グローバルナビゲーション
ここから本文です
授業ルポ

近世文学・文化演習Iでは、江戸時代後期に書かれた上田秋成の『雨月物語』をテキストにして、ストーリーを丁寧に読み解いていくことを目的としている。

村田教授は青頭巾に組み込まれている3要素を具体的に一つずつ丁寧に解説していく。
1つ目の要素である「時間」は、本文中からは、“むかし”と出てくるだけだが、作品中に登場する快庵禅師という人物に注目してみると、この人物は実在した人物で、1422年~1493年まで存在した室町時代の人物だということがわかる。つまり、15世紀後半の物語ということが読みとれる。そして、著者である秋成の時代からは300年ほど昔の物語という時間設定がされていることもわかる。
2つ目の要素である「場所」は、下野国(栃木県)富田という場所が舞台となる。この物語は都市部の話ではなくて、一地方の田舎が舞台だということ。
快庵禅師はもともと薩摩に生れ、京都、美濃で修業してきた人物。その彼が西日本から東北地方を目指して旅をしている途中で下野国富田にやってきたときの出来事ということがわかる。
3つ目の要素である「人間」では、先ほど出てきた禅宗の快庵禅師が主人公として登場する。作中で彼は優れた僧侶として描かれている。つまり高僧伝のスタイルで話の全体が構築されている。
ただし、雨月物語は怪異小説であるから、高僧伝という枠組みであっても、そこに怪異をどう組み込んでいくかということが、この物語のテーマとなってくる。そのポイントとしては「鬼」、そして、「食人」という行為がモチーフになっている。
解説の最後に村田教授は、「この物語は、見方によっては非常にショッキングであり、また悪趣味で、グロテスクな話ではあるが、雨月物語の作者、上田秋成によってどう料理されているのかというところが、この青頭巾を読み解く上でのポイントとなる」と伝えた。

教授の解説が終わると、学生は自分の担当箇所を事前に調べ、用意してきた資料を全員の前で解説しながら作品を読み進めていく。
担当学生は原文を読み下し、現代語訳をしながら他の学生に意見を求めたり、教授にアドバイスを求めながら作品について討議をして作品を読み解いていく。
今回扱った箇所のポイントは、鬼と化した僧の描かれ方だろう。
鬼とは人間の道から外れてしまった者のこと。元々徳のあった僧が一人の少年を溺愛したことから始まり、愛していた少年が病死しても死体を愛し続け、その少年の死体を食べてしまう。そして、遂には他の人間の死体をも食らうようになっていく。……と、僧侶の行動はどんどんエスカレートして描かれていくが、著者である秋成は、その内容を恐ろしく描く一方で、この僧侶の行動を人間味あふれるものとして、一つの愛の形として描いている。
「単なる猟奇小説ではなくまとめているところに、上田秋成風の味付けがあるのだ」と村田教授はまとめた。