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理工学部 学びのコラム

「スウェーデンに『福祉』ということばがないのを知っていますか?」

2009年04月27日

日本で福祉先進国と言われている北欧スウェーデンでは「福祉」ということばが存在しません。こう言うと、ちょっと乱暴で誤解を招く表現ですので、ここからは具体的に説明してみましょう。

日本で言う「福祉」には、高齢者や障がい者や誰もがみんな幸せに暮らせると言うことが頭の中でイメージされていると思います。言い換えると「あたりまえのふつうの暮らし」です。最近なら「あたフツー」(造語)と言ったところでしょうか。
では、スウェーデンではどうでしょう。

この「あたりまえ」の「ふつう」の暮らしですが、スウェーデンでは「あたりまえ」で「ふつう」のことは、あえてことばに表す必要がないのです。なぜなら、「あたりまえ」で「ふつう」だからです。例えば、「大人」と言うと、多くの人は「20歳以上の成人」をイメージします。オムツをしたハイハイしている赤ちゃんを「大人」とは、誰も考えません。なぜか?それは「ふつう」一般的に「あたりまえ」だからです。この「あたりまえ」すぎることばは、スウェーデンではあえて強調して言うことがないのです。

写真(上):郵便局カウンター
 (スウェーデン)
写真(下):郵便局アクセス
 (スウェーデン)

では、スウェーデンで「福祉」と言うと、人々はどのようなイメージを持つのでしょうか。多くの人は、「恵まれない人に慈悲のこころで接し与える」と言うイメージを持つようです。日本で言う「福祉」のイメージでスウェーデンで話をしても、お互いイメージにずれがあって、途中で話が通じていないことがよくあります。
このようなわけで、スウェーデンには「福祉」と言うことばがないのです。ですから、「福祉の視点を持った建築」も存在しないのです。なぜなら、福祉の視点を持った建築も、最初から考えられている「あたりまえ」で「ふつう」のことだからです。

写真:高齢者居住施設(スウェーデン)


ここで、おもしろいエピソードを紹介しましょう。今から2年前のことです。スウェーデンで建築を学ぶ大学生に「ユニバーサルデザイン」について、たずねてみました。するとどうでしょう。ある一人の女子学生が、逆に質問してきました。「ユニバーサルデザインて何ですか?」

そうです。彼女たち(彼らたち)は「ユニバーサルデザイン」を知らなかったのです。それは、あまりにも「あたりまえ」で「ふつう」すぎて、誰もそのことについて特に気にかけることはなかったのです。しかし、彼女たちが「ユニバーサルデザイン」を知らなくても、スウェーデンは世界の中で「福祉先進国」としてたいへん有名なのは、誰もが知っている通りです。彼女たちは、建築を「ふつう」に学ぶ中で、ユニバーサルデザインやバリアフリー、日本で言う「福祉」についても余すことなく「ふつう」に「あたりまえ」に学んでいるのです。

写真:高齢者居住施設内で授業を受ける小学生

残念ながら、日本ではスウェーデンのように「あたりまえ」で「ふつう」のことを成し遂げるにはまだまだ時間がかかりそうです。なぜなら「あたりまえ」で「ふつう」の暮らしの理解がまだ十分にみんなに浸透されていないからです。ですから「あたりまえ」で「ふつう」の暮らしができるように、住環境について学ぶことはとても意味がありたいへん重要なことです。

写真:建築年数103年の小学校を改造した一般集合住宅

「福祉」を知っているだけでは「あたりまえ」で「ふつう」の暮らしは成り立ちません。では、「建築」だけを知っていれば「あたりまえ」で「ふつう」の暮らしができるでしょうか。これもまちがいです。「福祉」と「建築」は強い絆で結ばれており「あたりまえ」で「ふつう」の暮らしには欠かすことができません。また、これ以外にもいろいろなことが深くかかわっています。

いつの日か、日本も「福祉」や「バリアフリー」「ユニバーサルデザイン」など、あえて言う必要もない「あたフツー」の暮らしができるように願ってやみません。

写真:ちょっと立ち話……

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