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授業ルポ

この授業では、「固(かため)の形」を主に学ぶ。固の形は、抑込技、絞技、関節技からそれぞれ代表的な技5本ずつをとって組み合わされ、「投の形」と併せて「乱取りの形」とも呼ばれる。この形を通して、正しい抑え方、応じ方、絞め方、関節の極め方等の術理と応用を身につけることを目的とする。

今回の授業は、抑込技5本のなかの[袈裟固・肩固め・上四方固・横四方固]の4つを行う。
抑込技は、相手を仰向けにし、相手の自由を制する技能。身体全体を使って、相手の肩、胸部を中心として抑え、相手の動きを制する。
学生たちは、ただ練習するだけでなく、形の違いも覚えていかなくてはならない。
山本教務助手が、学生を相手に各々の技の見本を示す。それを見ながら、小山教授が留意点を説明していく。
「左手を相手の首の下から入れて」「相手の右腕を自分の左脇にはさんで」「両脇を締めて」「相手の胸を圧迫するように」と、身振り手振りを交えながら解説する小山教授。学生たちは、その解説を聞きながら、山本教務助手の行う模範演技を真剣なまなざしで見つめる。

模範演技を見ながらの指導が終ると、小山教授の指示に従って、学生たちは2人1組となり「取」と「受」に分かれる(注1)。「取」が「受」を抑えると「受」は3つの逃げ方を行う。「取」は「受」の3つの逃げ方に応じ、身体全体を使って相手の動きを制する。「受」は逃げることが出来なくなり「取」の身体または、畳を二度手でたたいて「参り」の合図を行う。
課題の“技”を自分たちで再度確認する。
続いては、自由練習。「うまく抑えられてる?」「顔はどっち向くんだっけ?」。学生たちは、組んだ相手と確認し合いながら“形”に取り組む。小山教授と山本教務助手は、それぞれが移動しながら一組ひと組に声をかけていく。「両脇をしめて」「右膝は相手の腰につけて」とアドバイスを受けるも、なかなかうまくできず、学生たちの間からは、「痛っ!」という声や笑い声があがる。こうして基本の動きを繰り返し練習することで、“形”の手順と留意点を覚えていくのだ。
(注1)「取」…抑える人、「受」…抑えられる人/逃げる人

「“形”だけでなく、指導上の留意点も覚えてほしい」と小山教授は話す。武道学科には、教員をはじめとする指導者をめざす学生が多い。幼い子どもに教える場合にも、理解できるよう、分かりやすく指導できなければならない。
「“自然本体”という柔道の基本的な立位があります(注2)。しかし、これを教えるにも『自然本体に構えて』と言うだけでは伝わりません。『足を約一足長(肩幅)に開き、目の前に大木があると仮定し、その大木をそっと見つめる』と言えば子どもにも分かりますよね。対象物を与えるなど、ちょっとしたポイントが、指導力の違いとなって表れるのです。工夫と努力が大切です」
こうした具体的な指導方法も身につけておくと、学生自身が教育実習やボランティア活動などで指導する立場になったとき、大いに役立つはず。この授業を通して、学生たちは礼儀作法や柔道の“形”を身につけるとともに、自らの指導者としての手腕も磨いていくのだ。
(注2)自然本体とは:両足を横一線上にそろえて約一足長(肩幅)に開き、体重を両足に均等にかけ、膝を曲げることなく弾力をもたせ、背筋を伸ばし、下腹部に力をこめて口を閉じ、目は前方を自然に見て立った姿勢。立っていて一番安定している状態をいう。