏しい収支状況が続くことが予想され、さらなる重点的・効率的予算編成・執行と経営基盤の中長期的強化方策の検討が必要となっている。

1 創立100周年を迎える歴史と知名度

本学園は平成29年に創立100周年を迎える歴史を有し、知名度も高いが、このことを十分活かせていない。次の100年に向けた国士舘ブランドの向上を目指し、最新の設備、機能を持ったメイプルセンチュリーホールや梅ケ丘校舎などを最大限に活用しながら、国士舘の特色ある教育・研究活動や学生の活躍を効果的に伝える広報活動を、積極的に進めていく必要がある。

2 各分野で社会を支える多数の人材の輩出

世田谷、町田、多摩各キャンパスにおいて特色ある学部、学科を展開し、各分野で活躍している多数の人材を輩出している。特に近年は、危機管理や救急救命の分野での活躍がめざましく、東日本大震災直後の被災地における本学学生・教職員の活動は、多くの人から期待され、信頼されて、高い評価を得ている。

3 大学における4年一貫教育体制の確立

都心部にありながら歴史と静寂な環境と立地に恵まれた世田谷キャンパスの整備に伴い、5つの学部で4年一貫教育体制を確立した。一方、特色を持った学部の設置と敷地にゆとりを持つ町田及び多摩キャンパスでは、2つの学部が4年一貫教育体制を維持している。今後、郊外キャンパスの利点を活かすとともに、中長期的な学園の教育・研究、スポーツ等の発展に資することのできる、総合的なキャンパス構想の検討が必要である。

4 女子学生・生徒の増加

男女共同参画社会の到来と我が国の人口減少期にあって、女子の進学率が高まる中で、本学においても女子学生・生徒の志願者が増加し、大学では全学生の約4分の1が女子学生になっている。また、高校・中学校でも女子生徒の活躍にめざましいものがある。
女子の増加により学内の印象も変化しており、在籍者を確保する観点からも、今後とも優秀な女子学生・生徒の受け入れを積極的に進めていく必要がある。

5 学生のニーズの多様化

本学への志願者は堅調に推移しているが、目的意識や興味・関心、これまでの履修状況等多様な学生が入学してくる中、学生を学修へ自発的に参加させ、一人ひとりの状況に応じ、修学やキャリア形成・就職等に至るまで、切れ目ない支援体制を整備していく必要がある。

6 高等学校及び中学校の教育内容等の改革

少子化の影響が先行して進行している高校及び中学校の志願状況は近年厳しい状況となっている。このため、不断の読書、体験、反省により、誠意、勤労、見識、気魄を涵養するという本学園の教育方針のもと、国士舘の強みを生かした中・高・大の連携をさらに強めるとともに、教育内容等を大胆に見直し、魅力ある文武両道教育を確立して志願者の増加を図っていくことが喫緊の課題となっている。

7 教職員年齢構成の偏在

本学は戦後のベビーブーム世代の進学適齢期に対応して急速な規模の拡大を続けてきた結果、教職員の採用が一時期に集中せざるを得ず、現在では年齢構成が若年層よりも高齢層に偏る状態が続いている。そのために採用計画に影響を及ぼしている。今後とも長期的な視野で教職員の人員構成バランスを検討することが求められている。特に職員については、人数だけでなく人員配置の重点化を含め、早急に検討する必要がある。

8 硬直的な財務体質

本学は学生生徒等納付金収入の依存度が同系統の法人(※)の平均より高いほか、事業活動収入に対する人件費の割合も平均より高い状態である。このことが本学園の財務体質を硬直的なものとしている。幸い、事業活動収支計算における基本金組入前当年度収支差額がマイナスになる例は、特別な事由のあった例外的な年度を除いてはないが、今後、柔軟性の高い財務体質に変えていく必要がある。

(※)

同系統の法人:日本私立学校振興・共済事業団が財務集計で使用する「理工他複数学部」系統に区分する法人

高等教育行政の動き(方針・施策)

1 大学改革実行プラン

平成24年6月、文部科学省は平成29年度までの「大学改革実行プラン」を発表し、今後の大学改革の方向性として2つの柱と8つの改革プランを掲げて取り組むこととされた。(※)

    (※)
    <Ⅰ 激しく変化する社会における大学の機能の再構築>
  1. 大学教育の質的転換と大学入試改革
  2. グローバル化に対応した人材育成
  3. 地域再生の核となる大学づくり
  4. 研究力強化
  5. <Ⅱ 大学の機能の再構築のための大学ガバナンスの充実・強化>
  6. 国立大学改革
  7. 大学改革を促すシステム・基盤整備
  8. 財政基盤の確立とメリハリある資金配分の実施
  9. 大学の質保証の徹底推進

2 第2期教育振興基本計画

平成25年6月、平成25年度から5カ年間の「第2期教育振興基本計画」が閣議決定された。今後の社会が向かうべき方向として、「自立・協働・創造」の三つの理念を掲げ、教育行政の基本的方向性や具体的政策を掲げている。大学部分は、教育の質の保証、ガバナンス機能の強化など「大学改革実行プラン」と内容的に重なり合っている。

3 教育改革、ガバナンス改革等の推進

中央教育審議会は大学の教育改革に関する答申を近年二度にわたって行っている。(「学士課程教育の構築に向けて(平成20年12月答申)」、「新たな未来を築くための大学教育の質的転換に向けて(平成24年8月答申)」)平成25年1月に教育再生実行会議が設置されて以降は、同会議で方向性を示し、中央教育審議会で具体的な検討を進めるという方式も採られ、各般にわたり施策の推進が図られてきた。

大学のガバナンス改革に関しては、学校教育法の改正(平成27年4月施行)が行われ、改革に向けた学長のリーダーシップが最大限に発揮されるよう、学則等関係する内部規則の見直しが各大学に要請されている。

高大接続改革に関しては、「新しい時代にふさわしい高大接続の実現に向けた高等学校教育、大学教育、大学入学者選抜の一体的改革について」(平成26年12月中央教育審議会答申)を踏まえ、「高等学校基礎学力テスト(仮称)」及び「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」の実施等を明示した高大接続改革実行プランが平成27年1月に公表された。

実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関の制度化に関しては、教育再生実行会議と有識者会議の提言を受け、中央教育審議会の特別部会で具体的な制度設計等についての審議が行われている。

4 私学行政の量的整備から質保証への転換

私学行政の基本的考え方は、量的整備から質保証へと転換し、近年その動きが加速してきている。質保証に関する制度の整備に関しては、「機関別認証評価」制度が導入されるとともに、学校教育法改正(平成15年4月施行)と私立学校法改正(平成26年4月施行)により、教学・経営両面で、文部科学大臣の段階的是正措置権限を明記する法的整備が行われた。また、平成26年度に「大学ポートレート」(私学版)の一般公開が開始された。

5 設置審査等の見直し

設置基準・設置審査の規制緩和後、その問題点も指摘され、設置審査の質の確保やフォローアップの仕組みの強化が求められている。このため、設置基準、設置審査、認証評価の見直しのため多岐にわたる検討が続けられており、設置審査スケジュールの見直しや学生確保の見通しについての設置審査の厳格化、届出制度の見直し等が逐次実施されてきている。

6 補助要件の厳格化と大学入学定員超過率抑制策の強化

高等教育行政の教育・研究の質保証重視の動きに対応し、私立大学等経常費補助金においても補助要件の厳格化が進むとともに、平成25年度には私立大学等改革総合支援事業が開始され、大学の改革状況を点数化してそれを助成金の交付に反映させる動きも強まってきている。

さらに、大都市圏への学生集中の抑制策と地方創生策の一環として、収容定員8,000人以上の大規模大学について、私立大学等経常費補助金が不交付となる入学定員超過率を1.20倍以上から1.10倍以上へ変更すること、並びに平成31年度から入学者が入学定員を超える場合には超過入学者数に応じた助成額の減額を行うことを文部科学省が決定・通知している。また、これに連動して設置審査において不認可となる平均入学定員超過率についても、1.30倍以上から1.05倍~1.15倍以上へと変更することが予定されている。これらの措置は平成28年度から経過措置を設けて実施することとされており、該当する大学では、これへの対応が必要となっている。

ページの先頭へ