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授業ルポ
映画を中心とした映像的なメディアによる物語の語り方を学ぶ授業。映像文化Bでは、映像文化Aの講義を踏まえて、映画界における代表作家、代表的作品や、ジャンルについて解説する。

「映像文化B」は、文学以外のメディアにおける物語の語り方を学ぶ授業である。今回は、1960年代のヒッチコックの変貌からヌーベルバーグへと移り変わっていく映画史の変動についての説明から始まった。ヌーベルバーグとは、フランスで1950年代終わり頃から始まった映画運動のことである。
この授業を担当する田代准教授は、ヒッチコックの「映画というのは、カメラと被写体の関係性だ」という言葉を引用し、この「カメラと被写体の関係性」という観点からみた映画史の区分を黒板に書き出すと、映画の撮影手法についての説明を始めた。

「世界標準ともいえるハリウッド映画というものは基本的に、観客が主人公に感情移入して物語を見ていくものだったんです」
しかし、そのハリウッド映画の代表者であったヒッチコックは『サイコ』という作品で、観客が感情移入できない多重人格の登場人物を主人公にし、過剰な感情移入が犯罪を起こすという物語構造にすることで、観客が感情移入することができない映画を創りだしたのだ。
「主人公というものは、観客が同一化して物語を見ることができる乗り物になっているものなのですが、ヒッチコックは『サイコ』で、その乗り物を解体し、脱人称的な視線が出現したのです。そして、こういった映画から、ハリウッド映画を支えた“切り返し”構造からの脱却を図る傾向の映画が生まれてくることになります」
“切り返し”とは、映画の撮影手法のひとつ。観客が感情を移入できるよう登場人物を写しだし、さらにその登場人物が見ているものを映し出す、という形で、観客が登場人物の視線を通じて、物語の中に入っていけるような構造になっている。この“切り返し”によって、観客が映画に入り込むのがハリウッド映画常套なのだが、ヒッチコックの『サイコ』は、この手法自体の仕組みを剥き出しにしてしまう映画なのだと話す。

続いて、ヌーベルバーグの映画についての解説が始まった。
「1965年に作られたジャン・ルーシュという監督の『北駅』という作品があります。これは、ほとんど“切り返し”で構成されていたハリウッド映画と違い、たった3つのショットで撮られているんです。それも感情移入できない3つのショット。手持ちカメラを使って、ずっと俳優を撮影し続けるという手法の映画が撮られました」
田代准教授は、『北駅』のあらすじを話し、この映画の言わんとする内容について説明する。
「読み方によっては、若妻の新婚生活への幻滅と非日常的な事件の突発を、3つのショットで撮影することで、これまで“切り返し”によって支えられてきたハリウッド映画への、つまりは、これまでの感情移入を促す“切り返し”で構築された虚構への批判として読めるのではないかと考えられます」
そして、このヌーベルバーグという運動を起こしたのは、ヒッチコックに対し強い尊敬の念を抱いている若い映画青年たちであり、ヌーベルバーグで活躍した映画作家たちの紹介を付け加えた。