各地で自然災害が多発し、社会では地域防災対策の見直しと災害に関わる正しい知識の重要性が高まっている中、本学は2012年に設置した「防災・救急救助総合研究所」を中心に、全学生受講必須の「防災総合基礎教育」や「防災リーダー養成論」「防災リーダー養成論(実習)」などのカリキュラム、「防災リーダー副専攻」制度など、学部・学科の枠を超えたさまざまな知識や技能を体系的に学修する制度を整えています。

この取り組みは、7学部10研究科を擁する本学の各学問分野に、「防災知識」という本学独自の付加価値を備えるための教育として位置づけており、社会に貢献する人材に向けた人間力を高めるための機会としています。



国士舘ならではの実践的な防災教育防災教育

01 防災総合基礎教育

災害時に活躍できる人材の養成を目的に、2014年度から全学部の新入生を対象に、オリエンテーションの一環として2時間の「防災総合基礎教育」を実施しています。本学防災・救急救助総合研究所の教職員が講師となり、災害に対処するための知識の習得、応急手当の方法、搬送方法、初期消火、BLS(一次救命処置法)等を学びます。

02 防災リーダー養成論、防災リーダー養成論(実習)

本学では、2013年度から防災リーダー養成の特別カリキュラムとして、災害についての知識を幅広く学ぶ「防災リーダー養成論」3日間の実践的な集中実習で学ぶ「防災リーダー養成論(実習)」を開講。2018年度からは全学部の学生が履修できるようになり、多くの学生が受講しています。

防災リーダー養成論

さまざまな災害について、それぞれの専門家による座学形式の授業です。災害の歴史やメカニズム、風水害、地震などの災害の種類のほか、災害発生後の初動、応急およ復旧活動など防災・災害対策の中心的存在になるための知識・技術の習得を目指します。

防災リーダー養成論(実習)

災害現場で実際に動くことを前提とした実践的なプログラムです。災害対応のための知識と技術の習得を目指します。宿泊を伴う3日間の集中実習により、災害に関わる専門家による講義のほか、応急手当・搬送法、避難所運営図上訓練(避難所HUG)、BLS(一次救命処置)、資機材組み立て、避難所間仕切り設置訓練等を実施するほか、2日目の夜には避難所を想定してライフラインを切断した状態での炊き出し、マイ・タイムライン(防災行動計画)の作成、段ボールでの就寝訓練など宿泊を伴う実践的な学びで、災害時に役立つ知識と技術を習得できる実習となっています。その他、日本赤十字社、警察、消防、自治体、町内会、企業等と連携した合同防災訓練を実施しています。

03 国士舘中学・高等学校における防災教育

大学のみならず、国士舘中学・高等学校においても一貫した防災教育を実施しています。

定期的な防災訓練はもちろん、防災・救急救助総合研究所の教職員による講話や救命講習などの防災学習、消防署協力のもと実施する体験学習など防災知識の習得に向け、さまざまな学習機会を設けています。

全国各地の災害現場で学生が活躍災害ボランティア派遣

災害現場では、ボランティアセンターの運営補助、被災者ニーズ調査、瓦礫の撤去、泥かき、家財の搬出・運搬、衛生管理などさまざまな支援が求められます。本学では、大規模災害が発生した際には、「防災リーダー養成論」「防災リーダー養成論実習」の履修者および修了者などから災害ボランティアとしての参加を募り、防災・救急救助総合研究所の教職員が帯同し、全国各地の災害現場に学生を派遣しています。また、活動内容のリポートを提出するなど所定の要件を満たすことで、単位として認定しています。

※単位認定の要件については各学部によって異なります。

  • 平成30年7月豪雨
    (2018年)
  • 平成30年7月豪雨
    (2018年)
  • 九州北部豪雨(2019年)
  • 台風15号(2022年)
日付 災害名 派遣場所 学生派遣人数
1 2011年3月~4月 東日本大震災 東京武道館 74
2 2011年3月~5月 東日本大震災 宮城県南三陸町 61
3 2011年4月5月 東日本大震災 宮城県石巻市 191
4 2012年9月 東日本大震災 宮城県南三陸町 8
5 2012年5月 つくば市竜巻被害 茨城県つくば市 14
6 2013年10月~11月 伊豆大島土砂災害 東京都大島町 22
7 2014年9月 広島市土砂災害 広島県広島市 12
8 2015年9月 関東・東北豪雨 茨城県常総市 61
9 2016年4月~5月 熊本地震 熊本県益城町・西原村 34
10 2016年9月 台風第10号被害 岩手県岩泉町 18
11 2016年11月 鳥取県中部地震 鳥取県北栄町、倉吉市 10
12 2018年5月 島根県西部地震 島根県大田市 14
13 2018年8月 平成30年7月豪雨 愛媛県西予市 37
14 2018年8月~9月 平成30年7月豪雨 岡山県倉敷市 25
15 2019年9月 令和元年佐賀豪雨 佐賀県杵島郡大町町、多久市 25
16 2019年10月 令和元年房総半島台風 千葉県南房総市 1
17 2022年10月 令和4年台風第15号による大雨 静岡県静岡市 65
18 2023年9月 令和5年台風第13号による大雨 千葉県茂原市 43

これまでに1000人以上の防災士が誕生防災士の輩出

「防災士」とは、"自助""共助""協働"を原則として、社会のさまざまな場で防災力を高める活動が期待され、そのための十分な意識と一定の知識・技能を習得したことを日本防災士機構が認証した資格で、全国で約24万人が登録されています。(2022年12月末日時点)本学では、2017年度から「防災リーダー養成論」「防災リーダー養成論(実習)」修了者には、日本防災士機構が実施する「防災士資格取得試験」の受験資格が得られるようになり、これまでに1000人以上の防災士が誕生。被災地でのボランティア活動や地域社会の防災リーダーとして活躍しています。

本学が持つ知見を社会に還元地域・社会との連携・貢献

合同防災訓練

毎年夏には、防災・救急救助総合研究所が主催する「世田谷地域連携総合防災訓練」を実施しています。訓練には本学とパートナーシップ協定を結ぶ日本赤十字社のほか、世田谷消防署、世田谷警察署、世田谷信用金庫、小田急シティバス、若林町会などが参加し、大規模地震を想定した救出・応急手当・搬送・トリアージ等の訓練を行い、震災時における関係団体との連携体制を確認しています。

シンポジウム、講演会の開催

防災・救急救助総合研究所主催の「防災シンポジウム」を毎年開催しています。本シンポジウムでは、外部の専門家などを招き、基調講演やパネルディスカッション等を通じて、防災の在り方について理解を深めます。また、そのほかにも防災に関しての講演会等を適宜開催しています。

これまでの防災シンポジウムのテーマ

2017年度 防災教育をどう進めるか
2018年度 地域の防災力を高めるには
2019年度 コロナ禍のため中止
2020年度 コロナ禍のため中止
2021年度 救急救命士法の改正について ~施行から30年のあゆみ~
2022年度 関東大震災から100年 ~次の震災時に情報をどう防災に生かすか~
2023年度 首都直下地震 震災後の避難生活を考える

地域住民や学校等に対する防災教育と活動支援

東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県等の自治会、小学校、中学校、高等学校などの教育機関、企業等を対象に講習会、講演会等を実施するほか、各種防災訓練の協力を行っています。

主な講習内容

  • AED(自動体外式除細動器)の使い方を含む心肺蘇生法
  • 企業や学校、家庭などで平常時に備えておくべき防災のノウハウ
  • 災害が発生した際の避難所の役割や運営方法
  • 身近なものを使用した、緊急時の応急手当

自治体等との協定

キャンパスが所在する自治体やボランティア協会等と災害時における協力体制に関する協定を締結し、発災時の協力体制を整えています。

その他の取り組み

自衛消防隊

本学では災害時に備え、各キャンパスにおいて職員による自衛消防隊を編成。キャンパス内での訓練を恒常的に行うほか、自衛消防隊や新採用職員を対象とした外部機関での研修、消防署主催の技術発表会への参加など、万が一に備え常日頃から防災力の向上に努めています。

防災避難訓練

首都直下地震を想定した大規模な訓練を各キャンパスで年1回実施しています。訓練では、授業中に震度5強の首都直下地震が発生したことを想定し、教職員の誘導でグラウンドに一斉避難します。避難後は消防署や本学学生消防団による初期消火指導等を実施しています。

事業継続計画(BCP)の策定

安心できる教育機関として、在籍する学生・生徒、教職員、来訪者の安全を確保するとともに、教育・研究、学園生活、大学機能等事業の早期復旧と再開を目指す「学校法人国士舘事業継続計画(BCP)」を策定しています。災害発生時には、速やかに危機対策本部を設置し、さまざまな事象事案に対する対応を検討・決定し具体的対策を講じます。

安否確認システムの導入

大規模災害等の危機発生時に、本学学生、教職員の安否確認を迅速かつ確実に実施するため、「国士舘大学安否確認システム(セコム安否確認サービス)」を導入しています。

AEDの設置

傷病者への対応のため、各キャンパスにAED(自動体外式除細動器)を設置しています。