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授業ルポ
映画を中心とした映像的なメディアによる物語の語り方を学ぶ授業。映像文化Bでは、映像文化Aの講義を踏まえて、映画界における代表作家、代表的作品や、ジャンルについて解説する。

そして授業は、ヌーベルバーグの監督に影響を与えた日本の映画監督、溝口健二の解説へと続く。
「ヌーベルバーグの中でもアバンギャルドな作品を作る監督に、ジャン=リュック・ゴダールがいますが、彼がいちばん尊敬していた映画作家が溝口健二だったんです」
溝口健二については、生誕100年を迎えた1998年頃から、彼と彼の作品についてさまざまな研究がなされ、国際的な関心も高まっているそうだ。

「溝口の作品は、日本の伝統社会における女性や芸道の世界を徹底した視線で描いていることが特徴です。また、撮り方にも特徴があり、ワンシーン・ワンショットという、編集があまり入らない手法で撮られています」
ここで田代准教授は、1930年代に作られた「残菊物語」という作品の1シーンを例にあげ、長い間カメラを回し続ける“長回し”で撮影することで、そのシーンでどんなことを表現しようとしているのかを、ハリウッド映画の撮影手法と比較しながら解説した。この作品では、大部分が“長回し”で撮影されている中に、“切り返し”が集中的に用いられることで、登場人物たちの気持ちの高揚感、クライマックスを盛り上げる効果が生まれているのだという。

その後、実際に“長回し”で撮影されているシーンを鑑賞し、最後にこう説明する。
「この“長回し”のシーンでは、女主人公の表情がはっきりとは見えないようになっています。ここには、ヌーベルバーグのはるか以前の時点でありながら、『ハリウッド映画的なクローズアップと“切り返し”による人間の捉え方なんて信じられない。人間は、表情だけでなく全体で捉えなければならない』という溝口の考えが読み取れるように思われます」
単にストーリーのおもしろさを追うだけではなく、作り手の意識にまで思いを巡らせることで、映画を観る楽しさがより一層深まることを、この授業は教えてくれる。
「実際に活躍していた映画作家たちが、どのような意識をもって撮影していたかを考え、その撮影技法について学ぶことで、文学における物語や言葉のあり方というものと、映像メディアで物語を表現するということの違いや、映像で物語を語る方法を理解してもらいたいと考えています」